第34話 創る側の条件
――白い。
何もない空間に、私は立っている。
足元も、空も、境界もない。
ただ、“存在している”という感覚だけがある。
手の中には、まだ残っている。
あの“核”。
触れているだけで、理解できる。
これは。
――決定するためのもの。
「……理解したか」
声が響く。
振り向かなくても分かる。
創る側だ。
姿は見えない。
だが、確実に“上”から見ている。
「ええ」
私は答える。
短く。
無駄なく。
「なら、簡単だ」
声は淡々としている。
「一つを選べ」
その瞬間。
空間が、わずかに変化する。
目の前に、像が浮かび上がる。
ミレイユ。
リディア。
アルベルト。
そして――見知らぬ誰か。
いや。
違う。
“まだ見ていない可能性”。
「……」
私は、何も言わない。
「誰を残す」
創る側の声。
「誰を捨てる」
明確な二択。
逃げ場はない。
「それが、お前の役割だ」
その言葉。
重い。
だが。
理解できる。
これは強制ではない。
――前提だ。
「……選ばなければ?」
私は問う。
確認のために。
すでに答えは見えているが。
「崩壊する」
即答。
迷いなく。
「すべてが、均等に壊れる」
やはり。
そういう構造だ。
「……」
私は、ゆっくりと視線を動かす。
ミレイユ。
こちらを見ている。
不安そうに。
だが、何も言わない。
リディア。
まっすぐに立っている。
覚悟を決めた目だ。
アルベルト。
静かにこちらを見ている。
何も言わない。
任せている。
「……」
私は、目を閉じる。
考える。
いや。
違う。
これは、考える問題ではない。
“選ぶ”問題だ。
「……」
ゆっくりと、息を吐く。
そして。
目を開ける。
「選びません」
その瞬間。
空間が、きしむ。
明確に。
「……ほう」
創る側の声が、わずかに低くなる。
「まだそれを続けるか」
「ええ」
私は頷く。
「それが前提なら」
一歩、前に出る。
「前提を壊します」
沈黙。
そして。
「どうやって」
創る側が問う。
「簡単です」
私は答える。
「その“二択”を無効にする」
その瞬間。
空間が、大きく歪む。
強く。
激しく。
「……不可能だ」
声に、わずかな苛立ち。
いい。
揺れている。
「ええ」
私は頷く。
「だからやります」
視線を上げる。
「これは」
手の中の核を見る。
「“一つを選ぶためのもの”ではない」
そして。
「“選ばせるためのもの”です」
その瞬間。
核が、強く光る。
反応している。
理解している。
「……」
創る側が、黙る。
完全に。
「なら」
私は続ける。
「選ばなければ、成立しない構造」
一歩、踏み出す。
「それ自体が、欠陥です」
空間が、揺れる。
均衡が、崩れ始める。
「……」
ミレイユが、小さく息を呑む。
「セレスティア様……」
声が、震えている。
だが。
止めない。
リディアが、剣を握る。
強く。
アルベルトが、静かに頷く。
全員が、見ている。
この選択を。
「……いいだろう」
創る側が、低く言う。
そして。
初めて。
はっきりと感情を乗せる。
「ならば、その欠陥ごと壊してやる」
その瞬間。
空間が、崩れ始める。
急激に。
強制的に。
「――!」
ミレイユが声を上げる。
リディアが一歩踏み出す。
アルベルトが構える。
だが。
私は動かない。
ただ。
核を、強く握る。
「……」
理解している。
これは。
次の段階だ。
選ばないことを続ければ。
維持できない。
必ず。
どこかで。
壊れる。
「……」
私は、目を閉じる。
そして。
静かに呟く。
「……やはり」
答えは一つ。
逃げられない。
これは。
選ばなければならない問題ではない。
選び方の問題だ。
「……次で終わりです」
その瞬間。
空間が、完全に崩壊を始める。
すべてが、落ちていく。
白が、割れる。
世界が、裂ける。
そして。
創る側の声が、響く。
「――では、見せてみろ」
低く。
深く。
「お前の“答え”を」
その瞬間。
すべてが、暗転した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに「創る側の条件」が明らかになりました。
この世界は、“必ず一つを選ばせる構造”でした。
そして主人公は、それ自体を否定します。
ですが次は、その限界が来ます。
ここからが本当の決断です。
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次は「選ばない限界」です。




