↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/16

第4話:柱岳の篝火から産島の神風、そして御所浦の浜辺へ

こんにちは、作者です!

今回は険しい柱岳でのサバイバルと、山椒香る絶品ジビエ&宮野河内の朝市での車エビなど、天草の美食が盛りだくさんです。

後半は一転して、神聖な「産島」での緊迫した追手との対決と大スペクタクルへ!

過酷な逃避行のなかで少しずつ深まっていく二人(アーシュアンと四郎)の絆にも注目です。それでは第4話、どうぞ!

一、柱岳の峠の遭遇と、星空の薬草バーベキュー

河浦から宮野河内へと続く深い山並み。その途中に聳える『柱岳(はしらだけ)』の険しい峠道を踏破していた林宇軒(リン・ユーシュアン/あだ名:アーシュアン)と天草四郎。

夜の静寂が山を包み込む中、突如として林の視界に赤い警告光が激しく明滅した。

╔══════════════════════════════════╗

『警戒システム起動! 前方に生体反応を検知!』

『【人間2名】および【大型獣1頭(体長2.1m・変異山猪)】! 直近で交戦状態!』

╚══════════════════════════════════╝

「四郎、止まって! 前方の暗闇で何かが争っている!」

「なに……!? 人間と大猪だと……!?」

すでにシステム初期の限定スキル(暗視ビジョンなど)の効果時間は切れていた。頼りなげな月明かりと与作たちが掲げる松明の揺らめく光の中、林の目に飛び込んできたのは、倒木が乱立する峠の広場で絶体絶命の危機に瀕している猟師たちの姿だった。ベテラン狩人の与作とその若い弟子が、目にも留まらぬ巨体の荒ぶる『山猪』に追いつめられ、牙を剥き出しにした巨大な猪がまさに与作へ突進しようとしている!

「危ないっ!!」

アーシュアンと四郎は迷わず暗闇から飛び出した。四郎が素早く短刀を構えて猪の注意を引くが、怒り狂った巨獣は四郎に向かって猛然と襲いかかってくる。

「四郎、僕の合図で倒せ!」

アーシュアンはポケットからスマートフォンを取り出すと、システムの拡張機能で『超高輝度カメラLEDフラッシュ』を最大出力で固定設定し、猪の顔面に向けて至近距離で一気に照射した。

ピカァァァァンッッ!!!!

暗闇の山峠を切り裂く、太陽のごとき強烈な純白の閃光。暗さに慣れていた巨大猪は強烈な目潰しを食らい、「ブモォッ!?」と悲鳴を上げてその場にピタリと動きを止めた。

「今だ、四郎ーーっ!」

「応っ!!」

閃光で完全に硬直した隙を見逃さず、四郎は風のように跳躍。刃に凛とした気を纏わせ、眉間へ向かって一刀を深々と突き立てた。どさりと地響きを立てて崩れ落ちる巨体。見事な連携で、巨獣を一発で仕留めてみせたのだ。

「す、すげぇ……! 命拾いしただ……! 若いお侍さんに、異国の男さん、本当にありがとう!」

腰を抜かしていた与作たちは、神業のような手際に驚愕しながら何度も頭を下げた。

◇

命を救われたお礼として、与作たちは二人を山腹にある猟師の仮小屋へと案内してくれた。与作の手によって手際よく解体された猪のロース肉が竹串に刺されて用意されたが、与作は苦笑いを浮かべて首をかしげる。

「助けてもらったお礼に肉を振る舞いたいんだが、あいにく山の中じゃ塩も醤油も切れててな。ただ焼くだけじゃ、固くて臭みも残るかもしれんが……」

その言葉を聞いた瞬間、アーシュアンの視界に青いアシストウィンドウが滑り込んだ。

╔═══════════════════════════════════╗

『アシストスキル:【薬草・ハーブ・自生調味料検知】を起動』

『周囲50m以内に【天草山椒(サンショウ)の芽】【野性クレソン】【岩塩成分を含む天然鉱泉草】を検出!』

╚═══════════════════════════════════╝

「与作さん、四郎、ちょっと待ってて! すぐに最高の薬味草を採ってくるから!」

アーシュアンは自らの足と月明かりを頼りに森の脇へ駆け込み、わずか数分後には爽やかな香りを放つ山椒の若芽や塩気を含んだハーブの束を抱えて戻ってきた。手際よくハーブを石で叩いて香りを引き出し、脂の乗った肉にたっぷり擦り込んで炭火でじっくり焼き上げていく。

「……うわぁ……っ! なんて良い匂いなのじゃ……っ!」

山椒の爽やかな香気と甘い脂の香味が小屋いっぱいに広がり、四郎はお腹を『グゥゥ〜……』と大きく鳴らして瞳を輝かせた。

「さあ、焼き上がったよ!」

手渡された肉串に、四郎ははふはふと息を吹きかけてかぶりついた。

「……っ!! んんん〜〜〜ッッ!!」

香ばしい表面から溢れ出すジューシーな旨味と、山椒のピリッとした痺れ。臭みは完全に消え去り、極上のジビエ料理へと昇華していた。

「な、なんという旨さじゃ……! お肉が柔らかく、噛むたびに旨味が爆発するぞ、林!」

「わしも一生山で暮らしてきたが、こんな美味い肉は食べたことがねえ……!」

目を丸くする与作と、口のまわりに脂をいっぱつけて「んふふ〜っ」と幸せそうに頬を膨らませる四郎。アーシュアンは手ぬぐいで四郎の唇の脂を優しく拭い取ってあげた。

「四郎、口についてるよ」

「あ……ふ、ふえっ……!? あ、林……っ! 自分で拭けるわいっ!」

不意のスキンシップに四郎は顔を真っ赤にしてパタパタと手を振った。満天の星空の下、薪がはぜる音とともに温かな笑顔と胸キュンな温もりが夜の柱岳を包み込んでいった。


二、宮野河内の朝気と、漁師の粋なはからい

夜が明け、朝靄が爽やかに立ち込める宮野河内の港町へと降りて行った二人。港は早朝から活気に満ちあふれている。今日は年に一度の神聖な『産島神輿渡御』の大祭の日。港には色鮮やかな大漁旗を掲げた船が何隻も繋がり、威勢の良い掛け声が響き渡っている。

「おお、美味そうな匂いが漂っておるぞ……!」

港の市に足を踏み入れた四郎の視線が、水揚げされたばかりの大きな桶に釘付けになった。そこには、赤と白の鮮やかな模様をまとった極上の『車エビ』が、ピンピンと威勢よく跳ね回っていた。

アーシュアンがじっと羨ましそうにその車エビを見つめていると、網をまとめていた老練な漁師がふと顔を上げ、アーシュアンの隣に立つ四郎の首もとに視線を落とした。

――その首もとで揺れていたのは、ひそかに身につけられた十字の印。

漁師はハッとした顔をしたのも束の間、周囲をちらりと見回し、まるで何事もなかったかのようにニヤリと不敵で温かい笑みを浮かべる。そして桶の中から、少しヒゲや脚が欠けた車エビをひょいと掴み、竹の葉に手際よく包みながらアーシュアンたちの手へと押し付けた。

「おや、お前さんたち、腹を空かせてるのか? いやなに、今日は年に一度の大祭だ。それに……少しばかり訳ありの『傷もん』のハネものだが、美味いのには変わりねえ! 祭りだ、持っていきな!」

言葉の裏に込められた「どうかお気をつけて」という無言の気遣いと暗黙の了解。四郎はその優しい心遣いにハッと息を呑み、胸が熱くなるのを覚えた。

「……ありがとうございます。ありがたくいただきます」

その場で漁師に手早く殻をむいてもらい、透き通ったプリプリの身を口の中へ放り込む。

「……っ!! んん〜〜〜〜っっ!!」

四郎の丸い瞳がさらに大きく見開かれた。歯を押し返すような、凄まじいまでのプリッとした弾力と歯ごたえ。そして噛み締めた瞬間に口いっぱいに広がる、甘みと潮の香り!

「すごい……っ! お肉とはまったく違う、濃厚で上品な甘みが口いっぱいに広がる……! まだ身が生きているようにプリプリしておるぞ、林!」

「本当だ、すごく甘くて新鮮だね!」

天草の温かな人情に触れ、お腹も心もすっかり満たされたところで、港の中央からドーン、ドーンと重厚な太鼓の音が響き渡った。


三、波を穿つ神輿船と、産島の聖なるウンチク

港の熱気が最高潮に達する中、金色の光を放つ豪華な神輿が、大きな木造の供奉船へと慎重に積み込まれた。

「さあ、渡御船が出発するぞ! お二人さんも乗っていきなさい!」

親切な漁師たちの誘いを受け、林と四郎は神輿を載せた主船に同乗させてもらうことになった。

『ヨイショ! ヨイショ!』という力強い掛け声とともに、何隻もの船が一斉に宮野河内の港を滑り出す。青く澄み渡る海を、大漁旗を風になびかせた船団が白波を立てて進む光景は、圧巻の一言だった。

船の舳先に立ち、心地よい潮風を浴びながら、四郎は沖合に浮かぶ小島を指差した。

「見てごらん、林。あそこに見えるのが神聖な『産島(うぶしま)』だ」

「産島……すごく神秘的な島だね」

「うむ。あの島には古くから安産の神様である『市島姫命』が祀られておってな。島全体が神域とされておるのだ」

四郎はいつものように、嬉しそうに目を輝かせながらウンチクを語り始めた。

「実はな、あの島は神道の神様を祀る島でありながら、我らキリシタンにとっても特別な聖地なのだ。天草では、神道の神社や仏閣の奥深くに、ひそかに十字架やマリア様を重ね合わせて祈りを捧げてきた歴史がある。神様もデウス様も、民の平和と安寧を願う心に変わりはない……あの産島は、まさに神道とキリスト信仰が穏やかに調和した、奇跡の島なのだよ」

「へえ……神道とキリスト信仰の調和か。天草の人たちの深い包容力を感じさせる素晴らしい話だね」

「ふふっ、そうだろう? 我ら天草の民の誇りなのだ」

四郎の清らかな微笑みに、アーシュアンの胸がキュンと温かくなる。だが――その穏やかな平和は、長くは続かなかった。


四、迫る追手船、狂乱の神風と嵐の転覆

船が産島の鳥居が見える浜辺へと近づいたその時。

沖合の靄を切り裂き、黒塗りの軍船が3隻、猛スピードでこちらへ追迫してきた!

「いたぞ! 天草四郎だ! 逃がすな、取り囲めぇっ!!」

船上から聞こえる富岡代官の役人たちの怒号! 風に乗ってシュッと放たれた矢が、水面を跳ねる。

「くっ……代官の追手船か!? こんなところまで……!」

「まずい、神輿船を巻き込むわけにはいかない!」

港の喧騒と混乱を避けるため、アーシュアンと四郎は急ぎ足で波打ち際へ向かい、祭りでにぎわう人々の目を盗むように産島の影へと身を潜めた。すると、その物陰でひっそりと身を潜めていた潜伏キリシタンの島民・民蔵が、ふたりに気づいてそっと声をかけた。

「お二人さん、あっちの小舟を使いなされ! 早く!」

「助かります、感謝します!」

島に到着するやいなや、民蔵はそう言って近くに隠してあった小舟を指し示した。

「あれに見える島が御所浦島だ。あの島影伝いに行きなすれ」

ふたりが小舟に飛び乗り、力強く櫂を漕ぎ出すと、舟は静かな波間を滑るように進み出した。

背後では、民蔵がそっと胸の前で手を合わせ、ひそやかに十字を切っていた。荒波の向こうへ漕ぎ出すふたつの背中に向け、彼は静かに祈りを捧げつづける。

「どうか、無事に……デウスの御加護があらんことを」

神道の神々を祀る島のすぐ傍らで、誰知れず捧げられた祈りは、静かにふたりの旅立ちを包み込んでいった。

しかし、追手の影は容赦なく迫る。

「ハハハ! 鼠め、年貢の納め時だ! 捕らえよ!」

(くそっ……追いつかれる……! システム、何か攻撃スキルは……!?)

╔════════════════╗

『警告:敵船接近! 接触まで10秒!』

╚════════════════╝

絶体絶命のその瞬間――! にわかに空が漆黒の雲に覆われ、静かだった海が一変した!

ゴォォォォォォッッ!!!!

地鳴りのような凄まじい咆哮とともに、天草の海に突如として猛烈な局地的大風――まさに『神風』が吹き荒れた!

「うわああああっ!? なんだこの激しい風はぁぁっ!?」

「帆が破れる! 船が舵効かん! 退避せよ、退避ぃぃっ!」

猛烈な突風と巨大な三角波が代官の軍船を直撃し、追手の船は互いに衝突しながら沖合へと押し戻されていく。追撃どころではなくなった役人たちは、悲鳴を上げながら撤退を余儀なくされたのだった。

「やった……追手を撒いたぞ!」

安堵したのも束の間。自分たちの乗る小さな木舟もまた、荒れ狂う神風の巨大なうねりに飲み込まれていた!

バシャァァァァンッ!!

「きゃあぁぁぁっ! 周(あー)……林っ!!」

「四郎ーーっ!!」

高波が木舟を真横から叩きつけ、舟はあっけなく転覆! 二人は激しい渦を巻く冷たい暗黒の海へと投げ出されてしまった。


五、御所浦の白い浜辺と、目覚めのアーシュアン

(潜れ……! 四郎を……四郎を絶対に死なせはしない!!)

視界を奪う海中で、新たな救助系システムスキルが自動起動した。

╔══════════════════════════╗

『緊急レスキュープロトコル起動!』

『【水中身体能力強化】および【呼吸防護バリア】を発動!』

╚══════════════════════════╝

全身をエメラルド色のバリアが包み込み、アーシュアンは必死に手を伸ばした。濁流の海中へと沈んでいく四郎の華奢な身体をガッチリと抱き寄せると、そのまま波のうねりを突き破り、必死の思いで海面へと浮上した。

「はぁっ……はぁっ……! 四郎、しっかりしろ……!」

アーシュアンは四郎を背中に背負うと、システムが示した最寄りの陸地を目指し、荒波を必死に泳ぎ抜いていった。

◇

どれほどの時間が経っただろうか。

激しい嵐が嘘のように去り、雲の隙間からやわらかな陽光が差し込んでいた。寄せては返す波の静かな音。アーシュアンは濡れた砂浜の上で目を覚ました。全身が重く、潮風の香りが鼻をくすぐる。

(ここは……どこだ……?)

見回すと、そこは白く美しい砂浜と、恐竜の化石が眠ることで知られる神聖な島――『御所浦島(ごしょうらじま)』の海岸だった。すぐ隣には、濡れた髪を砂に散らし、意識を失ったまま静かに横たわる四郎の姿があった。

「四郎……! 四郎、目を覚ましてくれ……! 四郎っ!!」

アーシュアンは四郎の肩を揺すり、必死に声をかけた。

すると、四郎の長いまつ毛がピクリと動き、ゆっくりと可憐な瞳が開かれた。

「ん……んん……っ……あ……林……?」

「四郎……っ! 良かった……無事だったんだね……っ!」

安堵のあまり、アーシュアンは思わず四郎の身体を強く抱きしめた。四郎は驚いて目を丸くしたが、胸の中で聞こえるアーシュアンの激しい鼓動と温もりに包まれると、安心したように力を抜き、そっとアーシュアンの背中に手を回した。

「……うむ。お前が助けてくれたのだな……ありがとう、林」

激しい荒波と危機を乗り越え、御所浦島へと無事漂着した二人。二人の絆は、もう誰にも引き裂けないほど強く深く結ばれていたのだった。

第4話をお読みいただきありがとうございました!

命がけの荒波を乗り越え、二人は恐竜と化石の島「御所浦島」へ――。浜辺での静かな着地シーンもお気に入りです。

次回(第5話)からは、システムの「鑑定スキル」が覚醒! 御所浦での思わぬ出会いと、のちに物語の大きな鍵となる「あるアイテム」が登場します。

「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねで応援よろしくお願いします!

それでは次回の第5話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。