表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『影の調香師は王宮の謎を嗅ぐ ~没落貴族令嬢、香りで真実を暴く~』  作者: 9 10
第一章 王宮の調香師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/72

第13話 棘の刻印

 騎士団の訓練場では、木剣の素振りの音が木霊していた。


 エレノアは香房から持ち込んだ保護ワックスを、指定された木剣の柄に塗る作業をしていた。蜂蜜とローズマリーを基調とした、伝統的な中世の香りだ。


「また君か」


 ガスパールが笑顔で近づいてきた。その後ろには黒髪のルーカスもいる。


「先日はありがとう。……ところで、このワックスに何かおかしいところはないか?」


 エレノアは木剣を手に取り、柄の部分に鼻を近づけた。

 甘い蜂蜜の香りの奥に、微かな刺激臭と植物性の毒成分が混じっている。


「……これは棘草の抽出液です。長く握り続けると手に痺れと炎症を起こします」


 ルーカスが眉を寄せた。


「またか……。最近、俺たち若手が使う道具に細工されることが増えている」


 その時、筋肉質の大柄な騎士が近づいてきた。ディートリヒ・フォン・ローゼンだった。


「ガスパール、こいつが例の侍女か? 俺も先日の狩猟祭の準備で助けられたらしいな」


 ディートリヒは豪快に笑い、エレノアに頭を下げた。


 エレノアは周囲を気にしながら小声で言った。


「目立たないようにお願いします……。このワックスは私が中和しますので、皆さんは普段通りに使ってください」


 その夜、三人は厩舎の奥で問題のワックスを安全なものに交換した。ディートリヒは力仕事を、エレノアは調合を、ガスパールとルーカスは見張りを担当した。


「君のような者がいてくれると心強い」

ディートリヒが照れくさそうに言った。


 エレノアは控えめに微笑みながら、心の中で思った。


(三人目……少しずつ、輪が広がっていく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ