第27話 騎士と侍女の狭間
翌日の午後、エレノアは香房に戻る許可を得て、リリアとソフィーと短い時間を持つことができた。
「エレノア、王太子殿下の側使えになってからどう?もしかしてもしかすると王太子殿下と二人、いい雰囲気とかになったりしない?!」
リリアが興奮気味に言うと、ソフィーが心配そうに小声で続けた。
「リリアさん、そんな発言誰かに聞かれたら不敬に当たりますよ」
エレノアは湯気の立つハーブティーを口に運びながら、静かに答えた。
「あのね、リリア。私は仕事でお側に使えてるのよ。それにもしそんな目的で王太子殿下に近づいたとしても忙しすぎてそんな余裕きっとないわよ。」
そこへ、ガスパールが偶然近くを通りかかったのか近づいてきた。
彼は周囲を素早く確認してから、落ち着いた声で言った。
「寛いでいるところお邪魔するよ。二人は初めましてだね。私はガスパール、エレノア殿にいつも助けられている騎士だ。少々、エレノア殿をお借りしても良いかな?」
「は、はい!大丈夫です!!」
リリアは少し緊張しながらも元気に返事をした。
エレノアとガスパールは二人から若干距離を取り小声で話した。
「最近、ある者が君に興味を示しているらしいと噂を耳にしてね。こちらでも調べてはみるが、君にも用心しておいて欲しい。」
ルーカスとオスカーも少し離れた場所から心配そうな視線を送っていた。
エレノアは二人に向かって小さく頭を下げた。
「皆さん、ありがとうございます。でも、私のために無茶はしないでください。私はただ、香りを嗅いで異常を感じ取るだけが役目ですから」
ガスパールと別れ、また二人の元に戻ったエレノアは他愛のない会話をし、香房の仕事に戻るのであった。
その夜、王太子の私室で香油を調整していると、ラインハルトがふと声をかけてきた。
「騎士団の若手達とはまだ連絡を取っているのか?」
エレノアは正直に答えた。
「時折、香りの確認でお会いすることはあります。
ですが、目立つような真似はしておりません」
王太子は黙って彼女を見つめ、結局何も言わなかった。
ただ、その視線にはこれまでより複雑な感情が混じっているように、エレノアには感じられた。




