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『影の調香師は王宮の謎を嗅ぐ ~没落貴族令嬢、香りで真実を暴く~』  作者: 9 10
第一章 王宮の調香師

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第19話 首席の影と四人の決意

 首席調香師ハインリヒに呼び出されたのは、雨の降る午後だった。


「最近、騎士団の若手と頻繁に顔を合わせているようだな」


 ハインリヒは重厚なムスクの香りを漂わせながら、冷たい目でエレノアを見下ろした。


「調香師は香房に留まっていればよい。余計なことに首を突っ込むな!」


 エレノアは静かに頭を下げ、淡々と受け流した。


 その夜、厩舎の奥で四人の騎士にその話をした。

ガスパール、ルーカス、ディートリヒ、オスカーの四人は、黙って聞いていた。

 雨の後の湿った空気が、木と革と馬の匂いを濃くしている。皆、多くを語らなかった。

 ガスパールが静かにエレノアを見つめ、ルーカスは小さく頷き、ディートリヒは拳を軽く握り、オスカーは真剣な眼差しで彼女を見据えた。


 言葉はいらない。


 四人の視線が、はっきりとその意思を伝えていた。


 ——これからは俺たちが支える。君は思うまま今まで通り動いてくれ。


 エレノアは静かに目を伏せ、母の形見の香りをそっと手首に落とした。甘く、控えめで、芯の強い香り。


 若手騎士たちとの固い絆が、この瞬間、静かに形作られたことを彼女は感じていた。


(……彼らは、本気で味方になってくれる)


 貴族の冷たい視線が強まる一方で、エレノアの周りには、ようやく小さな信頼の輪が広がり始めていた。

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