第5話 覇王眼
魔王軍が拠点している廃墟となった古城の謁見の間に魔王軍の幹部達が集まり、何か会議を開いているようだ。
「ヴォルテールめ、たかだか人間ごときに撤退するとはな……覇王眼を開眼しても所詮は人間を辞め切れていない部分があるようだな」
「全くだ、我々ならそんな無様を晒してまで生き残ろうとは思わん」
「……くっ」
幹部達はヴォルテールのことを必要以上に罵り、ヴォルテールは俯いたまま歯を食いしばり声を低く唸らせていた。
「頭を垂れてつくばい平伏しろ!」
「「「はっ!我らが魔王、ゼノン様!」」」
幹部達は一斉に土下座し、幹部達の眼前には妖艶な色白のゼノンと名乗る男が現れ、その威圧感に耐え切れず嗚咽する者もいた。
「ふ~ん、それで……覇王眼を片目ながら開眼している人間に出くわしておめおめとここに戻って来たというわけか?」
「違うのです、ゼノン様!覇王眼を持っていないのに魔人族にも匹敵する強さを持ってた人間がいることを報告すべくやむなく撤退せざるを得ない状況でして――」
「言い訳はいい。それで、その片目しか覇王眼を開眼していないものはどのような容姿をしていた?」
ゼノンは物静かに威圧をかけながらヴォルテールにその人物の容姿を尋ね、ヴォルテールは汗をかき顔を上げられず、声を振るわせていた。
「そっ、その男は……長い金色の……髪で……顔は色眼鏡をかけていたためよくは分かりません……」
「分からないか……金色の髪をしていたのだな?」
「はっ、はい……その通りです」
「かつて、私がまだ魔王になる前の話でもしよう。もう何百何千年過ぎたかは覚えていないが神々に対抗すべく立ち上がった我々の救世主でもあるサタン様は長い金髪に碧眼で女性のような顔立ちをしていてな、サタン様は元神に仕えていた天使でありながらも覇王眼を開眼しており、覇王眼の進化系の眼を手に入れる方法を解明した直後にこの世界から姿を消されてしまったのだ」
「ですが、その男とサタン様に接点があるようには思えませんが……」
ゼノンはサタンのことを幹部であるヴォルテール達に語り始め、ヴォルテールはサタンとその男は無関係であると否定をするとゼノンは見下ろしながらヴォルテールを睥睨する。
「私が何かおかしいことでも言っていると思っているのか?違うな、私は間違いもしないしお前達のように人間ごときに尻尾を巻いて無様を晒すような行動もしない。この私の左目には魔力を直接操作と気配を察知する魔眼と右目には生前サタン様から預かっている覇王眼を持っているのだよ。私の魔眼ではサタン様の気配が僅かながら感じている。それをお前は違うと言うのか?」
「そんな大それたことを私は……」
「ならばいい……ヴォルテールと他の幹部達に告ぐ。その長い金髪の男は殺さずにここへ連れてこい。それ以外の者は殺せ、よいな?」
「「「仰せのままに!ゼノン様!」」」
ゼノンの姿は暗闇の中に消え去り、幹部達は赤い絨毯の敷かれていた石畳に額を付け承諾した。
♢♢♢
「神様、覇王眼とはそもそも何なんですか?急に僕を神界に呼び出したかと思えば――」
「すまんのう、いきなりすぎて頭の中がごっちゃになりそうなことを言ってしまって。しかし、お前さんにもちゃんと聞いてほしいのじゃよ。今後、ジョセフのことを考えたらの……」
「それで、ジョセフはどうなるのですか?」
黒髪黒目の少年はお茶をズズズと音を立てながら飲んでいる神様に尋ねながら、唾を飲み込んでいた。
「覇王眼とは本来、何度も瀕死の重傷を負いリミッターの外れたものが開眼できる眼じゃよ。魔眼と一緒かと言われると違うのじゃがあの世界からしたら魔眼の一種と扱われるかもしれんのう」
「ジョセフが開眼したのもそれが影響だと?」
「恐らくな。誠よ……ジョセフはどうやら覇王眼を片目しか開眼していないみたいじゃがお前さんはどう思う?何故片目だけしか開眼していないのか気にはならないか?ジョセフという男自体が今までに前例にない片目開眼をしている以上、神であるわし自身気になっていての」
神様は誠という黒髪の少年に問い、誠はそれに頷き神様と共にお茶を飲んでいたのだ。
「その昔、わしがまだ神になる前の頃にサタンという天使がいての……そのサタンは当時の神に背いたことで今誠達が生活しているあの世界へと追放し天使の能力も取り上げ、人間として生きていたのじゃがサタンはそこで何度も瀕死の重傷を負ったのじゃ。それからサタンは、神々ですら恐れていた覇王眼を開眼し、サタンはこう考えだすようになった。神々の間でも伝説とされている覇王眼を使い再び天界に戻り神に復讐することを企てたのじゃ」
「何故神々はその覇王眼を恐れているのですか?」
誠は首を傾げながら神様に尋ねると神様は渋った表情をする。
「覇王眼は神にも悪魔にもなれる眼と言われているからじゃよ。現に、ジョセフは魔力を直接操作することで無詠唱で魔法陣なしで発動が可能で魔力も上昇しておるじゃろ?わしは先代の神にそう聞かされているだけで覇王眼がどの程度驚異的であるかは知らんのじゃよ。そこでじゃ、誠――お前さんに覇王眼の能力を調べてもらうためにもジョセフの所へと行ってくれんかの?」
「分かりました。僕もジョセフには色々と興味を持っている部分がありましたので……もしかしたら神様がいつか話してくれた光属性究極魔法”インドラ”と何か繋がりがあるかもしれませんしね」
誠は神様の依頼を承諾し、以前神様が誠に話していた光属性究極魔法”インドラ”との関連性があるであろうと推測していた。
「お前さんは中々感がいいのう……そう、サタンこそ光属性究極魔法”インドラ”を初めて体得した言われておる。しかし、そのサタンがどうやってその魔法を体得したのかが未だに謎での……神々が人間を実験台にして体得条件を探すわけにもいかんしの……お前さんを神にしてしまったわし自身どうこう言える立場ではないしの」
神様は誠の洞察力の凄さに唖然としており、誠は「あはは」と苦笑いしながら右手を後頭部に当てていた。
「それでは、僕はそろそろ戻ってもいいですか?」
「うむ、それとジョセフにはよろしくと伝えておいてくれないかの?」
「はい、伝えておきます。――”エニィウェアゲート”」
誠は無属性魔法”エニィウェアゲート”で下界へと戻り、神様は深刻な顔をしながら考え事をしていた。
(わしの手違いで死なせ尚且つ慌てて神様に転生させてしまった草凪誠とあの世界へとわしの手違いで転移させたジョセフ・ジョーンズ、成り行きとはいえジョセフが覇王眼を片目だけ開眼したのはサタンとの関連性がもしかしたらあるのかもしれんが下界に直接干渉できない以上……今は誠に任せるしかないのう)
神様はぶ厚い本を取り出しジョセフのプロフィール欄を確認しながらサタンとの関連性を調べるもサタンとの繋がりは一切なく、自身の思い違いだと考えたからなのか深入りすることはなかった。
神様は再度、湯飲みに熱いお茶を入れ飲んでいた。




