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10 パール、渾身のアッパー。

慌ただしさに追われるまま、月日は過ぎていく。

パールもルビーも、ナッシュも王子様も、皆忙しかった。もちろん、兵士たちや城下の住人も、である。

仮の結婚式の準備、戦争の準備、色んな事に追われて……季節は過ぎていく。

気づけば、偽結婚式……つまり、戦いの開戦はもう、目の前だった。

パールはごくりと息を呑んだ。

王子様とラブラブになるために陸の上に来たのに、私、何してるのかしら……

迫ってくる呪いの期限、真実の愛とは結局何なのか……

(兎にも角にも、王子様と結ばれるには戦いで勝たなくっちゃ!しかも超短期決戦!……その準備や罠は仕掛けてあるけれど……はぁ……。)

どこか気が進まないパール。彼女自身は否定しているが、ルビーやシリウス王子の内心の両思いを感じ取っているのだ。

特に気づくことをあえてしていない節もあるが、パールなりにルビーにもしっかりなついている。

泥棒猫にはなりたくないのだろう。


そして、ついに決戦の日、偽結婚式だ。

他国の使者も、祝いの品も、全部偽物。

王を国の近くまで誘い込んで……国境近くに配備された兵士達がなだれ込んできた瞬間、思い切りその鼻面を叩いて、王の所まで切り込んでいく作戦だ!

偽の諜報員が流した情報を何処まで信じて王が近くまで来てくれるかは分からなかったが、斥候の報告によれば、王都に旗を立てるため、指揮を取るため、かなり隣国の王は国境近くに来ているとの報告があった。

勝てると踏んでいるのだろう。

パールはクソ長い槍を獲物にすることにした。多人数を横に薙ぎ払って多量に巻き込むのには最も適している。

……もちろん、パールの馬鹿力あってこそできる事だが。

それ以前にクソ重い。

戦場でパールと組むことになっているナッシュは、

「当たらないよう、気をつける……」

と警戒していた。失礼だ。

「勿論私も行くからね。王都の事は父上と母上に任せればいい。」

ナッシュは必死に止めていたが、王子様の決意は固かったようだ。

結局、いつもの通り王子様と護衛2人のチーム。

(多分、王子様はルビーの為に行きたいのよね……ルビーが衛生兵してるのに城で弟達と守られてるだけじゃ、嫌なのよね。)

その気持ちは何となく分かる。

パールは再びため息をついた。


そうして戦いが始まった。

始まりは、王に扮した兵士達が国境を越えようとした……その瞬間、辺りに付していた兵士達が一気に取り囲む!

笛の合図で国境近くに付していた兵士達が立ち上がる!誰も入れてなるかというように、いきなりの猛攻に隣の国の兵士たちは勢いを削がれた。

「それもいつまで続くか分からない!ナッシュ!パール!王の陣に、斬り込むぞ!」

王の身柄を確保してしまえばほぼこちらの勝ちだ!

先陣はパールが務めた!ぶんぶんと槍を振り回すだけで人が蜘蛛の子を散らすようにぶっ飛んでゆく。そなたこそ真の三國無双よ!謎のナレーションが聞こえた気がした。


王の陣は、静かだった。

……パールが先にだいたい周りをぶっ飛ばしまくった後とも言う。

隣国の王は、怒りに満ちた視線とともに、近衛の兵たちを繰り出してくるが……

パールは多人数との戦いにアホほど強かった。敵将、討ち取ったり。

その時……王子様の頬をギュン!と弾丸が掠めた。

「外したか……全く、ここまで予定を狂わせてくるとは……だが、たったそれだけで何ができる?」

まだ生き残っている近衛の兵たちは、王を守るように、しかしパールから距離をとって慎重に動いている。

……パールの槍は、乱戦に効果が高いのだ。少数に警戒されていては、効果が薄い……

「降伏すれば、それなりの待遇は用意しましょう。妻の父親ですから。抵抗するようでしたら……こちらも本気で行かせて頂きます!」

「王族がわざわざ前に出てきて良いことなど無いだろうに……まあ、今の儂にも言えるがな……」

王は銃を捨て、投降の意思を示した。

パールはホッとした。今のパールの槍では少ない手練れには効果が薄いし……そうなるとナッシュ頼りになってしまう。ナッシュは護符も何も持っていないのだから……

王子様は、縄を取り出し、王にかけようとするが……

その時―――王が隠していた拳銃を取り出し、王子様に向けるのが見えた!

(させない!!!)

パールは王子と銃弾との間に身を滑り込ませた!

パァン!

王子様に当たるはずだった銃弾たちと引き換えに、護符は粉々に砕け散った!

(ごめんね、でも、ありがとうルビー!)

その代わりに―――

(私が貴女のクソ親父、殴り倒す!)

王の懐に潜り込み、身を屈め……

繰り出す拳は、思い切りあごを狙って―――

(吹き飛べ!!!)

パールの全力アッパーは華麗に決まり、王は天高く飛んだ……

「死んでないのが奇跡じゃないのか、これ……」

後にナッシュは、そう語ったという。


戦いが始まったばかりだが、王を奪われて兵たちは、降伏した。超短期決戦、大成功である。

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