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『影の調香師は王宮の謎を嗅ぐ ~没落貴族令嬢、香りで真実を暴く~』  作者: 9 10
第一章 王宮の調香師

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第22話 傍らの調香師

 王太子の側仕えとして三日目。


 エレノアは王太子の私室で、夜用の香油を調整していた。疲労を和らげるラベンダーとサンダルウッドを基調に、穏やかな調合にした。

 王太子が執務から戻り、部屋の空気を嗅いで小さく頷いた。


「良い香りだ」


 エレノアは控えめに答えた。


「殿下の睡眠の質を少しでも良くできればと思いまして」


 王太子は椅子に腰を下ろし、彼女をじっと見つめた。


「お前は本当に、目立つことを嫌うのだな。全くと言っていいほど以前と変わらないな。この立場を喜ぶ者も多いだろうに」


 エレノアは静かに答えた。


「はい……私は目立たないように生きたいと思っています。余計な注目を浴びることは、私には荷が重すぎますので。」


 王太子はしばらく沈黙した後、低い声で言った。


「ならば、必要以上に目立たぬよう振る舞え。ただし、私の傍という立場は変わらない。勝手に離れることも許さない」


 エレノアは深く頭を下げた。


 その夜、王太子が就寝した後、エレノアは一人で部屋の香りを最終確認した。冷たい鋼の香りと、ほのかに残る森林のニュアンス。

 そして、自分の手首に落とした母の形見の控えめな香り。


(王太子の傍……これは、思っていた以上に目立つ立場になってしまった)

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