戦国時代初の事と次の予定
天正二十三年(1595年)八月三十日
相模国 小田原城
「左京大夫!相模守殿!幻庵殿!儂の無理難題を聞いてくれた事、誠に感謝致す!」
「いえ、右府様の御提案が理に適っていると我々も納得したのですから、その様な事は、言わないでくだされ」
「そうですぞ!それに、最も喜んでくれておるのは幻庵翁ですからな」
「右府様。殿、そして大殿。曾孫達の晴れ姿をまとめて一挙に見せていただく合同での祝言を開いてくださり、誠に忝うございます
息子達の時も、孫達の時も、戦続きでまともな祝言も出来なかったのに、この様な、この様な」
信長が睦子と栄太郎の秘密を話してから15日後、この日の小田原城下は、とてつもない賑わいを見せていた
その理由は幻庵の曾孫達が全員まとめて祝言を挙げて城下町を練り歩いていた、いわゆる合同結婚式を開いたからで、この祝言に城下町の町人達は勿論、
普段は小田原城から遠い場所にいる氏政の弟の氏照達も家族総出で、祝いに来ていた。その盛り上がりを更に華やかにしたのが、
睦子が提案して、北条家の侍女、武田家が連れて来た侍女、里見家が連れて来た侍女達と共に作った、各家に嫁入りする娘達の打掛だった
それぞれの嫁ぎ先の家紋が入った絢爛豪華な打掛を作る為、氏直と氏政は北条家の全ての領地の反物を扱う店に大金を払い、小田原城に運ばせた
武田家と里見家に北条家の威信を見せつける為である事も勿論、理由のひとつだが、睦子の提案に信長が助け舟を出して、督姫も睦子の提案に乗り気だった事もあり、
実行に移されたのだが、睦子の指導が分かりやすい事で、侍女達の刺繍の腕のレベルアップが早かった事もありながらの、休む時間少なめのブラック労働で頑張った結果、
五郎の娘の鈴と仙、幻庵の曾孫の玉と若葉達が、とても美しく映えていた。そこから玉と若葉を嫁にもらう太郎と勝二郎に幻庵の家臣達から
「「「姫様の事、よろしくお願いしますぞ!」」」
「「「おめでとうございます!」」」
祝いの言葉が飛び交っていた。その様子を信長達の側に居た竜芳は
「無事に元服させてやれただけでなく、嫁をもらい、更には嫁の実家の家臣達から祝われておる。五郎、これも四郎が、命を懸けて武田家を守ってくれたからじゃな
武田家の為に何も出来なかった儂の息子が、これ程までに幸せに生きておる。それだけでも、、、」
言葉にならない程、喜びに震えていた。そんな竜芳に五郎は
「二郎兄上。四郎兄上が苦渋の決断として、幼い御館様を松と共に逃した事から、全ては始まったのです。それに、太郎兄上の孫の田之助も元服したら嫁をもらう事が決まっております
それに何より、御館様はこれから江姫様を迎えなければなりませぬ!我々もまだまだ壮健でなければなりませぬぞ!」
竜芳の肩に手をかけながら、昔の事を話していたが、そんな五郎の目にも嬉し涙が流れていた。こうして、織田家主導の北条家と里見家と武田家の合同祝言は問題なく終了した
翌日
「皆!前日の合同祝言、皆の働きもあり、とても豪華絢爛な祝言になった!北条家の家臣並びに侍女達は勿論、里見家の家臣と侍女達、武田家の家臣と侍女達、全員に感謝する!」
氏直は北条家当主として、全ての家の家臣と侍女のうち、大広間に集まった者達に感謝の言葉を述べていたこのやり取りをしばらくして終えると氏直は
「それでは右府様より、これからの予定をお話しするそうじゃ。先ずは聞いてくれ。右府様、お願いし致します」
信長に話を振る。振られた信長は、これからのスケジュールを発表する
「さて、儂からも前日の合同祝言、感謝致す。各々方の働きあればこそであった!それでは本題に入るが、
次に儂が向かう予定は遠江国の徳川家の浜松城じゃ。理由として、二年前の戦が終わってから徳川家の次男で、督姫殿の弟にあたる勝之尉殿の元服と祝言に
柴田六三郎が出席したのじゃが、その際、側室の懐妊が判明した。それが霜月の初頭であった為、懐妊中の女子に冬の季節の長距離移動は辛い事を察してくれた
徳川家が、側室と周りの者達の面倒を見てくれておるのじゃ!なので、次の予定はその者達を迎えに行く事じゃが、
その際、武田家の者達は勝四郎と一部の者達が儂と共に来る様に!勝四郎!その意味は分かるな?」
スケジュールを発表し終えた信長は、勝四郎に共に来る意味を質問する。質問された勝四郎は
「はい!江殿を迎える為です!」
信長にしっかりと答える。勝四郎の答えを聞いた信長は
「しっかりと覚えておる様じゃな!見事じゃ!流石に今からは無理なので、明日には出立出来る様、準備しておけ!
それから、これは里見家太郎にも言っておったが、勝四郎!お主も畿内へ行くのじゃ!そこで官位を手に入れられた様、勘九郎に言っておく!なので、正装も準備しておけ!」
「ははっ!」
「うむ。儂からの報告は以上じゃ。おっと、その前に左京大夫よ、これから里見太郎は畿内へ行くが、流石に嫁入りした玉殿を連れ回すわけには行かぬ!
かと言って、夫の太郎も居ないのに里見家に行かせるわけにもいかぬ!なので、戻ってくるまで、北条家にて預かってくれぬか?」
念の為に、太郎に嫁いだ玉姫の安全の為、北条家で預かってくれと頼む。頼まれた氏直は
「ええ。構いませぬ。幻庵翁、そういう事になったから、よろしく頼む」
了承して、幻庵に丸投げする。丸投げされた幻庵は
「はい。落ち着いて嫁ぐ為ですので、承知しました」
了承した。こうして、信長が六三郎に頼まれた北条家と武田家と里見家の婚姻は終了した。しかし早くも次の仕事の「高代達の回収」がスタートした。




