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一度すべてを失った私が、「選ばない」という選択で世界を壊すまで  作者: 優雨セレス


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第14話 切られた後の世界

 ――“遅い”。


 そう、確かに見えた。


 聞こえたわけではない。

 でも、全員が同じ意味を理解した。


 次の瞬間。


 騎士の体が、跳ねた。


「下がって!」


 リディアの声。


 今度は迷いがない。


 彼女は動く。

 考えながら、止まらずに。


 その動きに、“切断”は反応しない。


 ――正しい。


 だが。


「……違う」


 私は呟いた。


 これは。


 さっきまでとは違う。


 騎士が、一歩踏み出す。


 ぎこちない。

 だが、確実にこちらへ。


 目は焦点を結んでいない。


 なのに。


 “見ている”。


「……あれ、生きてるの?」


 ミレイユの声が震える。


「いいえ」


 私は首を振る。


「“戻ってきた”だけです」


 その言葉に、リディアが息を呑む。


「戻ってきた……?」


「ええ」


 私は、騎士を見据える。


「観測から切り離された存在が」


 一歩、近づく。


「別の形で再接続されています」


「……再接続?」


 アルベルトが低く繰り返す。


「はい」


 私は頷く。


「ただし」


 騎士の動きを追う。


「自分ではない」


 その瞬間。


 騎士が、急に速度を上げた。


「――!」


 一直線。


 リディアに向かって。


 だが。


 彼女は止まらない。


 動き続ける。


 予測し、回避する。


 ぎりぎりで躱す。


「……!」


 騎士が空振る。


 その動きは、単純だ。


 でも。


 明らかに“狙っている”。


「……攻撃してる」


 男が、低く言う。


「そうですね」


 私は答える。


「“切られた者は、次の刃になる”」


 その瞬間。


 空気が凍る。


 理解が走る。


「……連鎖」


 アルベルトが呟く。


「ええ」


 私は頷く。


「これが、次の段階です」


 リディアが、息を整える。


 動き続けながら。


「……どうすれば」


 今度は迷いがない。


 判断を求める声だ。


 私は、即答する。


「止めます」


「え?」


「この段階は」


 一歩前に出る。


「避けるだけでは終わりません」


 騎士が、再び向かってくる。


 今度は、私に。


 速い。


 でも。


 読める。


 私は、一歩だけ踏み込む。


 その軌道に。


 ――ぶつける。


 手を伸ばす。


 騎士の肩を掴む。


「……っ!」


 リディアが息を呑む。


 危険な行動。


 でも。


 必要だ。


「止まりなさい」


 低く言う。


 騎士の体が、震える。


 抵抗。


 だが。


 完全ではない。


「……繋がっている」


 私は呟く。


 かすかに。


 まだ、残っている。


 “元の意識”。


「……戻れる」


 その瞬間。


 騎士の動きが、わずかに止まる。


 ほんの一瞬。


 でも。


 確かに。


「……今です」


 私は言う。


「リディア」


「はい!」


 彼女は、迷わない。


 すぐに動く。


 騎士の前に回り込む。


 視線を合わせる。


「あなたは――」


 言葉を紡ぐ。


 止まらずに。


 考えながら。


「ここにいます」


 その一言。


 シンプルな。


 でも。


 確かな言葉。


 騎士の体が、揺れる。


 大きく。


 そして。


 崩れる。


 今度は。


 完全に。


「……」


 静寂。


 さっきとは違う。


 重い。


 でも。


 終わった静けさ。


「……戻した?」


 ミレイユが、かすれた声で言う。


「いいえ」


 私は首を振る。


「止めただけです」


 完全ではない。


 でも。


 十分だ。


 リディアが、息を吐く。


 初めて。


 ほんの少しだけ。


 安堵の色が見えた。


「……できる」


 小さく呟く。


 その言葉に。


 私は、わずかに頷いた。


「ええ」


「ただし」


 続ける。


「一度だけです」


 リディアの顔が、引き締まる。


「……どういう意味ですか」


「同じ方法は、通じません」


 短く言う。


「次は、対応されます」


 男が、笑う。


「ゲームだね」


「ええ」


 私は答える。


「適応してくる」


 それが、敵だ。


 “観測を止める者”。


「……つまり」


 アルベルトが言う。


「時間がない」


「その通りです」


 私は頷く。


 そして。


 視線を上げる。


 廊下の奥。


 さっき影が現れた方向。


 そこに。


 また。


 気配がある。


 今度は。


 隠れていない。


「……来ます」


 静かに言う。


 全員が、構える。


 でも。


 違う。


 さっきとは。


 気配が。


 もっと。


 重い。


 濃い。


 そして。


 明確な意志を持っている。


 足音が、響く。


 ゆっくりと。


 確実に。


 こちらへ。


「……次は」


 男が、低く言う。


「本体かな」


 私は答えない。


 ただ。


 息を整える。


 これは。


 もう。


 避けるだけの段階ではない。


 そして。


 影が、姿を現す。


 さっきと同じ。


 でも。


 違う。


 今度は。


 “見ている”。


 はっきりと。


 私を。


「――見つけた」


 低い声。


 はっきりと。


 その言葉は。


 他の誰でもない。


 私に向けられていた。


 空気が、凍る。


 そして。


 私は、理解する。


 ――標的が、変わった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


“切られた後”のルールが明らかになり、

そして戦いは次の段階へ入りました。


避ける戦いから、

対処する戦いへ。


そしてついに、

主人公自身が“明確な標的”になります。


もし続きが気になったら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は「狙われる側の戦い」です。

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