柴田家で祝言が行なわれていると
慶長元年(1596年)四月二十日
播磨国 柴田家屋敷
信長が家康と信忠に睦子と栄太郎の事を話した数日後、播磨国の柴田家では待ちに待った江と勝四郎の祝言が行なわれていた
「これで、江も嫁入りですね。勝四郎殿、江の事、よろしくお願いしますね」
市が涙ながらに、江の嫁入りを喜びつつ、勝四郎に言葉をかけていると、勝四郎は
「はい!江を大事にする事は勿論ですが、奥方様と越前守様、いえ義母上と義父上に早く江との子を見せる事が出来る様、頑張ります!」
市と勝家に、そう宣言した。それを聞いた勝家は
「あっという間に、儂にも息子が増えたのう。誠に嬉しいかぎりじゃ。勝四郎よ、江は少々、と言ってよいかは分からぬが負けん気が強い娘じゃが
市は勿論、つるにも鍛えられて武芸も教養も理財もそれなりに出来る娘でもある
お互いで支え合って、武田家を発展させてくれ。江は側室を迎える事に反対する様な娘ではないから
その際は遠慮なく迎えてくれ。改めてになるが、江の事をよろしく頼むぞ」
「義父上、、、ははっ!」
市と同じく、江の事を頼むと勝四郎に頭を下げた。勝四郎も返事をして返す
江と勝四郎の祝言には、屋敷内に居た全員が、何かしらの形で参加しており
武田家からは勝四郎と共に移動していた五郎達か、そして京六三郎が居ない状況でも京六郎の嫁で江の義妹の駒姫と、駒姫の父の義光、
更には利兵衛と源四郎の弟子達、寺子屋で鍛えられている各家の子息令嬢達もお祝いしていた
そんな祝言も無事に終わった翌日
慶長元年(1596年)四月二十一日
播磨国 柴田家屋敷
「それでは父上、母上。これから勝四郎様と共に甲斐国へ出立します。今生の別れにならない為にも、長生きしてくださいね」
「うむ。江と勝四郎の子を見るまで、簡単には死なぬ!だからと言って、子作りを無理にするでないぞ」
「はい。義兄である六三郎殿の様に、じっくりと仲を深めてからにしたいと思います!」
江と勝四郎は、甲斐国への出発の前に勝家と市に挨拶をしていた。そこで市から
「改めてですが勝四郎。江の事、よろしくお願いしますね。それこそ、大丈夫だとは思いますが、周辺の家と戦にならない様、
気をつけてください。この播磨国から甲斐国は遠いのです、畿内で東国寄りの国が柴田家の領地なら万が一の場合に
六三郎を動かせますが、そう簡単に領地変更があるとは思えません。なので、江と勝四郎、戦が起きない様に周辺の家とは仲良くしなさい」
江の実父である浅井長政が織田家との同盟破棄をした結果、戦になり、最終的に討死になった事をやんわりと伝えて、戦にならない様に念押ししていた
市の言葉に勝四郎は
「はい!義母上の心配が形にならない様、細心の注意を払いながら、北条家と徳川家と交流をしていきます!」
「そうならない様に気をつける」と市に伝えて、市も
「改めて、江の事、頼みます」
勝四郎に頭を下げていた。そんなしんみりした空気の中、勝家が
「市、そろそろ出立させてやろう。流石に最上殿も摩阿姫を連れて行くのじゃから、早い方が良いのじゃから」
「最上家の面々も居るから出発させよう」と促す。勝家の言葉に市は
「そう、です、ね。それでは最上殿、待たせてしまい、申し訳ありません」
義光に出発して良いと伝えて、義光も
「いえ、拙者も駒と離れるのですから、越前守殿と奥方殿のお気持ち、痛いほど分かります!
ですが我が子が幸せに暮らしているのであれば、それで良いものとしましょう!
改めてですが、越前守殿、奥方殿!駒の事、よろしくお願いしますぞ!」
「駒姫の事をよろしく」と頭を下げて頼んだ。一通りのやり取りを終えると
「それでは、出立するとしましょう!勝四郎殿、江殿。そして、摩阿。準備は良いなら動くとしよう」
そう言って立ち上がり、大手門へ向かっていると
「お、大殿!奥方様!」
源四郎が慌てながら大広間に到着した。その様子を見た勝家は
「源四郎!何か起きたのか!」
当然、源四郎に質問する。勝家の質問に源四郎は予想外の答えを伝える
「さ、佐久間玄蕃様一行が、こちらの文を持って屋敷に到着なされたのですが、大殿と奥方様に直にお話したい事があると
右府様からの文を託されたとの事です!そして、最上様が屋敷に残っているのであれば、そのまま待ってもらいたい!と、右府様が仰っていたいとも仰っております!」
源四郎の答えは
「盛政が信長からの文を持って来ているし、義光を待たせろと言ってる!」だった
それを聞いた勝家は
「また六三郎が何かしらやったのか!?」
「六三郎が何かやった」と思い、市は
「また兄上の我儘なのではないのですか?権六様、文の内容次第では無視して出立してもらいましょう!」
「また信長の我儘だろ!」と、断定していた。そんな状況なので勝家は
「最上殿、江、勝四郎、摩阿姫。済まぬが一旦、出立を取りやめてくれ!源四郎、文を渡してくれ!」
出発しようとした面々を座らせて、源四郎から文を受け取り、読み出す
「どれ。「権六へ、いきなりの文で驚いたじゃろうが、前置き無しに話したい事があるから、しっかりと聞いてくれ!
この文を玄蕃に持たせて、播磨国へ行かせた時点で、最上出羽守がまだ屋敷に残っておるのであれば、そのまま残しておいてくれ!
出羽守に文ではなく、直接伝えたい事があるのじゃ。出羽守の事、頼むぞ
次に、柴田家の寺子屋で各家の子息令嬢が鍛えられておる件で、
二郎三郎が抜き打ちで孫達が成長しておるのか見てみたいとの事じゃ。なので、卯月の終わりか五月の初め頃に儂と共に播磨国へ行くと伝えておく
そして、最後に高代や京六郎もその頃に連れてくるから、市にそう伝えてくれ」と、あるが、
最上殿。済まぬが出立を先延ばししてもらいたいのじゃが、良いか?」
文を読み終えた勝家は、義光に
「もうしばらく残ってくれ!」と頼む。文の内容を聞いた義光は
「何やら重要な内容に聞こえますから、残りましょう。勝四郎殿、江殿、摩阿。済まぬが、出立はまた先じゃ」
3人にそう伝えると、3人は勿論、それぞれの共の者達も出発準備を解除していった
場が落ち着いた事で勝家は源四郎に
「源四郎、とりあえず玄蕃達を連れて来てくれ」
「ははっ!」
盛政達を大広間に連れて来る様、命令し、源四郎も返事をして、即座に動く。程なくして盛政一行が大広間に到着したが
その中の1人を見た勝家は、腰が抜けたと言って良い程、驚かされる
その人物とは
「権六!随分と偉そうに座っているじゃないか!柴田家の縁戚が増えたなら、何で私の所に挨拶に来ないんだい!?」
「あ、あ、姉上!!何故、此方に?」
「叔父上、母上が「絶対に私も行く」と言って聞かなかったのです。申し訳ありませぬ」
盛政の母で、勝家の若い頃の話に出ていた甲斐だった。若い頃から気の強い姉に弱い勝家は
「これならば、六三郎の方がマシかもしれぬ」と、これから疲れる事になると覚悟を決めていた。
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