3 パール、靴の音に物思う。
私ってなんて不幸なのかしら……
王子様を取り合うはずのライバルの姫からは友達宣言食らっちゃうし、
なんだか優しくされてるし、
ナッシュはちょくちょく見に来てついでにたまにルビーに会いに来てる王子さまもついてきてるし……
うーん?おかしいわね?
不幸のどん底シンデレラなはずの私なんだけど、なんだかどうしても不幸にならないわ?
パールは心の中で思っていた。
1年後までに真実の愛を得なければ泡になってしまうという呪いじみた副作用が一番の不幸なのに、すっかり忘れ去っている。
(私が王子様を先に好きだったんだもの!王子様とラブラブになるのは私!……でも、その時、ルビーは……どうするのかしら……)
パールは憂鬱にため息をついた。ルビーはすっかりパールを友達認定して、いろいろ話してくれる。
……本人はあまり話そうとしないが、なんとなく、ろくでもない家庭の匂いがしている。
育った修道院の話は楽しそうにしてくれるのに、家族については何も言おうとしない。
でも……私も、家族がいないようなものなの。
初めてお喋りした時にぽろっとルビーから零れた言葉。
こつこつ、と床を神経質にノックする靴は前のものと比べてずいぶん履きやすくなった。
よし!パールは考えることが苦手だ。とりあえず、ナッシュに頼ることにした。
……なんだかんだナッシュはパールにいいように使われていないだろうか。心配である。
「パール?どうしたんだ珍しい。こんな所まで来るなんて。」
ナッシュは基本的には王子様の乳母兄弟らしく、護衛や側付きなどをしているらしいが、今は王子様が帝王学の学習中、ナッシュは少しの休憩時間をもらっているらしかった。
パールはナッシュの手を取る。この伝え方も、もうずいぶんこなれてきたものだった。
手の平に、指でそっとなぞる。
「「ひめさま……知りたい?」ああ、なるほど、最近仲が良いと聞いた。」
仲は良くないの!ライバルなの!
パールは怒るジェスチャーでぷいとナッシュから顔を逸らした。
「分かった分かった。仲は良くないんだな。うん、分かってる。」
ナッシュはニコニコとしている。パールはムカついたのでナッシュの頬をつねって伸ばした。
「痛い痛い。けど、姫君のことを勝手に言うことは出来ないんだ。……俺に頼るより、きっと、君が素直に聞いたほうがいい。それが友達ってものだろう?」
友達じゃないわ!パールはナッシュの逆頬もつねって伸ばしておいた。
だいたい本人に聞くのが気まずいからナッシュに聞きに行ったのに!パールはルビーの事を考えた。
(あれは、他人をほっとけない性格なのよね……見てればわかるわ!世間では損をする性格なんだから……だから、気になるのよ……)
パールはルビーのベッドシーツを変えていた。ちなみに最近はしていないものの、詳しく話し合う前まではこっそりワカメとかヤドカリとか仕込んでいた。この人魚、嫌がらせが湿っぽい。最悪である。
「あっ、パール。綺麗にしてくれたのね、ありがとう!」
ルビーは最初の頃は自分でベッドメイクをしようとしていた。最近は、周りに世話をされるのにも慣れたせいか、パールが嫌がらせをやめたせいか、少し慣れたようで良かったと、パールは思った。




