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一度すべてを失った私が、「選ばない」という選択で世界を壊すまで  作者: 優雨セレス


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第30話 自己の切断

 ――自分が、崩れる。


 その感覚は、痛みではなかった。


 もっと静かで。


 もっと致命的なものだった。


「……っ」


 視界が揺れる。


 足元が曖昧になる。


 立っているのか、浮いているのかもわからない。


 呼吸が浅くなる。


 いや。


 呼吸している“意味”が、わからなくなる。


「セレスティア様!」


 ミレイユの声。


 聞こえる。


 でも。


 それが誰の声なのか、一瞬だけ分からなくなる。


「……誰」


 口から、勝手に漏れた。


 その瞬間。


 空気が、凍る。


「……え?」


 ミレイユが、固まる。


 リディアが一歩前に出る。


「しっかりしてください!」


 その声も、遠い。


 名前が出てこない。


 顔は認識できる。


 だが。


 それが“誰か”に結びつかない。


 ――切られている。


 今までとは違う。


 関係でも、意味でもない。


 もっと根本。


 “自分”だ。


「……これは」


 アルベルトが低く言う。


「まずいな」


 正しい。


 これは、まずい。


 私は、ゆっくりと息を吸う。


 思考を、繋ぎ止める。


 何が起きている。


 整理する。


 ・記憶が分断されている

 ・認識が不安定

 ・自己と外界の境界が曖昧


 つまり。


「……私が」


 私は呟く。


「“私である理由”が切られている」


 その瞬間。


 創る側が、わずかに笑う。


「そうだ」


 はっきりと。


 肯定する。


「個体も、関係も、前提も越えた」


 一歩、前に出る。


「次は、“お前自身”だ」


 視界が揺れる。


 足元が消える。


 思考が、抜ける。


「……っ」


 膝が落ちる。


 立てない。


 これは。


 立つ意味がないからだ。


 歩く意味も。


 話す意味も。


 考える意味も。


 すべてが、薄れる。


「セレスティア!」


 リディアが叫ぶ。


 強く。


 はっきりと。


 その声に、ほんの一瞬だけ。


 引き戻される。


 だが。


 続かない。


 繋がらない。


「……」


 私は、ゆっくりと目を閉じる。


 考える。


 何を使う。


 何が残っている。


 言葉はある。


 だが、意味が薄い。


 関係はある。


 だが、繋がらない。


 なら。


 何だ。


 ――残っているもの。


 それは。


 “選択”だ。


「……」


 私は、ゆっくりと目を開ける。


 視界はぼやけている。


 だが。


 それでいい。


「……決める」


 声が出る。


 かすれているが。


 確かに。


「何を……!」


 ミレイユが、叫ぶ。


 その声も、揺れている。


 だが。


 届いている。


「……私を」


 私は言う。


「定義する」


 その瞬間。


 空気が、止まる。


 創る側の動きも。


 一瞬だけ。


「……何?」


「簡単です」


 私は続ける。


「私は、誰か」


 それを。


「今、決めます」


 記憶ではない。


 過去でもない。


 意味でもない。


 ただ。


 “選択”。


「……」


 創る側が、黙る。


 観察している。


 止めるべきか、測っている。


 だが。


 遅い。


「私は」


 言葉を紡ぐ。


 一つずつ。


「失敗した者です」


 その瞬間。


 何かが、戻る。


 断片的に。


 だが、確かに。


「私は」


 続ける。


「やり直している者です」


 視界が、少しだけ鮮明になる。


 リディアの輪郭が戻る。


 ミレイユの表情が見える。


 アルベルトの位置が認識できる。


「私は」


 さらに。


「選ばない者です」


 その瞬間。


 思考が、繋がる。


 完全ではない。


 だが。


 崩れない。


「……なるほど」


 創る側が、低く言う。


「自己定義か」


 その声に。


 わずかな苛立ち。


「ええ」


 私は答える。


「あなたは、外から切る」


 だから。


「内側から、固定する」


 その瞬間。


 床が揺れる。


 だが。


 私は倒れない。


 立てる。


 まだ。


 崩れていない。


「……だが」


 創る側が言う。


「それも、不完全だ」


「ええ」


 私は頷く。


「だから、更新します」


 その一言で。


 空気が、変わる。


「……何?」


「私は」


 ゆっくりと。


 はっきりと。


「今、選び続ける者です」


 その瞬間。


 何かが、完全に繋がる。


 過去ではない。


 未来でもない。


 “今”。


 それだけで。


 成立する。


「……」


 創る側が、黙る。


 完全に。


 止まる。


 そして。


「……面白い」


 低く、呟く。


 その声は。


 はっきりと、揺れていた。


 初めてだ。


 完全に。


 制御できていない。


「だが」


 一歩、下がる。


「それも、いずれ壊れる」


「でしょうね」


 私は答える。


 あっさりと。


 それが事実だから。


「ですが」


 一歩、前に出る。


「その前に」


 視線を合わせる。


「あなたを壊します」


 その瞬間。


 空気が、震える。


 完全な対立。


 初めて。


 明確に。


 創る側が、笑った。


 はっきりと。


「……いいだろう」


 その目が、鋭くなる。


「なら」


 空間が、歪む。


 大きく。


 深く。


「“一回目”を見せてやる」


 その瞬間。


 視界が、引き裂かれる。


 強制的に。


 意識が、引き込まれる。


 理解する。


 これは。


 逃げられない。


 ――核心。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「自己の切断」という最も危険な攻撃に対して、

主人公が“自分を定義し直す”ことで耐える回でした。


そしてついに、

物語の最大の核心である「一回目」が開かれます。


ここから一気に物語の本質に入ります。


もし続きを読みたいと思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は「一回目」です。

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