信長が考える仲人業務は大規模だった
天正二十三年(1595年)六月二十日
相模国 小田原城
「殿!安房国の里見家より、文が届きました!殿と大殿と幻庵様に見ていただきたい!と、何やら念を押しておりました!」
信長からの文が安房里見家の家臣の手により、北条家に届けられると、即座に当主である氏直の元へ届けられた
「ほう。里見殿から文とは、織田家に関する事かもしれぬな。とりあえず父上と幻庵翁を呼んでまいれ!」
「ははっ!」
氏直は勘が働いたのか、織田家に関する事と推測しだす。そして色々と考えていると、氏政と幻庵が大広間に到着する。到着早々、氏政は
「新九郎!里見家は何と言っておる!?まさか、織田家から北条家に鞍替えすると言ってはおらぬな?そうなっては織田家と北条家で戦になってしまうぞ!」
最悪の事態を想定していた様で、文の内容を氏直に確認していた。そんな氏政に幻庵が
「大殿、どうやら殿もまだ内容を確認しておらぬ様です。先ずは内容を確認しましょう。殿、文の読み上げお願いします」
氏政を宥め、氏直に文を読むように促す。促された氏直は、文を読み出す
「では。「北条家の者達、安房里見家から文が届いて驚いたと思うが、書いたのは里見家当主ではないぞ!織田従二位右大臣三郎じゃ!
現在、陸奥国からの帰り道で、安房里見家の屋敷で世話になっておる!北条家の領地を通りたい事、そして北条家の長老である幻庵殿の希望を叶えたいと思い、
文を書いた次第じゃ!それでは本題に入らせてもらうが、幻庵殿が六三郎に頼んでおる曾孫達の婚姻じゃが
儂が六三郎から引き継いだ!その事も含めて話し合いたいので、先ずは小田原城に寄らせてもらいたい!
了承してもらえるのであれば、安房里見家に返事を送ってもらいたい!」との事ですが、父上、幻庵翁、
まさかの右府様からの文の様ですが、如何なさいますか?そのまま右府様と信じて来てもらいますか?」
読み終えた氏直は、氏政と幻庵に意見を求めた。氏政は
「う〜む。この文は誠に、右府殿と信じて良いのかのう?里見家が北条家に戦を仕掛ける理由も無いじゃろうが」
文が本当に信長からの物なのか、確信出来ずにいた。しかし、幻庵は
「殿。そして大殿。こちらの文は間違いなく本物と見て間違いないでしょう」
「これは信長からの文と信用して良い」と言い切る。すると氏政は
「幻庵翁、何故そう言い切れるのじゃ?」
理由を求める。氏政の質問に幻庵は
「大殿。それは、拙者が曾孫達の婚姻を頼んだ事を松田の謀反の際、鉢形城に居た面々にしか話しておらぬのです。その中に柴田六三郎殿も居ました
文の中で右府様は、「六三郎から引き継いだ」と言っております。あの時、北条家の人間以外では六三郎殿しか聞いておりませぬ
その六三郎殿は、右府様と共に陸奥国に行っているそうですので。そこで六三郎殿が何かしらのお役目を受けた事により、右府様が引き継いだのでしょう、なので、この文は右府様からの文と信用出来ます!」
「一部の者しか知らない事が書いてあるから!」と言う理由から、この文が信長からの文であると氏政に伝える。幻庵の言葉に氏政は
「ふむ。そこまで細かい内容を幻庵翁が言うのであれば、間違いないか。新九郎!お主はどうじゃ?」
「拙者としても、幻庵翁の言う通りと思っておりますので、里見家に右府様を迎えに行く船を出したく!」
理解を示しつつ、最終決定を氏直に振ると、氏直は信長だと断定し、里見家に迎えに行くべき!と言い切る
それを聞いた氏政は
「うむ。ならば、里見家に船を出して、右府様一行を迎えてまいれ」
「ははっ!」
氏直に「信長を迎えて来い」と命令する。そして、信長達を迎えに船団が出発して20日後に戻って来ると
天正二十三年(1595年)七月十日
相模国 小田原城
「北条家の皆、多くの船を出してくれた事、誠に感謝する!」
信長は、小田原城の上座に近い位置に座り、北条家当主である氏直、そして父の氏政は信長の真向かいで同じ様に上座に近い位置に座る
信長が頭を下げて感謝を述べたので、大広間に集まった面々も頭を下げる。程なくして頭を上げた信長から
「さて、前置き無しで話を始めるが。北条幻庵殿、曾孫達は大広間に来ておりますかな?」
幻庵に「曾孫達は来ているか?」と確認が入る。指名された幻庵は
「ははっ!曾孫達六人全員、大広間に揃っております右府様の前にで自己紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」
「うむ。その方が顔と名を覚えられる。そうしてもらおう!」
「曾孫六人、前に行かせて良いですか?」と信長に質問し、信長も了承したので。幻庵に連れられて6人は緊張しながら信長の前に座る。6人を見た信長は
「それでは、年長の者から自己紹介をせよ!」
曾孫達に年長順に自己紹介を促す。最初に自己紹介をしたのは
「では、拙者から!拙者、幻庵曽曽祖父様の嫡男、北条三郎時長の孫の北条三郎時宗と申します!
今年で十六歳になりました!横に控えるは妹にございます!自己紹介せよ!」
「三郎兄上の妹の、玉と申します。今年で十三歳になりました!」
嫡男の時長の孫2人だった。続いて
「次に拙者が。幻庵曽祖父様の次男、北条新三郎綱重の孫の北条新三郎綱長と申します!今年で十三歳になりました!妹にも自己紹介をさせていただきたく!」
「妹の若葉と申します。今年で十二歳になりました!」
そして最期に
「次は私が、幻庵曽祖父様の三男、北条弥三郎長順の孫娘の美弥と申します。今年で今年で十三歳になりました!弟にも自己紹介をさせていただきたく!」
「弟の弥三郎と申します!今年で十一歳になりました!」
6人全員が自己紹介を終えると、信長は
「うむ。元服済みの男児が二人居て、女子達は全員嫁入りに問題無い歳じゃな!しかも女子達は皆、見目麗しい!幻庵殿、曾孫達を大層大事に育てられたのてすな」
幻庵に声をかける。信長の言葉に幻庵は
「右府様。この様な年寄りにありがたいお言葉です。拙者は息子達に先立たれ、孫達にも先立たれました。ですが、曾孫達が生きていくこれからの時代は、
戦無き世になると、数年前に六三郎殿が言っておりましたので、その言葉を信じて曾孫達が幸せに生きてくれる事が拙者の生き甲斐になっております」
六三郎が言っていた言葉を信長に伝える。それを聞いた信長は
「はっはっは!六三郎の奴、かつて道乃に言っていた言葉を幻庵殿に言っておったか!相変わらずじゃな!だが、六三郎がそこまで言い切るのであれば、
関東南部から海道沿いは戦が発生しない様にせんといかぬな!幻庵殿は勿論じゃが、左京大夫と相模守殿!儂は此度、曾孫達の婚姻に甲斐武田家を巻き込む事を宣言する!
なので、今から武田家にこの旨を書いた文を書くと同時に、武田家の面々を小田原城に入れる許可を得たいが良いか?」
曾孫達の嫁ぎ先と迎える嫁に武田家を巻き込む事を宣言した。信長の言葉に幻庵は
「今の武田家ならば、信頼できるでしょう。右府様、よろしくお願いします」
と、信長に一任する。共に戦場に立った氏直も
「拙者も幻庵翁と同じく。共に戦場に立ったからこそ分かります。今の武田家は信頼して良い家です」
同じ意見を伝える。2人の意見を聞いて、色々と考えた氏政は
「二人がそこまで言い切るのであれば、大丈夫なのでしょう!右府殿、武田家の面々を小田原城に入れる事を許可します」
「うむ!忝い!」
最終的に了承した。信長の言う「武田家の面々」とは一体、誰の事なのか?




