凹みおっさん。
ちまはのほほんとしつつもやはり野良の血が濃いのだろう、真正面から行くとちまちま走りをしてよそよそと逃げていく。追いかけ回すのも可哀想だからその時は撫でることを我慢して餌をそっと置くだけに留めている。そうすると、いつのまにか完食した銀色の餌入れが見られるのだ。そしてわたしは食べてくれたことに安心する。
ちまの気性は荒くはないが気分の浮き沈みはやはり人間でも猫でもあるらしい。
静かに鎮座して撫でられることを待っていることもあるし、どこか物陰に隠れて姿を消すこともある。
ぬぼ先生は人間も猫も大好きなので、調理中だろうが睡眠中だろうが構わず構え構え攻撃をしたあと、ぼーっとしている。ビビリーにょ伯爵は基本的に落ち着いて暮らしているが、拾ってきたわたしにだけはなぜかビビリ倒して懐かない。ひょいっとキャットタワーの箱の中に登って入り触れるものなら鋭い爪でひっかいてくるし、姿を認識するだけで逃げることが殆どだ。しかし冒険心だけは逞しいので、窓を開けろと要求する時だけは「近くに来て早くあけろ!」と威張り散らかす。家の中でも最も美しい青い目とシャム風の小柄な姿で、家族からの愛称は「王子」だ。
話が脱線したが、今日のちまは気分が乗らない日だったらしい。
いつものテーブル下の座椅子鎮座をせず、どこを探してもいないというので、両親がいない時間に探し回ったら父の部屋の本棚の下のスペースに引きこもっていた。迷わずちゅーるを持っていくと、いつもなら口をもごもごさせながら飛びついてくるのだが、今回は顔を背けた。ちまを撫でられる位置まで移動して、ちま、と呼びながらなでなでを繰り返してお尻あたりをぽんぽんすると足に力が入り、いつものしっぽぴーん!だ。ゴロゴロと言い出したのでちゅーるをあけて差し出してみるとものの数秒で平らげた。恐らくなにか心理的なもので凹んでいたのかもしれない。家猫の中で最も人間に近い猫だから。餌より先に温かさに触れたかったのかもしれない。そんなちまを撫でて、わたしもあたたかさを取り戻していく。君がいちばんの「親友」だよ。気が向いたら出ておいで。




