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『影の調香師は王宮の謎を嗅ぐ ~没落貴族令嬢、香りで真実を暴く~』  作者: 9 10
第一章 王宮の調香師

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第7話 蠟燭の夜会(中編)

 大広間の混乱は瞬く間に広がった。


「うっ……頭が……」


 中年の男爵が額を押さえ、よろめいた。続いて二名、三名と、軽い目眩や吐き気を訴える者が増えていく。

 エレノアは即座に王太子の方へ視線を向けた。


「殿下!」


 彼女は控えめに、しかしはっきりとした声で呼び、ラインハルト・フォン・ローエングラム王太子の近くまで進み出た。

 ラインハルトもすでに数人の騎士を従えてこちらへ近づいてきていた。その銀灰色の瞳が鋭く光る。


「殿下、蠟燭に異常な香料が混入されています。

 興奮と幻覚を誘う成分……熱で蒸発するタイプです!」


 王太子は素早く状況を把握し、騎士たちに指示を飛ばした。


「周囲を封鎖しろ。被害者を優先的に外へ!」


 エレノアは続けて報告した。


「中央のシャンデリア周辺の蠟燭が特に怪しいです。夢の樹脂に似た禁忌の成分が混ざっています」


 リリアが人混みを掻き分けて駆け寄ってきた。


「エレノア! 大丈夫!?」


「リリア、怪しい蠟燭の火を消すの手伝って。できるだけ被害を広げたくないの」


 イザベラ公妃の鋭い声が広間に響いた。


「何事ですの!? 誰かが私たちを狙ったというの!?」


 夜会の空気は一気に緊張し、甘く危険な香りが広間全体に広がっていた。

 エレノアは心の中で思った。


(目立ちたくないのに……咄嗟に殿下の近くへ来てしまった)


 しかし、殿下の安全を考えれば、これ以外に選択肢はなかった。

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