エピローグ
「全く……娘が嫁に行くのには慣れたが、まさか娘が海の上に行ってしまうとはな……」
海の王はしょんぼりとしていた。
なんせ嫁に行った娘たちとはたまに会うことはできるものの、海の上に行った娘とはもう会うことはできない……しかも、一番年下のお転婆。
まだまだ庇護が必要だと思っていた娘である。
「大丈夫でしょ。なんせあのパールだもの!」
「お父様ったら心配性を直さなくっちゃ!」
海の王は娘たちに「心配しすぎよ!」となだめられていた。
「しかしなあ……まだパールは幼くて…」
「恋をしたら女は一直線よ!」
「お父様だってそうやってお母様に落とされたじゃない!」
海の王、撃沈。
「しかしやっぱりねー。私、初めて見た時からあの灰色髪くん、怪しいと思ってたもの!」
「絶対王子様よりパールにはああいう世話焼きタイプがお似合いよ!」
……姉姫たちはいつでも姦しい。海の神殿は、今日も賑やかである……
そうして陸の上では、シリウス第一王子とルビーローズ姫の結婚式の準備が進められていた。ちなみに捕まっている隣国の王も出席予定である。
式が終わったあとはつつがなく国へ返される予定でもある。
そして今日は、衣装合わせの日であった
「ああ……王子様……今日も素敵……誰にも渡したくないわ……。ルビーも綺麗……ろくな男にやるつもりは無いわ……」
「恋する乙女と父親のハイブリッドか?」
「違いますぅー!憧れの人と美人なトモダチの相手を心配してるだけですぅー!」
ナッシュはぽん、とパールの肩を叩いた。
「……それなら、両方これ以上ない相手だろう。」
「そうなのよねー。文句をつけようにも文句が出てこないわ。」
……一応真実の愛、を認められた二人のはずなのだが……会話が軽すぎるナッシュとパールなのであった。
その時ふとルビーがこちらを見た。パールを見て、笑顔で駆け寄ってくる。
「パール!来てたのね!」
「ほら私たちって一応王子様の護衛だから!平和になりつつあっても、護衛は必要でしょ?」
そこでパールはふと、ルビーが首にかけている壊れた護符が目についた。
戦争後に、返したものである……
「わざわざ壊れたペンダントじゃなくても、もっと綺麗なの、いっぱいあったでしょ?」
「いいのよ、これで。……パールとシリウス様を守ってくれた、大事なものだもの!たとえ効果がなくなったとしても……私には、大事な御守り!」
パールはルビーの肩あたりに頭をグリグリと擦り付けた……
海の魔女は、遠い海の底から、そんな様子を静かに見守っていた。
「おめでとう、パール。呪いは解けた。あんたは、もう、海の泡になんてならない。自分で見つけた居場所で、生きられるんだ。」
海の国には、こんな話がある。
嵐の日に、王子様に一目惚れした末姫が、海の魔女の力を借りて陸へ飛び出していった。
真実の愛を手に入れるために。
その後の物語は……諸説あり、どれが本当に正しいのか、今では海の魔女しか知らないのだという……。




