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一度すべてを失った私が、「選ばない」という選択で世界を壊すまで  作者: 優雨セレス


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第38話 それでも選ぶ

 ――静かだった。


 あれほど歪んでいた空間は、すでに元の形を取り戻している。


 白は消え、空がある。


 風がある。


 音がある。


 世界が、戻っている。


「……」


 私は、ゆっくりと周囲を見る。


 ミレイユは、その場に座り込んでいる。


 まだ少し震えているが、確かに“存在している”。


 リディアは剣を収め、周囲を警戒している。


 アルベルトは、静かに立ったまま、目を閉じていた。


「……終わったのですね」


 リディアが、低く言う。


 確認するように。


「ええ」


 私は頷く。


 短く。


 だが、確信を持って。


「終わりました」


 その言葉が落ちた瞬間。


 空気が、少しだけ緩む。


 張り詰めていたものが、ほどけていく。


「……よかった……」


 ミレイユが、小さく呟く。


 安心したように、肩の力を抜く。


 だが。


 その表情は、どこか複雑だ。


「……」


 アルベルトが、目を開ける。


 そして、私を見る。


「……それで」


 静かに問う。


「何を選んだ」


 核心。


 だが。


 私はすぐには答えない。


「……」


 視線を、少しだけ落とす。


 思い出す。


 一回目。


 何も決められなかった自分。


 正しさを探して、動けなかった時間。


 そして。


 今。


「……私は」


 ゆっくりと、口を開く。


「一人を選びました」


 その言葉に。


 ミレイユの肩が、わずかに揺れる。


 リディアが、視線を鋭くする。


 アルベルトは、動かない。


 ただ、聞いている。


「……誰を」


 アルベルトが問う。


 私は、顔を上げる。


 そして。


 まっすぐに、答える。


「……私の意思で決めました」


 沈黙。


 誰も、すぐには言葉を返さない。


「……それは」


 リディアが、低く言う。


「正しかったのですか」


 問い。


 だが。


 私は、首を振る。


「いいえ」


 はっきりと。


「正しくはありません」


 その瞬間。


 空気が、止まる。


「……では」


 ミレイユが、不安そうに言う。


「間違いだったんですか……?」


「ええ」


 私は頷く。


 迷いなく。


「間違いです」


 その言葉。


 重い。


 だが。


 逃げない。


「……」


 全員が、黙る。


 その答えの意味を、受け止めている。


「……でも」


 私は続ける。


「それでいいんです」


 顔を上げる。


 はっきりと。


「私は、“正しさ”で選びませんでした」


 一歩、踏み出す。


「私が選びたいと思ったから、選びました」


 その言葉。


 静かだが。


 強い。


「……」


 ミレイユが、ゆっくりと息を吸う。


 そして。


 小さく、笑う。


「……それでいいんだと思います」


 涙が、少しだけ浮かんでいる。


 だが。


 表情は、穏やかだ。


 リディアが、短く息を吐く。


「……納得はできませんが」


 そう言いながらも。


 剣には手をかけない。


 受け入れている。


 アルベルトが、ゆっくりと頷く。


「……それがお前の答えか」


「ええ」


 私は答える。


「これが、私の選択です」


 その瞬間。


 すべてが、確定する。


 この世界は。


 もう、“正しさ”では動かない。


「……」


 私は、空を見上げる。


 何もない。


 ただの空。


 だが。


 それでいい。


「……」


 小さく、息を吐く。


 そして。


 言う。


「これからも、選びます」


 誰に向けた言葉でもない。


 ただ。


 決めたこと。


「……間違えても?」


 ミレイユが、静かに問う。


「ええ」


 私は、頷く。


「間違えても」


 その一言。


 確定している。


「……」


 風が吹く。


 柔らかく。


 優しく。


 世界は、続いている。


 完全ではない。


 完璧でもない。


 だが。


 確かに、存在している。


「……」


 私は、一歩前に出る。


 進む。


 止まらない。


 もう、迷わない。


「――今度は、選ぶ」


 それだけを、決めて。


 歩き出した。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


最後までお付き合いいただき、感謝しています。


この物語は、「正しい選択」を捨て、

「自分で選ぶ」ことに辿り着く話でした。


もし少しでも心に残るものがあれば、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


またどこかでお会いできたら嬉しいです。

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