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6 パール、正体を明かす。

パールとルビーの会話は、基本筆談である。

海の上と海の中の文字が同じというのも不思議なものだが、海の中の文化は海の上から流れ着いた道具や本なども元に作られていると知っているパールは、そこまで不思議に思ってはいなかった。

海の中の世界では、パールは実は結構歴史の成績がいいのである。

そんな午後の昼下がり……ついにパールは切り出した。

(ルビー、最近元気がないわ。何かあった?)

王子様のこと以外なら相談に乗るわ!パールはガッツポーズで示す。

けれどルビーはなかなか切り出そうとしない。パールはじれったくてうねうねした。

「お、落ち着いて!……まったく、あなたは奇行が多いんだから……!でも、確かに言わなくちゃいけないわ。それで例え、私がどうなるか、わからなくても……あの人の身に、これ以上危険なことはあって欲しくないもの。」

聞いてくれる?パール。

ルビーは居住まいを正して、パールの目を覗き込んだ。


「……だから、私はお父様のために国を取る悪女で、城内で王子が襲撃されたのは私のせい。パール。私を拘束して。シリウス王子に何一つ、偽りなく話すわ。」

パールは激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。

パールには政治が分からぬ。

パールは、海の国の末姫である。

陸に憧れ、色んなものを集めて暮してきた。

けれども邪悪に対しては、人一倍敏感であった。

……また雑なメロスパロディはともかく、パールもまた、怒っていた。

しかし、ルビーとは違い、パールには秘策があった!

(ルビー!孤島の監獄の場所は分かる?私、伝手を辿れば何とかできるかもしれないわ!)

「え?伝手……?ば、場所は分かるけど……あそこは監獄しか無いような小さな島で……」

尚の事好都合!パールは、孤島の監獄の場所を聞いて、一旦その事は黙っておく事にした。ルビーにも口止めだ。女同士の秘密である。


満月の晩、潮の満ちた海、パールは、小さく歌った。

人には聞こえない、喉を震わせる、人魚たちの歌声だ……

ざわりと、暗い海が揺れて―――

「パール!心配したのよ!」

「このお転婆!今まで連絡もしないで!」

「元気でやってる?人間とラブラブになれた?」

「叔母様ったらめちゃくちゃ焦ってたわよ!ちゃんと許可取りなさいよ!」

わらわらわらわらと……

14人の姉姫たちが海から現れた!

仲間になりたそうな目でこちらを見ている!

パールはその視線を無視して、1枚のメモを姉姫たちに渡した……

(知り合いのお母さんが、悪い王様に捕まってるの!コトウノカンゴク?って言うところに居るんだけど、姉様たち、連れてこれる?シスターのマグダレーナさんって人らしいんだけど……)

「知ってるわ!」

「オッケーオッケー。」

「お姉ちゃんに任せて!」

「その監獄にいる人たちはぶちのめしていいの?それによって難易度が変わるんだけど……」

パールはこくこくと頷いた。なんだかんだ歳の離れた姉姫たちに可愛がられた末姫である。姉の扱いと愛には慣れていた。

GO!とばかりに、海へ散っていく姉姫たち……

これでルビーのお母さんは心配ないわ!

パールは胸をなで下ろし―――

「………パール?」

後ろからかけられた声に、ビャっと飛び上がった!

「こんな夜中にどこへ行くのかと思えば……あれは、いったい……」

灰色の髪。見間違いようのない赤い目。

ナッシュが、そこには立っていた。

「人魚……歌声で、人を惑わすという……けれど、今のは、とてもではないけどそうは見えなかった……」

ナッシュは、一歩近づいて、パールの腕を取った。

「……君は……何者だ?」

パールですけど!!!

パールはナッシュの手を逆に握り返して手に力いっぱい書いた。

「いてててて!……すまない!怒らせる気は無かったんだ……ただ、俺が言いたかったのは……君が、何者であっても、俺の知ってるパールだという上で、正体を知りたかったんだ……」

なら許そう。

パールはなぜか上から目線だった。

それに……ナッシュなら、きっと受け入れてくれるだろう!そんな自信もあった。

パールはナッシュの手をぎゅっと握り返して、そっと指でなぞる。

(私は、人魚。―――この間の大嵐で、船から落ちた王子様に一目惚れした、人魚なの―――)

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