9 パール、モニュモニュする。
勝負は半年後!王子と姫の偽結婚式の知らせを出し、それまでに戦争の準備をするのだ。もちろん偽結婚式の準備も行わなければならず、城の中はてんてこ舞いであった。
……ルビーの証言で隣国のスパイは皆捕まって、偽の諜報員が隣国には情報を流している。
その中でもルビーの周りは慌ただしかった。偽の結婚式の準備、負傷兵を看護する準備、衛生兵を集める準備……
ルビーは慌ただしく駆け回っていた。
最近ではパールと会うことも少なくなってしまった……パールは王子の護衛として、ルビーは衛生兵として、戦場に出るのだ。
暇だった頃が懐かしいわ。そんなふうに思いながら、母の形見の護符のペンダントを握りしめる。
(パールに会えたら、渡そうと思っていたのに……)
魔女に守護の呪文を込められた護符。
魔女なんて眉唾物だったが、それでも、あの無鉄砲な、まっすぐな、危なっかしいあの娘に、渡しておきたかった。
バタバタと消毒液や包帯を揃える。そんな午後のある日。
ふと、大量の剣と槍を運んでいるパールとすれ違った。
「パール!あなた、その量……大丈夫なの!?久しぶりね!?元気だった!?というか重量で足は大丈夫なの!?」
……ルビーは情報量で混乱した!
パールは大量の武器を持ったままマッスルポーズをした。……本当に変な娘である。
「良かった……。元気だったのね!貴女にあったら渡したいものがあって……ずっと持ち歩いていたの!」
首にかけていた護符を渡す。
「魔女の守護の加護が込められた護符なんですって……偽物かもしれないけど、戦場に行くって聞いて……貴女に持っていて欲しかったの!」
パールは驚いたように目を見張り、護符をまじまじと眺めている。
「……うん、それじゃあね!パールも急いでるでしょう?呼び止めてごめんなさい!」
なんだか恥ずかしくなったルビーは、慌てて置いていた薬瓶の箱を抱えて、走り去った……
叔母様の護符、陸で初めて見た……!
パールはなんだか感動していた。
「力のある道具は、力のあるものにしか使いこなせないからね!めったに作らないよ!」が口癖の叔母が、こんなに力のある護符を陸に残しているなんて!
まさかの護符、ガチ本物であった。
(ルビーが持ってる方が安心なんだけど……でも、ルビーの担当は衛生兵だし、後方支援だし、あまり危険はないと思って私にくれたのよね。)
なんだか気恥ずかしくて、口元がモニュモニュしてしまう。パールは一旦大量の荷物を置いて、服の下に護符のペンダントを付けた。
(心配されてるのかな……平気なのに。)
それでもなんとなく、モニュモニュとした気持ちは収まらず、剣と槍を届けた部署の兵士に、
「変な顔してんな!パール!」
と揶揄われて、パールは腕を振るった。
兵士は見事に壁にめりこみオブジェになった。
……兵士たちの間では、パール最強伝説が着々と積み上がっていた……
嘘ではないのが恐ろしいところである。




