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『影の調香師は王宮の謎を嗅ぐ ~没落貴族令嬢、香りで真実を暴く~』  作者: 9 10
第一章 王宮の調香師

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第21話 王太子の側仕え

 翌朝から、エレノアは王太子の私室と執務室周辺で働くことになった。


 朝一番に王太子が使う手袋とコートの袖の香りを嗅ぐのが日課となった。


「何か異常はあるか?」


「今のところはございません。……ただ、殿下は少しお疲れのようでございますね。」


 王太子は軽く眉を上げたが、何も言わずに書類に視線を戻した。


 午後、王太子が重要な会議を行うため、エレノアは控えの間に待機した。

 そこにガスパールが偶然通りかかり、こっそりと近づいてきくる。


「王太子殿下の側仕えになったと聞いた。……大丈夫か?」


 エレノアは小さく頷いた。


「目立たないようにしようと思っていたのに……逆になってしまいました」


 ガスパールは心配そうに笑った。


「そうだな、何かあったらすぐに伝えてくれ。俺たちはいつでも味方になるから」


 会議後、王太子はエレノアを呼び、短く尋ねた。


「今日の会議で使われた香炉の香り、どう思う?」


 エレノアは控えめに答えた。


「表向きは上品でしたが……微かに、相手の警戒心を煽る成分がございました。心理的な圧力をかけるための調合かと存じます」


 王太子は彼女を静かに見つめ、わずかに頷いた。


「……よくやった。これからも、遠慮なく報告しろ」


 エレノアは頭を下げながら、胸の内でため息をついた。

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