信孝の希望は一旦待たされる
天正二十三年(1595年)十二月五日
伊勢国 神戸家屋敷
「三七!中々会う機会が無かったが、家中を統制して領地を見事に発展させておる様じゃな!父は嬉しいぞ!」
「父上、ありがたきお言葉です。しかし、徳川様もご一緒とは、大規模な戦が始まるのですか?」
長篠城で家康の長女の亀姫が娘の嫁ぎ先に宗六郎を猛プッシュしてから3週間、信長一行は伊勢国の信孝の屋敷に到着していた
大広間で挨拶をしているだけのこの時はまだ、簡単な挨拶しかしておらず信孝は戦が始まるものだと思っていたが、信長からの説明を聞くと
「また、六三郎殿は領地に居ないのですか父上、拙者が言うのもおかしな話ではありますが、六三郎殿にお役目を任せすぎではありませぬか?」
勝家と市が思っているであろう言葉を信長に伝える。信孝の言葉に信長は
「三七、それは儂も分かっておる。だが、六三郎が請け負ってある役目を他の者に委譲させたとしても、六三郎と同じだけの成果を挙げる事が出来ると思うか?」
「他の奴では、働きに期待出来ない!」と反論したが、信孝は
「父上、神戸家どころか伊勢国と伊賀国も六三郎殿の尽力によって発展したので、偉そうな事は言えませぬが、
六三郎殿にお役目が集中している状況を改善しないと、六三郎殿に万が一の事があった場合、織田家が立ち行かなくなりかねませぬ
だから父上!拙者も含めて、家臣達にお役目を割り振ってくだされ!」
「このままでは織田家がダメになるから、自分も含めて家臣達に仕事を割り振っていくべきだ!」と、信長へ伝える
信孝の言葉に信長も
「分かった分かった!だが、それは九州の情勢次第としか答えられぬぞ!六三郎の柴田家と藤吉郎の羽柴家と毛利は当然として
四国の長宗我部を加えた軍勢の総大将を源三郎に任せる予定じゃ!
「九州次第」だと答えた。それで納得したのか信孝は
「分かりました。改めてですが父上、拙者も親になって我が子がお役目を受ける時が来るのは待ちどおしいです
ですが、そのお役目が我が子に偏る事になって、更に領地に戻れないとあってはならない事です」
六三郎の現状が我が子の将来になった場合を想定して、信長に「そうならない様にしてくれ」と伝えた
そこまで聞いて信長は
「分かった。三七よ、固い話はここまでとしよう」
強引に話を終わらせる。そこから
「改めてじゃが三七よ、孫達の顔を見せてくれ。お主の子が出来た事は知っておったが、何故か情勢が落ち着かなくてな」
信孝に子供達を大広間に連れて来る様、命令する。そこから家康へも
「二郎三郎、亀姫殿と子供達も連れて来て顔合わせと行こう」
亀姫と子供達を連れて来る様、伝える。そこから信孝も家康も家臣に子供達を大広間に連れて来る様に命令した
家臣達が子供達を連れて来るまでの間、信長は信孝へ
「三七よ、お主や六三郎と共に神戸家で働いておった菫の妹の雪の事は覚えておるよな?」
「はい。兄上からの文で、仁科五郎殿に嫁いだ事も知っております」
雪の事を確認したら、信孝は信忠から教えてもらっている旨を信長に話す。それを聞いた信長は
「何じゃ、知っておったのか。驚かせてやろうと思ったのじゃが、まあ良い」
驚かせようと思っていたが、狙いが外れて少し残念そうだった。そんな信長に信孝が
「父上、拙者からひとつ教えていただきたいのですが、父上や徳川様の一行に居ました女子と幼子は、父上の新しい側室と子供なのですか?」
「ああ、高代と宗六郎の事か。高代は六三郎の側室で、宗六郎は六三郎の次男じゃ」
高代と宗六郎の事を質問すると、信長はサラッと六三郎の嫁と子供だと答えた。それを聞いた信孝は
「誠ですか!とうとう六三郎殿も親になったのですな!いやあ、とてもめでたい!」
とても喜んだ。しかし
「ん?父上、今、確か幼子は次男と仰っておりましたか?つまり、嫡男や姫が居ると言う事てすな?」
「それはそうじゃが」
いきなり熱量が上がって、信長へ他の子供達の事を確認すると
「父上!もしも可能であれば、六三郎殿の息子に拙者の娘を嫁がせる、若しくは六三郎殿の娘を拙者の嫡男に嫁がせたいので、ご協力していただきたく!」
まさかの六三郎の子供と自身の子供を縁組させたいと信長へリクエストして来た
これを聞いた信長は
「待て待て待て三七!お主まで亀姫殿と同じ事を言うと、更にややこしくなる!」
信孝にストップをかけたが、信孝は
「父上、亀姫殿とは徳川様の身内なのですか?だとしたら、六三郎殿の子供達と縁組するのではなく織田家の子供と縁組した方が良いと思いますぞ!」
どうにかして六三郎の子供と自身の子供を縁組させたいので、亀姫の子供は織田家と縁組させるべきだと提案する
そんな信孝の提案に信長はひとつずつ説明していく
「良いか三七、亀姫殿は二郎三郎の正室殿が産んだ長女で、現在は婿殿が治める三河国の奥平家に嫁いでおる
その亀姫殿は此度、六三郎の次男の宗六郎の様に大領を持つ家の人間が滅多に来ないからこそ、宗六郎に自身の娘を嫁がせるか
許嫁の座を得たいと思った事、儂が羽柴家の嫡男と、三七の嫡男を嫁ぎ先候補として挙げた事により、畿内へ同行する事になったのじゃ
だから三七、ここでお主が我を通して六三郎の子と縁組してしまう事は、一旦待ってもらいたい!良いな?」
信長の説明を聞いた信孝は
「そうだったのですか。分かりました。一旦待たせていただきます」
一応、納得した。信孝が納得したのと同じくらいのタイミングで信孝の子供達と、亀姫の子供達が大広間に到着した
どちらの子供達にも母親が付き添っていた。連れて来た子供達は神戸家は息子が2人、娘が2人、一方奥平家は息子が3人、娘が1人だった
神戸家の子供達を見た亀姫は
「あらあらあら!若君も姫君も、何と見目麗しい!伊勢守様と菫殿の良い所を受け継いでいるのが、良く分かります」
美少年度合いと美少女度合いにとても興奮していた。そしてこの時、家康は
「いやはや、浜松城に来ていた六三郎殿の弟の京六郎殿はかなりの美丈夫であったが三七殿の息子達も美丈夫になりそうじゃ」
京六郎と三七の子供を比較していた。信長は家康の言葉に
「二郎三郎!お主、六三郎の弟に会ったのか?しかも、美丈夫と言っておったな?どう言う事か説明してくれぬか?」
これまで見た事の無いリアクションをしていた。後々、この事がきっかけで、京六郎と駒姫が大変な事になっていく。




