7 パール、思い出す。
(私は、人魚。―――この間の大嵐で、船から落ちた王子様に一目惚れした、人魚なの―――)
衝撃の告白から3日経った。今日もつつがなく城は平和である。
(別に大げさに驚いて欲しかったわけじゃないんだけど……)
パールは休憩時間に座ったまま足をプラプラとさせて考えていた。
(「そうか」「教えてくれて、嬉しい」だけ?他に何かリアクションとかあったと思うの!)
理不尽にムッとしたまま王子の側に居るナッシュを何となく睨む。
姉姫達からまだ連絡はない。便りがないのはよい便り、って陸ではいうんだって聞いたけれど、パールは心配で仕方なかった。
ルビーは座禅?とやらで精神統一してなんとか心を落ち着かせているらしいが……それでも心配は心配よね……。
もう、姉様たちったら、早く連絡をくれればいいのに!
そんな時、人間の耳には聞こえない歌声が聞こえた。パールを呼んでいるのだ!
飛び出していきたい衝動に駆られつつも、パールは夜まで我慢した。
パールも成長期。我慢くらいできるようになったのだ。初回から比べてずいぶん成長したものである。
誰もいない夜。パールはナッシュと待ち合わせて城を出た。
行く先はもちろん……この間の浜辺だ。
正直パール一人でもシスターぐらい連れてこれる!とパールは言い張ったが、ナッシュは王子に説明する時に自分がいたほうがいいだろう、と、頑として譲らなかったのである。
「それに……パールは腕力は凄いが、足は弱いだろう。もしシスターが立てない状況なら、運ぶ人員も必要だと思わないか?」
まあそれはそうよね。運んでくれるならそれに越したことはないし。
パールはちょっぴり面倒くさがりだった
月だけが照らす暗い浜辺て、パールは歌う。人には聞こえない声で。
その時……遠くから……ロープを手綱のように扱いながら波を立ててボードに乗った老婆が沖から現れた!
パールとナッシュはあまりの光景に戦闘態勢を取った!
ざああん!
ひときわ大きな波とともに、老婆のボードが浜に到着する。ロープの先には……引っ張っていた姉姫の姿が!
「お待たせ!パール!シスターマグダレーナ一丁!」
「人のこと何だと思ってんだいこの人魚の姫様方は!」
……どうやら老婆の方は、運ばれ方に文句があったようだ……大変見事な波さばきだったが。
「失礼、あなたが……シスター、マグダレーナで間違いないだろうか?」
「ああそうさ。今回は私とルビーのせいで、手数をかけて申し訳なかった。」
「構わない。……それに、きっと王子もそれを望んでおられるだろう。」
姉姫たちは人魚語でキュイキュイと暇ねー。まじめな話をしてるわねー。と会話していた。
「ところでパール。あの彼が……その、本命?」
パールは姉姫の言葉に吹き出した。
ブンブンと首を振って、必死に違うと訴えて居るのに、姉たちはへー、ふーん。とまともに聞いてくれない。姉たちに弄られる。末姫の弱点である。
「でも……早くラブラブにならなきゃ困っちゃうわよ!もう海を出て4カ月も経ってるんだから!」
パールは首を傾げた。
「まー、パールってば忘れてるの!?」
「こりゃ叔母様が心配するわけだわ」
「貴女、人間薬の呪いで1年後までに真実の愛を手に入れないとヤバいって聞いたわよ……?」
その時パールに電流走る……!ルビーの心配も心配だったが、よく考えたら私、城づとめエンジョイしてる暇ないんじゃないの……!?
今更気づいたパールに、ふとナッシュは不審なものを感じたのか、声をかけた。
「どうしたんだ……?具合が……悪そうだが。」
パールは力なくぶんぶんと首を振った。
とりあえず、今は、話す気にはなれなかった。
「顔色が悪いね……足も弱いんだったかい?あんた、男だろう。おぶってやりな。」
「言われなくても。……パール、大丈夫か?城まで、歩けるか?」
姉姫たちは、心配そうに海からこちらを見つめている……
「姫様方……パールは、一旦城へ連れて帰ります。相談事は、また後日に……」
海へ帰っていく姉たち……一言最後に、キュイー、と高く鳴いて、姿を消していった。
「ほら、背中に乗れ。……今日は色々あったから、疲れたんだろう。明日、姫君も加えて4人で王子に報告に行こう。今日はゆっくり休めばいい。」
(うん、そう……忘れてたの。びっくりして……疲れただけ。)
それでも、背中の温もりに、子供の頃父の背に乗ったときのことをふと思い出して、何となく安心するパールだった……




