兄妹の話し合いが始まると
高代が宗六郎を連れて行き、足音も聞こえなくなると信長は
「さて、それでは改めて話し合いと行くが市よ、お主の後ろに控えておる若武者が権六の次男の京六郎じゃな?京六郎、市の隣に移動せよ!しっかり顔を見てみたい!」
京六郎の顔を見たいと言って、京六郎を移動させる。言われた京六郎が市の隣に移動すると
「ほお、確かに二郎三郎や勘九郎の言う通りの美丈夫じゃな!しかも、顔が整っておるだけでなく身の丈高く、体躯も逞しい!
二郎三郎、京六郎が浜松城に来た際、城内の女子達が色めき立っていたのでは?」
顔を見るだけでなく、身長と体格も見て褒めていた。そこから家康に話を振ると
「ええ、確かに大変でしたな。それこそ、勝之尉の元服祝いの品を持って来た督と婿殿も色めき立っていただけでなく
京六郎殿に姉か妹が居たら、新次郎の嫁にしたいからと京六郎殿に聞いていた程でしたから」
浜松城内でのエピソードを信長に伝える。それを聞いた信長は
「ほう。元服もまだで六三郎の様な功績もまだなのにも関わらず、早くも目立っておるな
まあ、これ程の美丈夫なのじゃから、娘を嫁にもらって欲しいと画策する者が出てくるのは」
政略結婚を考えているかの様な言葉を口にしたが、市から
「兄上!先に言っておきますが、京六郎は最上家の駒姫が正室として嫁いでおりますので
これから京六郎に嫁ぐ娘は側室になりますよ!京六郎への縁組を考えておられるのであれば、その旨をしっかりと伝えてくださいね!」
「京六郎には既に正室が居るから、縁組する場合は側室である事を説明しろ!」と、信長に対して釘をさす
それを聞いた信長は
「はっ?いやいや待て待て市よ!何故、最上出羽守の娘が京六郎に嫁いでおる?それに、最上出羽守は領地に戻っているはずじゃのに、
何故、柴田家との縁組が成立しておるのじゃ?勘九郎、お主、何か聞いておるか?」
軽いパニックになっていた。その信長に市は、縁組が決まるまでの成り行きと、そこから更に摩阿姫達のお見合いの事も細かく説明した
説明を聞いた信長は
「何じゃ、出羽守はまだ柴田家に居るから娘の駒姫も京六郎に嫁ぐ事になって、更には犬の娘達も嫁ぎ先が決まっておったのか
市、決まった事をとやかく言うつもりは無いが、何故、勘九郎に伝えておらぬ?」
縁組に文句は言わなかったが、報告しない事に不機嫌さを見せたが、市は
「あら、兄上が六三郎に他の家臣の何倍ものお役目を割り振らなければ、しっかりと伝えていたかもしれませぬよ?
そもそも、柴田家以外の家臣の家は全て、当主と嫡男が居るのに、何故柴田家だけ先代当主と幼い孫が居るだけなのですか?
それもこれも、兄上が六三郎を戦以外でもお役目を過剰に割り振っているからであると理解しておりますか?
そもそも、何故六三郎に多くのお役目を割り振っているのですか?兄上、前田家の孫四郎や、蒲生家の忠三郎は兄上の娘達を嫁がせた婿殿ですよね?
その婿殿にお役目を割り振らない理由は何ですか?兄上が見込んだ婿殿達は、
何故六三郎の半分もお役目に就いていないのですか?兄上、お答えください!」
市のこれでもかと言う程の「六三郎以外の家臣はどれだけ働いているんだ?」と、信長の痛いところを攻める言葉に、信長は返す言葉が出なかった
信長のその姿に信忠が助け舟を出す
「叔母上。父上も義弟達にお役目を割り振っていないわけではないのです。領地の開発は当然として」
信忠の言葉に市は
「勘九郎殿、六三郎は領地ではない他家の土地を開発する為、財政改善の為、三河国から始まり伊勢国、甲斐国、更に陸奥国に行っているのですよ?
戦で出陣しているわけでも無いのに、更には子作り指導で、武蔵国にも行ったそうではありませぬか!
播磨国を中心とした新しい領地に居た事など無いのにも関わらずです!それを私は改善してもらいたいだけなのです!」
「六三郎は新しい領地に居た事が無いんだけど?」と、重い言葉を返す。そこまで言われた信忠も返す言葉も無くなった
大広間が重い空気になる中、信長が口を開く
「市、確かに六三郎に役目が偏り過ぎた事は済まぬ。だが、六三郎の奴は権六や家臣達の養育が良かったのか、他者の為に働き
手を差し伸べ慈しむ事の出来る武じゃ。権六も同じ様に他者に手を差し伸べる事が出来る事は、市も分かっておるであろう?
だからこそ、儂は六三郎を臣従して間もない家や、同盟して間もない北条家に行かせたのじゃが
市がそれ程までに六三郎の事を心配していたる事、誠に済まぬとしか言えぬ」
信長はそう言いながら、市に頭を下げた。そこで市は
「では兄上、六三郎が帰って来ましたら、しばらくは領地に居ても宜しいですね?」
信長からしばらく六三郎のお役目無しの了承を得ようとしたが、信長は
「そればかりは九州の情勢次第じゃ!九州征伐は早ければ今年の内、遅くとも来年の内には始める予定じゃからな
六三郎や赤備え達が居なくとも、九州を征圧出来たならば、六三郎の役目は無しとなる。と、だけ答えておこう」
「六三郎がゆっくり出来るかは九州の情勢次第」と答えるに留めた
六三郎がゆっくり出来る可能性が半々とはいえ休める可能性が有る事を確信した市は
「分かりました。ですが、六三郎が休める様、配慮をお願いします」
信長にそう言いながら頭を下げた。こうして、信長と市の話し合いは一応、終了した
それを察した信忠から
「そ、そう言えば叔母上。実は六三郎が宇治丸の大変美味な料理を作って料理人達に教えていたのですが、
今日は良い宇治丸を手に入れたので、食べませぬか?間違いなく美味ですぞ?」
「美味しいウナギ料理を食べないか?」と聞かれたので、市は
「あら、それならばいただくとしましょうか。どうせだから高代にもその宇治丸料理の作り方を覚えてもらいましょうか」
高代にウナギ料理を覚えてもらおうと決めたが、この事が原因で安芸乃と出会い、更に色々な事に巻き込まれる事になる。




