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8 パール、また薪を割る。

パールは朝も早よから病院の薪割りをしていた。

今日は王子様にルビーとマグダレーナの事情を報告しに行く日。

どうにも落ち着かなかったパールは、春先だというのに病院に押し売りアルバイトをして薪割りをしていた。

(ふう……やっぱり、落ち着くには運動が最強ね!私ったら名案なんだから!)

もうすぐ城での仕事が始まる時間。

パールは軽く周りを片付け、病院に軽くあいさつしてから小走りに城へ戻っていった。


「それで……ナッシュ、パール。私にルビーローズ姫の事で話があるというのは……」

王族専用の部屋。

しっかり防音機能を保った小さな小部屋で、パール、ナッシュ、シリウス、ルビー、マグダレーナはなんとなく手狭さを感じながら話を始めた。

「王子、ルビーローズ姫は実の父親……隣国の王から人質で脅されて、この婚約を受けたそうです。人質はこのシスター・マグダレーナ。パールの伝手でなんとか救出できましたが……」

「私の父のクソ親父さを舐めてはいけません。これが発覚したら、人質を殺しに来るでしょう……どうか、マグダレーナを……私の第二の母を、匿っていただけないでしょうか……」

……王妃教育で培った口調の隙間から元の口の悪さが漏れている……ルビーは気づいているのかいないのか。

「………分かった。ルビーローズ姫。私はあなたの父と戦うかもしれない。そのために、貴女を利用するやも……それでも、かまいませんか?」

「ええ!むしろ私の情報と父の指示を全部吐きますのであのクソ親父にギャフンと……いえ、どうか痛い目を……ううん……」

「はは、ルビー、元の口調に戻っているよ。懐かしくて、私は好きだけども。」

「悪かったわね!どうせまだメッキが剥がれるわよ!昔は舐められたら終わりだったんだから……!」

王子様とルビーは仲がいい。

知ってる。

最初は冷たくしてても、王子のアタックにルビーがだんだん絆されてたのも。

邪険にされても、王子様がちっとも諦める素振りがなかったのも。

……パールは、胸が痛んだ。もやもやする……

「パール。」

ふと小声で呼ばれた。ナッシュがいる。

「大丈夫か、昨日の今日で、辛いなら……」

平気!だって私、王子様の護衛だもの!

ファイティングポーズでやる気を伝える。

ナッシュは静かにほほ笑んだ。

心配してくれてるのかしら?パールはちょっぴり元気になった。

その後は、ルビーやマグダレーナの持つ情報も合わせて、どうやって隣国の王に手出しをさせないか、話し合いは続けられた……


「しかし、ルビーローズ姫の父が、まさか姫の結婚式で油断しているだろう我が国に攻め入るつもりとは思わなかったな。どうりで姫の婚約への対応が冷たいわけだ。……どうにか戦争を起こさせる気もなくなるくらい、徹底的に叩かねば。」

ナッシュは悩んでいる。

(それなら……いっそ私のお父様やお姉様や海の民たちに頼ってみるのはどう?強いわよ〜!)

「駄目だ。基本、陸の人間は海の民や人魚を魔物と恐れている……知られれば、パール、お前だって追い出される可能性があるんだぞ。」

パールはしょんぼりした。せっかく王子様にいい所を見せるチャンスかと思ったのに……

「お前にはいい所がたくさんあるさ。そんな……誰かに利用されそうな価値より、自分自身の価値で勝負したほうがきっといいと思うぞ。それにな、我が国のピンチは我が国で退けないと……きっと、次の危機にも、奇跡を頼るようになってしまうからな。」

ナッシュはいつも難しい事考えるのねー。パールは頭がくらくらした。でもまあ、褒めてくれている!嫌な気はしない。

海の国は強いものが王である。女王も頻繁に誕生している。勝てば勝者も敗者もみなたたえ合うのである。

陸の民は複雑なんだから。

その腕力で王の座を五代に渡って続けている父や先祖のことを思い返しながら、パールは思った。

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