色々な感情の出る結城城
晴朝を先頭に六三郎、源太郎、喜兵衛、源次郎、銀次郎、新左衛門の6人が後ろを歩く。城内の家臣達は晴朝を見て
「大殿、お久しぶりにございます」と、挨拶の言葉は出るが、六三郎達を見て一気に固まる
その理由は六三郎達6人なのだが、六三郎はそれを実感していない。そんな状況が何度も続いていると、六三郎は
(家臣の皆さん、源次郎と銀次郎と新左衛門は勿論だけど、源太郎と昌幸さんにもビビっているみたいだな
まあ、こればかりは仕方ない。脳筋度合いか強い源次郎と銀次郎と新左衛門はガタイがこの時代では規格外だから怖いし
源太郎と昌幸さんも、赤備えの中では前に出ないけど、俺よりも戦経験が多いから、説明出来ない凄みがあるんだろうな)
※六三郎はそんな超人達をまとめている自分が1番恐れられていると思っていません
そんな他人事の様に考えていた。六三郎が考え事をしながらも進んで行くと
「義父上!お入りくだされ!」
最初に晴朝を呼ぶ声が聞こえてくる。大広間に到着していた様で、声の主は晴朝の養子で現在の結城家当主の朝勝だった
形式上的な事になるが、六三郎達は一旦、隣の部屋で待機する事になった
大広間では朝勝と晴朝が最初に挨拶と会話を開始する
「七郎よ、朝も早くから城に来て済まぬ」
「いえいえ、義父上が来てくれるのですから、その様な事はありませぬ。気にせず、いつでも来てくだされ!」
「そう言ってもらえると、儂も気が楽じゃよ。改めてじゃが、七郎よ。領地をしっかりと治めておるな」
「その事ですが、義父上。実は三年前の北条家の内乱に下総国の武士達は殆ど参戦していなかった事もあり
北条家から佐竹家へ下総国のおよそ三分の一が割譲された事もあり、佐竹家に仕える事になった者達は良いのですが
そうでない者達は下野国に行き、義父上の実家の小山家に仕えたり、拙者の実家の宇都宮家に仕えたりと、かなりの距離を移動せざるを得ない状況になっておるのが」
「苦労させてしまい、申し訳ない。そう言う事じゃな」
「はい」
晴朝は会話の中から、朝勝の悩みを聞くと
「七郎よ、やはりお主は優しいのう。今にして思えば、三年前の戦に儂が出陣しておけば、お主にこんな気苦労をさせずに済んだのじゃが、誠に済まぬ」
三年前の戦に自らが出陣しなかった事を謝った。晴朝の謝罪に朝勝は
「そんな義父上!義父上は何も悪くありませぬ!なので、その様な事はやめて頭を上げてくだされ!」
晴朝の謝罪をやめさせる。朝勝に促されて頭を上げた晴朝は
「そう言ってもらえると、儂も気が楽じゃが、七郎よ。お主は、いや正確にはお主の兄で宇都宮家当主の弥三郎殿は、現在の状況を良く思っておらぬよな?」
いよいよ本題に入ろうとすると、朝勝は
「義父上の仰るとおりです。兄上は、下野国から二十万石を減らされた事で
「家臣は増えたが領地が少ないので、領地を治めるのも一苦労だ」と仰っておりました
我々結城家もどうにかしてやりたいのですが、勝手な事は出来ないので」
兄の宇都宮国綱が領地経営に苦労しているが、あくまで自分は結城家当主なので、勝手な事は出来ないと話す
朝勝の言葉を受けて晴朝は
「七郎、その事で儂から重要な話がある。良く聞いてくれ」
真剣な顔になる。晴朝の言葉を聞いて朝勝も姿勢を正すと晴朝は話を始める
「義父上、どの様な事でしょうか?」
「うむ。実はな、儂はお主に家督を譲ってから隠居先で過ごしておったが、その間に子が生まれたのじゃ」
晴朝の告白に、朝勝は
「はっ?えっ?義父上、それは誠の話、なの、です、か?」
驚きすぎて、言葉がおかしくなった。そんな朝勝に晴朝は
「誠の話じゃ。そこでじゃ七郎。お主やお主が実家の宇都宮家から連れて来た家臣達は
儂の子に家督を奪われると思っておるかもしれぬが安心せよ
実はな、儂と子達、更にはこの書状に名が載っておる家臣達じゃが、とある高名な武将
まあ知っておるじゃろうが、織田家家臣の柴田播磨守殿の領地に行く事を決めたのじゃ」
朝勝に下総国を出ていく家臣達の名前が記載されている紙を渡す。内容を確認した朝勝は
「義父上、これは誠ですか?何故、義父上とこの者達が下総国を出る決断をくだしたのですか?別に出ていかずとも」
晴朝達に出ていかない様に話すが、晴朝は
「七郎よ、その件について柴田殿と話してみよ。お主が柴田殿を納得させる事が出来たならば、儂は下総国を出る事を諦める」
「六三郎とディベートして、勝てたなら出ていかないよ」と、伝える。それを聞いた朝勝は
「誠ですか!ならば、その柴田播磨守殿と話をしたく!誰ぞ、柴田播磨守殿を連れてまいれ!」
とてもやる気が漲っていた。朝勝の命令を受けた家臣は大広間を出て隣の部屋の六三郎達に
「殿がお呼びですので、大広間までお越しください」
大広間へ来る事を伝えて、そのまま案内した。そして、大広間に入ると六三郎達を見た朝勝は
「ひっ!」と軽く恐れの声を出していたが覚悟が決まった様で
「柴田播磨守殿ですな、拙者、結城七郎朝勝と申します」
六三郎に挨拶をする。六三郎も
「柴田従五位下播磨守六三郎長勝と申します」
挨拶を返す。六三郎は勿論、後ろに控える5人を見た朝勝は迫力にビビっているが
「ま、前置きなしで、お聞きしますが、柴田殿。何故義父上や義父上の子達、更には家臣達を領地に連れて行くのか、教えてくだされ!」
何とか勇気を振り絞って、六三郎に質問する。質問された六三郎は
「七郎殿、実は似たような状況が奥州の会津で起きたのじゃが、先ずはそれを聞いてくれぬか?」
会津で起きた蘆名家の事を具体例として、朝勝に話す。それを聞いた朝勝は
「柴田殿、仰りたい事は理解出来ました。ですが、やはり義父上が出ていく事、到底納得出来ませぬ!」
事情は理解したが、それでも到底納得出来ないと六三郎に伝える
それを聞いた六三郎は
(あ〜、面倒くせえ!下総国が条件次第では全部自分の領地になるんだから、それで良いじゃねーか!何故、そんなに結城殿に残って欲しいんだよ!)
若干、イラついていた。それでも冷静に朝勝へ
「七郎殿、結城殿の親心が分かりませぬか?結城殿は、自身が一々口出しせずとももう大丈夫だと、七郎殿へ太鼓判を押したのです!
当主として、領主として、です!その為に自身の隠居用の領地も渡して、七郎殿の兄である宇都宮殿の怒りを抑えてもらいたい
下総国に、ひいては関東にやらずとも良い戦が起きない様、決断したのです!
そのお気持ちが、何故分からぬ!良いか、七郎殿!結城殿は七郎殿が一人前に、立派になったから、全てを任せて良いと判断したからこそ、此度の決断をしたのじゃ!
これから全ての事を、七郎殿が決めよ!宇都宮家に領地を割譲するも、結城家の領地として治めるも、七郎殿の考えひとつ!
なればこそ、結城殿が心配しない当主になりなされ!よろしいな!」
「晴朝がお前さんを一人前だと認めたから今回の決断をしたんだぞ!」と檄を飛ばしていた。それを聞いた晴朝も
「のう、七郎よ。十年前にお主が宇都宮家から来た時は色々と儂が教えておった。だが、最早その様な事をせずとも、お主を当主として認めておる
だからこそ、儂が下総国に残っていては、お主の当主としての立場が不安定になるのじゃ。だから、儂は下総国を出た方が良いのじゃ。ここ迄言えば分かるな?」
朝勝へ自身が出ていく理由を伝える。出ていく理由が「当主としての立場を確立させる為」と言われた朝勝は
「義父上、そこまで拙者の為に」
嬉しさのあまり、泣き出した。そんな朝勝を見た晴朝は
「泣くでない。だが、七郎よ。出ていく儂達はうるさく言わぬぞ。家臣達は勿論、いざとなれば宇都宮家とも話し合え」
そうアドバイスを伝える。アドバイスを聞いた朝勝は
「はい。義父上と柴田殿の言葉を胸に、領地を治めていきます。義父上も柴田殿の領地で長生きしてくだされ!」
晴朝が下総国を出ていく事を了承した。こうして、六三郎達が下総国を出る事に何の障害も無くなった
晴朝の隠居先に戻る為、大広間を出ようとした時、六三郎は朝勝に
「七郎殿、拙者から最後に一言。出来るかぎり関東を戦場にしないでくだされ!拙者は3年前の戦で、関東への出陣は終わりにしたいので!」
「関東を戦場にするなよ」と伝える。その時の六三郎の迫力が凄かったのか朝勝は
「は、はい!関東が戦場にならない様、兄上は勿論、周辺領主とも良好な関係を築きます!」
ビビリながらも、六三郎にそう答えた。こうして、六三郎達は結城城を後にした。




