第5話前編:恐竜の島、御所浦の朝と黄金の観音
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激しい荒波を乗り越え、ついに御所浦島へと辿りついた二人。
距離がぐっと縮まった四郎の可愛らしいおねだりと、林の頭の中に突如響いた謎の「システムボイス」――。
恐竜と太古の浪漫が眠る島で、現代SEの知識と新スキルが炸裂します!
ぜひ最後までお楽しみください!
激しい荒波と危機を乗り越え、御所浦島へと無事漂着した二人。
砂浜の上で抱き合い、互いの温もりを確かめ合うように胸に顔をうずめていた四郎は、少しずつ呼吸が落ち着いてくると、恥ずかしそうにそっとアーシュアンの背中から離れた。
「……あのね、アーシュアン」
砂を払いながら、四郎は少しだけもじもじと指先を合わせ、上目遣いでアーシュアンを見つめた。
「さっきから……すごく心配してくれたり、助けてくれたりしたお礼に、ね。これから私のことも、もっと近くに感じてほしいから……その、普段からも『アーシュアン』って呼んでもいい……かな?」
少し頬を朱に染めながら、おずおずと尋ねる四郎のいじらしい姿に、アーシュアンは胸が締め付けられるような愛おしさを覚えた。
「もちろんだよ。これからはいつでも、そう呼んでくれ、四郎」
アーシュアンが優しく微笑みながらそう返すと、四郎はぱっと花が咲いたような満面の笑みを浮かべた。
「……うんっ! これからずっと、そう呼ぶね。……そばにいてくれて、すごく安心した」
真っ赤になりながらもはにかむ四郎の愛らしさに、胸がじんわりと温かくなる。
(こんなに真っ直ぐ信頼してくれてるんだ……この子を何が何でも守り抜かなきゃな)
アーシュアンがそっと四郎の頭を撫でてやると、四郎は嬉しそうに目を細め、甘えるようにアーシュアンの袖をぎゅっと掴み直した。
その瞬間――! アーシュアンの頭の中で、澄んだ電子音が心地よく響き渡った。
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『ぴこん! 対象(天草四郎)との親密度が急上昇を検知』
『条件クリア:魂の共鳴および親密度の一定値突破を確認』
『基本スキル【鑑定スキル】が覚醒、ならびにサブ機能【金の流れ・価値鑑定】を付与します』
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「っ……!? なんだ、今の声……」
アーシュアンが思わず頭を押さえて目を見張ると、まるで目の前に透明なディスプレイが浮かび上がるように、視界の一角に詳細なデータが次々と映し出されていった。
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【品名:古生代・中生代のアンモナイト化石(良質)】
【品名:天草緑石(翠簾石・希少鉱物)】
【鑑定結果:当時の市場価値および交易品としてのポテンシャル……極めて高し】
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「えっ……嘘だろ。頭の中に直接データが流れ込んでくる……? でも、これって……」
アーシュアンが驚きに目を見張りながら足元を見下ろすと、ただの石ころだと思っていた岩肌や砂浜に、まるで宝物が眠っているかのような淡い光のガイドが浮かび上がっていた。
「すごい……見てくれ、四郎。この島、何万年も前の恐竜の化石や、すごく綺麗な緑色の石がそこら中に眠ってるんだ……! まるで、この島自体が大きな宝箱みたいだ」
アーシュアンが感動したように声を弾ませると、四郎も「ほんとう……?」と目を輝かせてその足元を覗き込む。
アーシュアンは足元に転がっていた神秘的な天草緑石の小石と、小さな化石の欠片をそっと拾い上げ、懐にしっかりしまい込んだ。
と、そこでアーシュアンは覚醒したステータス画面を確かめようと、無意識に腰のあたりやポケットへと手を伸ばした。
――が、そこにあるべき硬質な感触も、聞き慣れたバイブレーションの振動も、すべてがない。
「……って、あれ……?」
慌てて上着のポケットを探るが、指先が触れるのはざらついた布地だけだ。冷たい汗が背中を流れる。恐る恐るズボンのポケットも確認するが、当然のように何も入っていない。
「嘘だろ……スマホが、ない……っ!?」
現代からこの時代へと飛ばされた激流のなかで、肌身離さず持っていたはずのスマートフォンはついに水圧に耐えきれず、海底へと沈んでしまったらしい。
「おしまいだ……ローカルに保存したオフラインマップも、Webエンジニアとしての技術メモも、写真もすべて……っ! ここ、江戸時代だよね!? スマホなしでどうやってサバイバルしろっていうんだ……っ!」
「え、ええと……? すまほ、ってなんだか分からないけど……そんなに大切なものを落としちゃったの? よしよし、元気出して、アーシュアン……!」
四郎にパタパタと背中を優しくさすられながら、文明の利器を失った絶望を噛み締めるアーシュアン。しかし、いつまでも落ち込んではいられない。手元にあるのはこの過酷な世界と、頭の中に芽生えた謎の「システム」だけなのだから――。
◇
御所浦の港町にたどり着いた二人は、まず当座の資金を作るため、活気のある朝市の一角へと足を運んだ。アーシュアンは懐から、先ほど海岸で鑑定・採取した「天草緑石」と「化石の欠片」を取り出し、目利きの商人の店へ持ち込む。
「いらっしゃい。……おや、お前さんたち、見ない顔だな」
白髪交じりの店主が胡乱な目を向けるが、アーシュアンが鑑定スキルをフル活用して石の希少性や交易価値をスラスラと論理的に解説し始めると、主人は冷や汗をダラダラ流しながらタジタジに。結果、当初の想定をはるかに上回る十分な銀貨と良質な銅銭を手に入れることに成功した。
「すごいよ、アーシュアン……! まるで本物の商人みたいに、あの頑固そうなおじさんを言い負かしちゃったね!」
四郎が目をぱちくりとさせ、パァッと満面の笑みを咲かせる。
その商談の最中、店の隅の薄暗い木箱の中に、アーシュアンのシステムの視界が妙な反応を示した。
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『特異反応検知:隠し聖品(加工品・泥汚れ)を確認』
『【品名:南蛮渡来の潜伏観音像(マリア観音・銅製)】』
『評価:信仰の証としての歴史的価値・霊的ポテンシャル……測定不能』
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(これ……ただの骨董品じゃない。幕府に見つかれば一発で処刑対象になる、隠れキリシタンの聖品『マリア観音』か……!?)
背中に一瞬走る緊張感。店主から格安でその像を譲り受けた二人は、手に入れた資金と秘められた聖品を胸に、次なる目的へと歩み出すのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
スマホを失った絶望から一転、御所浦の化石や緑石を鑑定して商人を圧倒するアーシュアン。そして手に入れた謎の「マリア観音像」のゆくえは……!?
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次回は「第5話後編」となります。引き続きよろしくお願いします!




