とても怖い姉が来た理由とは
場の空気が落ち着いた事を確認した勝家は盛政に対して
「改めてじゃが、玄蕃よ。大殿が最上殿に柴田家に残ってくれと仰っている事は分かった
その文を玄蕃が持って来る大役を受けた事も分かった。それで、お主の母である姉上が態々お主に同行した理由を教えてくれぬか?」
甲斐が同行している理由を質問した。しかし盛政が答える前に
「何だい権六。私が居たら、何か不味い事でもあるのかい?」
「自分が居たらダメなのか?」と、勝家に逆に質問する。今や織田家の重鎮であり、
領地にその存在を知らぬ者の居ない大人物の勝家だったが若い頃から姉達には頭が上がらない様で
「姉上、その様な事は言っておりませぬ。拙者が言っておるのは、姉上は拙者よりも歳上ですから
領地で静かに過ごしていたはずなのに、此度玄蕃の領地である近江国から距離のある播磨国へ来た理由が何なのかと聞いておるのです」
何とか言葉を丁寧に伝えていた。勝家の言葉に甲斐は
「まったく、今年で喜寿の年寄りのくせに小さい事を言うねえ。亡き父上が居たら、まあ、それはいいとしようか、その前に」
勝家に小言を言おうとしたが、その前に市に向き直り
「改めてですが、お市様。権六の姉の佐久間甲斐と申します。権六の様な愚弟と夫婦になっていただいただけでなく
子をもうけてくださった事、亡き両親に代わり御礼申し上げます」
勝家と夫婦になって、子をもうけてくれた事に感謝しながら頭を下げていた。甲斐の行動に市は
「あ、あ、義姉上。その様な事、おやめください。私は嫁ぐなら権六様なら安心して嫁げると決心したのですから!」
甲斐に頭を上げてもらう様、言葉を選んでいた。市の言葉を聞いた甲斐は
「お市様のお言葉に甘えて、頭を上げさせていただきます」
そう言いながら、頭を上げて
「それじゃあ権六。私が久之助に同行した理由だけど、久之助の新しい嫁の君花の妹の君江と弟の勝五郎の事なんだけど
権六の元で姫としての所作と武士としての所作は勿論だけど、君江には将来的に何処かに嫁がせても恥ずかしくない教養を
勝五郎には将来久之助と君花の子供を支えられる内政の基礎を叩き込んで欲しい事を頼みに来たんだよ」
盛政の新しい嫁の君花の妹の君江、弟の勝五郎を鍛えて欲しいと頼んで来た
甲斐の言葉を聞いた勝家は
「そう言う事でしたか。まあ、そう言う事でしたら、寺子屋の部屋に余裕があるので大丈夫でしょう」
甲斐のリクエストを聞いた勝家は、話を終わらせようとして
「それでは、流石に今からお帰りいただくのは遅いですから、本日は休んで明日にでも」
とっとと休ませて、明日にでも帰そうとしていたが、甲斐は
「権六!まだお前さんに頼みたい事があるんだから、勝手に休ませるんじゃないよ!まったく、私は年寄りだけど、こんな日の高いうちに寝るわけないじゃないか!」
勝家の考えを見抜いて、「年寄り扱いするな!」と、小言をぶつけていた
策略が見抜かれた勝家は
「分かりました、分かりましたから。それで姉上、他に拙者に頼みたい事とは何でしょうか?」
仕方ないので、甲斐のもう一つのリクエストを聞く事にした。甲斐のリクエストは
「それなんだけど、久之助の娘、つまり私の孫娘の虎の嫁ぎ先と久之助の一番下の弟の源六の嫁を見つけてもらいたいんだよ
権六が無理なら、権六の息子の六三郎が見つけてくれても良いんだけど、虎も今年で二十三歳だからねえ、柴田家の家臣の独り身の男で、
誰か良い殿方は居ないかい?それに、源六は今年で二十九歳だから、そろそろ嫁をもらってくれないと、久六様が心配で出てくるかもしれないからねえ」
盛政の娘の虎姫の嫁ぎ先と、盛政から見て3番目の弟の勝之の嫁探しだった
甲斐のリクエストを聞いた勝家は
「姉上、玄蕃の娘の嫁ぎ先も、源六の嫁探しも織田家に頼んだ方が早いと思います」
「そんなのは織田家に頼め」と、遠回しに伝えるが、甲斐は
「もう既に頼んだよ!久之助が内府様に頼んだけど内府様から
「柴田家が婚姻の取りまとめは上手い事は知っておるじゃろう。儂が許可するから、柴田家の紹介で探してみよ!」と言われたのです!
なので権六!お前さんか、お前さんの息子の六三郎に頼みたいんだよ!血縁が遠ければ、虎を六三郎に嫁がせたかったけど
流石に近すぎるからねえ。しかし権六、お前さん、どんな子育てをしたから六三郎を傑物に育て上げたんだい?
二十年以上昔の事になるけど、久之助は当時とんでもなく興奮していた事を覚えているよ
まったく、父上から毎日叱られていた権六が、あんな傑物を育て上げたなんて、ねえ
ああ、済まない、話が逸れたけど、権六!お前さんの家臣でも、六三郎の家臣でも良いから、虎の嫁ぎ先と源六の嫁探しを頼むよ!」
「信忠に頼んだけど断られた!」と伝えると、改めて勝家へ
「何とかよろしく頼む!」と頭を下げた。甲斐の殊勝な態度に勝家は
「姉上、姉上がその様な態度を取るなど、雨か雷が落ちるか、六三郎が要らぬ事に巻き込まれてしまうからやめてくだされ」
まさかのフラグ発言をしてしまった。勝家の言葉に甲斐は
「何て言い方するんだい権六、まあ、私は頼む立場だから甘んじて受けるけど、虎と源六の事、よろしく頼むよ!」
そう言って念押しした。甲斐と勝家のやり取りが終わった事を確認した盛政は
「叔父上、母上が同行した理由はもう話してしまいましたが、その話に関しては叔父上に一任しますので、よろしくお願いします」
勝家に頭を下げて頼んだ。こうして、強烈な姉に「末の息子の嫁と孫娘の嫁ぎ先をよろしく頼む」と言われた勝家は
「まあ、それくらいなら何とかしましょう」と了承した。こうして、柴田家が出来る事の半分は終了した。
佐久間盛政の仮名ですが、詳しい資料を見つけられなかったので、父親の佐久間盛次の仮名から適当に付けました。そして盛政の娘の虎姫ですが、wikiで1564年生まれとありましたが、作品内では1574年生まれの設定としております。




