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実は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
番外編―それぞれの小話―

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番外編――ずっと隣にいた君と、もう一度繋がる日

本日もお読みいただきありがとうございます(人*´∀`)。*゜+


本作は、合同任務・偵察編

『小さな守り星は恩返しがしたいんです』の裏側を描いた番外編です。


あの時、描ききれなかった“もうひとつの物語”。


笑成とユッキーの、少しだけ特別な時間を、そっと覗いていただけたら嬉しいです(*´ω`*)


よろしければ、気軽にお楽しみください。

−−−




――小さな守り星、再び。



その少し後のこと。


朝の光が、

カーテン越しにやわらかく差し込む。


静かな部屋の中で、

笑成えなはいつものように手を合わせていた。


視線の先にあるのは――一枚の写真。


そこに写る、小さなハムスター。


笑成えな

「……ユッキー」


小さく、名前を呼ぶ。


笑成えな

「もう三ヶ月かぁ……」


あっという間だったな、と呟く声には、少しだけ寂しさが滲んでいた。


ユッキーが旅立ったあの日から。

生活は、大きく変わってしまった。


――すぐに異動してきた、あの店長。


高圧的な物言い。

理不尽な叱責。

逃げ場のない空気。

執拗なまでの数字主義。


新しく異動してきた店長は、

そんな威圧感を隠そうともしない人物だった。


気付けば、

笑成の心も身体も限界を迎えていた。


張り詰めた糸が切れるように倒れてしまったのは、

一ヶ月前のことだった。


――けれど。


あの不思議な神社で出会った、

真白と優羽の優しさが、冷え切った笑成の心を癒してくれた。


笑成えな

「……あの神社の人たち、本当に優しかったな」


真白と、優羽ゆうはの顔を思い出す。

あの時、自分は確かに救われた。


だからこそ――


笑成えな

「今度、お礼に行かなきゃな」


小さく頷く。


そして、写真へと視線を戻す。


笑成えな

「ユッキー……今日も、見守っててね」



ほんの少しだけ、笑った。



笑成えな

「……行ってきます」



そう告げて、家を出た。



――そのすぐ後ろで。



その背中を、

半透明の姿で見送る存在があった。



ユッキー

「もう、笑成ったら。毎日毎日、そんなに拝まなくても、私はここにいるのに」




ふわりと現れたユッキーが、少し照れくさそうに笑う。



ユッキー

「ほんと、変わんないんだから」



けれどその表情は、

とても嬉しそうだった。



あの日。



真白たちと出会い、

笑成を救ったあの日から。



ユッキーは変わった。



――いや、“自由になった”のだ。



これまでのように縛られることなく、



笑成のそばに、

そして少し離れた場所にも行ける。



それでも。



ユッキー

「……ちゃんと守ってあげないとね」



その視線は、変わらず優しかった。



ユッキー

「さ、今日も頑張りなさいよ。笑成」



ふっと、姿が消える。




――その頃。


 


店のバックヤード。



張り詰めた空気の中、

笑成は、エリアマネージャーと机を挟んで向かい合っている。


エリアマネージャー

「……では白石さん。現店長の振る舞いについて、君が感じたことを正直に話してくれるかな」


マネージャーの手元には、

他のスタッフからの聞き取りメモがある。


『強化品の着用強要』


『売れなかった理由を人格否定にまで繋げる執拗な追及』



『不機嫌を隠さない威圧的な態度』



一つ一つ、確認されていく。

  


笑成が倒れたことで、

いよいよ本部が重い腰を上げたのだ。



最後に、静かに問いが落ちた。


エリアマネージャー

「……では白石さん。

 あなたは、その行為をどう受け取りましたか?」



視線が、まっすぐに向けられる。



エリアマネージャーの問いに、笑成の指先が膝の上で震え、僅かに鼓動が速くなった。



笑成えな

(怖い……ずっと、怖かった。


毎日が憂鬱で、

逃げ出したくなるくらいだった。


だから――言わなきゃいけない。

これは、パワハラだって。


でも……

もし認められなくて、

店長が残ったら?


目をつけられて、

もっと、居場所がなくなったら……)



喉まで出かかった言葉が、恐怖でせき止められる。沈黙が重く部屋を支配した。



言えば、変わるかもしれない。


でも。


言えば、目をつけられるかもしれない。


怖い……苦しい……言えない。


その時――



ユッキー

『笑成!』


声が、響いた。


はっきりと。


ユッキー

『しっかりしなさい!』


すぐ隣に、ユッキーがいた。

ユッキーは笑成の肩に乗り、懸命に叫んでいる。


ユッキー

『嫌なことは嫌って言っていいのよ!』


見えないはずのその姿が、

確かにそこに“いる”と感じた。



ユッキー

『笑成のこと分かってくれる人は、

 他にも必ずいるわ。一人で抱え込まないの!』



胸の奥に、熱が灯る。


ユッキー

『今は――アタシだっているんだから!

 だから……笑成の素直な気持ちを伝えなさい!』


あの日の記憶。


真白の言葉。


――“話すだけでも、心は軽くなることがある”


背中を、押された笑成は顔を上げる。


そして――

笑成の瞳に、力が宿った。


フリーズしていた思考が、

ユッキーの温度を感じて溶け出していく。


笑成えな

「……私は」


一瞬、息を止めて。


笑成えな

「パワハラだと思います」


はっきりと、言えた。


その声は、

思っていたよりもずっと強かった。



マネージャーは小さく頷き、手帳を閉じた。



エリアマネージャー

「分かりました。勇気を出して話してくれて、ありが

 とうございます。

 他のスタッフの意見も踏まえ、

 厳正に対応を検討します」



それだけ言って、面談は終わった。



――売り場に戻る途中。

笑成の胸の奥は、まだ少し熱かった。



ユッキーは笑成の周りをパタパタと飛び回りながら、自分のことのように大はしゃぎしていた。


ユッキー

『やったじゃない、笑成! ちゃんと自分の気持ちを

 伝えられて、本当に偉かったわよ』



あまりに嬉しそうに騒ぐユッキーの気配に、笑成の口角が自然と緩む。



不意に、笑成が立ち止まって



笑成えな

「ふふっ……ユッキー、ありがとう」



その呟きに、

ユッキーの動きがピタリと止まった。



ユッキー

『……え?』


固まる。


ユッキー

『……え? 笑成、今、なんて……?』


ゆっくりと、近づく。


ユッキー

『……アタシのこと、呼んだ?』


だが。


笑成は何事もなかったかのように仕事へ戻る。


ユッキーはぽつりと呟いた。


ユッキー

『……なんだ、偶然か』


ユッキーは少しだけ寂しそうに笑い、

また笑成の肩にちょこんと座った。




――そして夜。




仕事を終え、帰宅した笑成は、



笑成えな

「ただいま」



写真に向かって、そう告げる。



食事をして、入浴を済ませ、

ようやく一息ついた頃。


リビングのソファでリラックスしていた時、笑成がふと、夜空の月を見上げて溢した。



笑成えな

「……また、ユッキーに会いたいな」


――ぽつりと、零れた。



すぐ横に座っていたユッキーが即座に反応する。



ユッキー

「……アタシはずっといるわよ」




――返事が、あった。



一瞬、時間が止まる。



笑成えながゆっくりと顔を上げる。

視線の先には――


驚きで固まるユッキーが、

そこに“いた”。



笑成えな

「……やっぱり、気のせいじゃなかったんだ」


ユッキーの目が見開かれる。



ユッキー

「……え」



ユッキー

「あ、あんた……あたしが見えてるの!?」



笑成の瞳から、大粒の涙が溢れ出した。



笑成えな

「うん。……見えてる。

 ずっと、声も聞こえてた」




その言葉に――



ユッキーの瞳からも大粒の涙が溢れだした。



ユッキー

「……っ、もう!」



涙をこぼしながら笑成の頬に、ぎゅっとしがみつく。



ユッキー

「だったら早く言いなさいよ!」



笑成もまた、涙をこぼしながら笑う。



笑成えな

「だって……」



声が震える。



笑成えな

「願望で、幻覚見えてるのかと思って

 でも、ずっとそばにいたから……」



堪えきれず、声が崩れる。



笑成えな

「……本当なんだって思った」



ユッキーも泣きながら叫ぶ。



ユッキー

「バカぁ……!」



笑成えな

「会いたかったよ、ユッキー……!」



笑成はそっと、手のひらで包み込む。

もう、離れないように。



笑成えな

「ずっと守ってくれてたって……

 真白さんに聞いたよ……ありがとう」



ユッキーはその小さな手で涙を拭いながら、笑った。


ユッキー

「……当たり前でしょ」



少しだけ、得意げに。



ユッキー

「笑成には、アタシがついてなきゃダメなんだから」



そして、ふと思い出したように言う。



ユッキー

「あっ、でも!今日ちゃんと自分の気持ち言えたの、

 ほんと偉かったわよ!」



笑成は少し照れながら答える。



笑成えな

「……ユッキーがいたからだよ」



ユッキー

「えっ!? あの時から見えてたの!?」



笑成えな

「うん」



ユッキー

「そんな、だったらその時言いなさいよ!」



笑成えな

「えー、だってー」



二人は顔を見合わせて笑った。



――あの頃と同じように。


いや、それ以上に。

あたたかくて、優しい時間が流れていく。



失ったと思っていたものは、

確かにここにあった。



笑成は静かに目を細める。



笑成えな

「ユッキー……これからも、よろしくね」

 


ユッキーは、力強く頷いた。



ユッキー

「当たり前よ!任せなさい!」



その笑顔は、

あの日と変わらないまま。


小さな守り星は――

これからもずっと、

大好きな笑成の隣で輝き続ける。


静かに、確かに。



最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!

ブクマや評価などいただけたら大変励みになります!

次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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