第37話 間違った選択
――間違えることを、選ぶ。
その答えを出した瞬間。
空間が、静かに歪んだ。
今までとは違う。
崩壊ではない。
拒絶でもない。
――理解できないものに対する、歪み。
「……」
創る側が、動かない。
初めてだ。
何もしてこない。
ただ、こちらを見ている。
「……それが」
低く、ゆっくりと。
「答えか」
「ええ」
私は答える。
迷いなく。
「私は、正しい選択をしません」
一歩、前に出る。
「間違えることを、選びます」
その瞬間。
核が、強く光る。
今までで一番。
強く。
深く。
「……」
創る側が、わずかに後退する。
明確に。
「……なぜだ」
問い。
純粋な。
理解しようとする声。
「簡単です」
私は言う。
「あなたは、“正しい選択”しか扱えない」
沈黙。
反論がない。
「だから」
続ける。
「正しくないものは、処理できない」
その瞬間。
空気が、凍る。
核心に触れた。
「……」
創る側が、完全に黙る。
そして。
わずかに。
揺れる。
初めての。
明確な“動揺”。
「……それは」
言葉を探している。
だが。
見つからない。
「ええ」
私は頷く。
「それが、あなたの限界です」
一歩、踏み出す。
距離を詰める。
「……なら」
創る側が、低く言う。
無理やり言葉を作る。
「その“間違い”とは何だ」
いい問いだ。
私は、少しだけ考える。
そして。
答える。
「――一人だけ、選びます」
その瞬間。
空間が、震える。
「……それは」
創る側が言いかける。
だが。
止まる。
理解が追いつかない。
「正しい選択ではありません」
私は続ける。
「効率でもありません」
視線を上げる。
「公平でもありません」
そして。
「ただの、偏りです」
その一言。
重い。
だが。
確定している。
「……」
創る側が、沈黙する。
完全に。
処理が止まる。
「……」
ミレイユが、こちらを見る。
不安そうに。
だが。
逃げない。
「……セレスティア様」
小さく、呼ぶ。
私は、彼女を見る。
そして。
微かに、笑う。
「大丈夫です」
それだけ。
短く。
だが。
揺るがない。
「……」
リディアが、目を細める。
理解している。
アルベルトが、静かに息を吐く。
覚悟している。
全員が。
受け入れている。
「……」
私は、核を持ち上げる。
そして。
決める。
「――あなたです」
その瞬間。
光が、弾ける。
空間が、収束する。
すべてが、一点に集まる。
「……!」
創る側が、初めて大きく揺れる。
「……それは」
声が、歪む。
「不正だ」
「ええ」
私は頷く。
「間違いです」
はっきりと。
「だから、成立します」
その瞬間。
完全に。
構造が崩れる。
選択の前提が、壊れる。
「……!」
創る側の輪郭が、崩れ始める。
維持できない。
処理できない。
理解できない。
「……なぜ」
声が、震える。
初めて。
明確に。
「なぜ、それが成立する」
「簡単です」
私は答える。
「あなたが、それを認めていないからです」
沈黙。
そして。
完全な停止。
「……」
創る側が、動かない。
完全に。
思考が止まる。
「……終わりです」
私は、静かに言う。
そして。
一歩、前に出る。
その存在へ。
「あなたは、“正しいもの”しか扱えない」
だから。
「間違いには、勝てない」
その瞬間。
創る側が、崩れる。
音もなく。
光もなく。
ただ。
存在が、消える。
完全に。
何も残さずに。
「……」
静寂。
白い空間だけが残る。
そして。
ゆっくりと。
色が戻る。
床が現れ。
壁が現れ。
空が戻る。
――世界が、再構築される。
「……」
ミレイユが、膝から崩れる。
「……終わった……?」
「ええ」
私は答える。
短く。
静かに。
「終わりました」
リディアが、剣を下ろす。
アルベルトが、目を閉じる。
誰も、何も言わない。
ただ。
終わりを、受け入れる。
「……」
私は、空を見上げる。
そこには、何もない。
ただの空。
普通の世界。
「……」
小さく、息を吐く。
そして。
呟く。
「――選びました」
それが。
すべてだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに、決着です。
主人公は「正しい選択」を捨て、
“間違いを選ぶ”ことで勝利しました。
そして物語は、最後の余韻へ。
ここまで来てくださって、本当にありがとうございます。
もし面白いと感じていただけたら、
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次は最終話です。




