表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/13

11 パールと、真実の愛。

戦争が終わったその夜、戦勝会で皆が湧く中、パールの耳に小さく呼び声が聞こえた。

海の民特有の……切羽詰まった響きがこもった、人には聞こえない呼び声がパールを呼んでいる。

パールは酔った兵士たちの間から、そっと抜け出した。

「パール……?」

それを、ナッシュが見ていた……


いつもの海辺、いつもの時間。いつも通り誰もいない海は静かだ……

しかし、今日は先客がいた。

「パール!ようやく来た!全く……勝手に薬を飲んで陸に行くなんて……」

(叔母さま!)

パールは久しぶりの叔母に駆け寄った。

「最近人の世界は騒がしくて近づけなかったけれど……パール。真実の愛を手に入れることはできたのかい……?」

その言葉にパールは叔母がここまで来た理由を知った。あと2ヶ月弱……心配されているのだ!

「とりあえずこれを飲みな。声が発せるようになる、解毒薬さ……これだけの期間じゃ、これだけしか作れなかったけれど……」

パールは薬を一気した。

「ぷはーっ!ありがとう叔母様!コミュニケーション取りづらくてかなわなかったのよね!」

「いやもっと他に気にする所あるだろう!?全く……。それに、声の解毒薬は本題じゃないんだからね!」

海の魔女は、どこからか黄金の短剣を取り出した。パールに手渡す。

「これは……最終手段だ。使いたくはなかったけれど……パール。お前が最も愛する者の心臓をこの剣で貫けば、お前の呪いは解けるだろう……死ななくて……泡にならなくて済むんだ。けど……あんたにとっては……」

パールは、一瞬その美しい短剣を見据えた。最も愛するもの……

一瞬で、いろんな顔が思い浮かんだ。

王子様、ルビー、ついでにナッシュ。構われたり世話になったいろんな人たち……

パールは、泡になる自分を思い浮かべて―――

「ありがとう叔母様!でもごめんなさい!私にこの短剣は要らないわ!」

金の短剣を海の魔女へ返す。

「良いのかい……?もうすぐあんたは……海の泡に……」

「刺さなきゃいけない人と、思い出が多すぎるわ!もう!皆なんだかんだ、私の事かまうんだもの!」

「そうかい……」

海の魔女は悲しそうに笑った。

「けれど最後まで諦めるんじゃないよ。真実の愛を……手に入れられるかもしれないだろう?」

「ないない!無鉄砲でめんどくさがりで、腕力ばっかり強くって。性格も宜しくないのよ、今更―――」

「なら、俺が想っていても、いいのか。」

後ろから声がした。

臨戦態勢に入る海の魔女とパール。けれど、そこには、見慣れた灰色の髪と、赤い目をした男がいた。

「済まない……最初から、聞いていた。だが……真実の愛が必要なら、どうか……俺を、選んでくれないか、パール。」

「……ナッシュ……?」

「初めて聞いた。そんな声してるんだな、パール。……海の魔女様。俺のこの思いが、真実の愛に値するのかはわからない。けど……どうか俺にも、資格がないか……試しては頂けませんか。」

いきなり言われて、パールは混乱した。

ナッシュは、そんなんじゃない……王子様と違って、ドキドキしたりきらめいて見えるわけじゃないもの。

でも……ナッシュの言う、資格が、金の短剣のことなら……嫌だった。

……海の上で、一番安心できる居場所を、失ってしまうのは……耐え難かった。

そこで生きていく自分を想像するのも……耐えられなかった。だから。

「私、面倒くさいわよ!惚れっぽいしテキトーだし!すぐ突っ走るしめんどくさがりだし!」

「全部知っている。」

「ちょっとは「そんな事ないさ……」くらい言ってよ!」

「そ、そんな事……ないさ……?」

「もう!絶対嘘!!!嘘が下手!!!」

海の魔女はナッシュとパールを見比べて、ため息をついた。

「パール……このお転婆!すっかりたらし込んでるし、たらし込まれてるじゃないのさ……。心配する必要、なかったかねぇ……」

「どういう意味なのよ叔母様ったら!」

「呪いは解ける……けど、それはあんたが完全に人になって……私たち海の世界との縁が切れるということさ……。パール、これからは、あんたが選んだ人たちと、あんたが選んだ道を、歩いていくんだよ。私たちは遠くから見ているからね!」

海の魔女は、それだけ言うと、笑って海の中へ姿を消した。

「…………」

「…………」

パールとナッシュは、お互い黙っていた。生きてて今まで、味わったことのない究極の気まずさだった。

……そして、どちらからともなく手を繋いで、歩き出した。城へ向かって。

明日も、仕事は忙しいのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ