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神様の手違いで異世界転移させられた俺はハーレム生活充実になりました  作者: 桐ヶ谷スバル
第二部 黒い魔剣と日本人 第一章 オタク日本人は気ままに生きたい
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第4話 黒い剣のスキル

 ゴブリンとオレンジバルーンをある程度討伐したかと思えば夏樹は無属性魔法”感知”で新たに敵が近づいてきていることをジョセフ達に伝える。


 「気を付けろ!ゴブリンやオレンジバルーンとは違う何かが接近してくる!」


 そう言った夏樹は怪訝な表情で大声を上げていた。夏樹の表情を見たジョセフは鞘に納めていた日本刀のようなものを再度抜刀したのだ。


 「んで、どんなのが来るんだ?魔人族か?」


 「いや、魔人族ではない。生命反応はなかったからゾンビとかその類だ!」


 ジョセフは渋った表情をしながら舌打ちをした。


 「ゾンビなら脳細胞を”スパーク”で破壊することも可能だがそうでない魔物に関しては全く無力だからなぁ……」


 訝しげな表情をしながら唇を噛みしめたジョセフは極力魔力を消費せずに効率よく倒す方法を練っていたが今の実力を考えると難しかった為に長期戦は免れないと諦めきっていた。


 「俺の剣はどうやら特殊なスキルを持っているみたいだから俺に任せてくれないか?」


 和泉は後ろからジョセフに尋ねるとジョセフは「えっ?」と声を上げ茫然としていた。


 「それに、今のジョセフは準主人公的なポジションなんだし主人公の俺が活躍するのは当たり前じゃん?」


 「……んっ、分かった」


 ジョセフは和泉の提案に頷き、準主人公的ポジションになったことを訝し気に思いつつも和泉の実力を知りたがっていたのだ。


 (和泉の神様から貰ったっていうあの黒い剣がどれほどのものか気になるからな……もしも桐野和泉が俺の代わりに主人公に相応しいのなら世代交代してもいいかもしれないしな。和泉と裕二と言ったかな?あの二人が神様から力を授かったのは間違いないだろう。そして、佐藤夏樹は元々の魔力量は俺と大差なかったがマリーと同化した作用からなのか魔力は神をも上回る量と全属性適正を持ったりとチートになったりと俺では役不足だからな……何しろ俺の左目が赤く輝いたときに時間を止めたりとできるが時間を止めるのは膨大なエネルギーが必要だからなのか”パープルサンダー”を初めて使用した時のように誰かの支えが必要になったりと異世界ファンタジーの転移、転生主人公としては弱い部類に入るからなぁ……)


 リサはジョセフの心を読みとり、自分自身を卑下しているジョセフの傍らで注意を促した。


 「ジョセフ様の悪い癖ですよ。そうやって他人と比べてすぐに劣等感に浸るのは」


 「そうだな、俺の悪い癖だな。それを指摘してくれるリサがいてくれるおかげで俺はこうやって変わることができた」


 小柄で華奢な14歳の少女とは思えないほどに逞しく、リサの包容力がジョセフという人物の精神安定剤代わりになっていることを考えるとジョセフは和泉、裕二、夏樹とは違った特別な何かを持っているのかもしれない。


 夏樹の言っていた通り、生命反応を感じない魔物のスケルトンが大量に発生し和泉達の周囲を囲んでいた。しかし、和泉は右手に握っている黒い剣の性能を頼りにしていたからなのか冷や汗一つ掻いていなかった。


 「俺の実力を見せてやるぜ。ジョセフ」


 「ああ、見せてくれ」


 和泉は笑みを浮かべ勢いよく地面を蹴り上げスケルトンの大群に斬りかかる。和泉の振りかぶった黒い剣がスケルトンの頭部に軌道が乗り、スケルトンはスライスチーズのように滑らかに両断されていた。


 黒い剣が今度は赤く輝き、和泉は三体いたスケルトンに三連撃を加えた。某VRMMOを題材にしたラノベ主人公のように機敏な動きで対処していたのだ。


 「これが俺の力だ!”トリプルブレイク”!」


 和泉はラノベ主人公の如く技名を叫びながらスケルトンの大群を切り裂きながら機敏な動きで戦闘を繰り広げていた。


 「あの剣の性能だけとは思えないな……あの機敏な反応速度は誰にでも真似できることではない――」


 「和泉って人はそのくらい凄い力を神様に貰ったってことですか?」


 「そうだ、リサはやっぱり物分かりがいいね。俺の婚約者なだけあって流石だよ」


 ジョセフは微笑しながらリサの頭を撫で、リサは頬を赤らめていた。


 「ねえねえ、熱いところ悪いんだけどあの和泉の剣撃やばすぎない?」


 女子高生のような口調でジョセフとリサの間に入ったジンジャーが和泉の剣捌きを見て驚愕していたのだ。


 「流石の俺でもあそこまでの剣捌きはできないから本当にあいつの賜物だよ。少なくとも神様に力を授かっただけであそこまでできることではないしね」


 「いやぁ、ジョセフの”スパーク”の扱いと魔物の血吸って魔力回復する発想もたいがいだとは思うよ……」


 ジョセフは和泉のことを褒め称えているとジンジャーは苦笑しながらジョセフの戦略も相当なものだと苦言を呈していた。


 「和泉にばっかり任せっきりにはできないね……僕も行くよ!」


 「大丈夫なのか?裕二――」


 「僕だって一応神様に力を授かっているんだよ。それなりにはできるよ」


 ジョセフは裕二に尋ね、裕二は和泉の援護をする旨を伝えた。


 「それなら裕二の実力も見させてもらおうかな」


 「頼むよ」


 裕二は腰に差していた青白い剣を鞘から抜き出し地面を蹴り上げ和泉を援護するべく駆け付けた。


 「チッ……いくら俺のこの剣が凄いスキルを持っていてもこの数では少し厳しいな……」


 舌打ちをしながら唇を噛みしめ渋った表情をしていた和泉は序盤から分配考えずに全力投球したピッチャーのようにバテバテになっており、足元が竦みかけていた。それでも尚、和泉は笑顔を絶やさないようにと前向きに考えていた。


 「和泉ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 和泉は背後から自分の名前を叫んでる裕二に気付き振り向いていた。裕二は鬼気迫る表情で駆け付けており、和泉の眼前に現れたのだ。


 裕二の剣を見た和泉は微笑を浮かべ、和泉と裕二のコンビをジョセフ達に見せつけるチャンスだと思ったのかバテバテになっていた和泉の動きに機敏さが戻っていた。


 和泉は裕二とスケルトンの大群を一緒に倒すことを苦に思っておらず、三連撃、四連撃と一度に繰り出す攻撃回数も増えていた。和泉は異世界に来てから知覚などが機敏になり反応速度は戦えば戦う程上昇する一方だ。


 裕二も和泉の戦闘を見て今まで披露したことのなかった技を繰り出し、遠くから見ていたジョセフ達を唖然とさせていたのだ。


 「あの二人、剣から魔法に似たものを発動させたりと動きが速すぎるんだけど!」


 「神様から貰った力とあの二人の反応速度がそれくらい凄いってことだろ。ジンジャー」


 「ジョセフ、ジンジャー、あれは剣の性能じゃなくて多分自身のスキルじゃねえの?」


 「「スキル?」」


 夏樹が和泉と裕二が発動しているのは剣の性能ではなく二人が持っているスキルを剣に変換しているだけだと説明をするとジョセフとジンジャーは異口同音で声を発した。


 「そう、スキルだよ。異世界召喚とかその類のファンタジー物では日本人が神様から特別な力を授かり魔法だったり特殊なスキルを発動して無双したりとチート紛いの奴らが活躍する物語が俺とジョセフの世界にはあるんだよ」


 「夏樹が言うとどうも信憑性に欠ける部分があるが認めざるを得ないな……」


 テレサは溜め息を吐きつつも夏樹の説明を信じることにした。


 「正直夏樹とジョセフの話は色々と理解に苦しむことがあるがテレサの意見には同感ね」


 ブーディカはテレサと同じく夏樹の言っていることを理解出来なかったが和泉と裕二の戦闘を見る限りあながち間違っていないのだと思ったのだ。


 「『信憑性に欠ける』ってどういうことだよ!ジョセフとリサが修行の旅に出ている間もずっとそんなこと言って俺をイジメやがって!」


 「私は別にイジメていない!お前がマリーのように調子に乗っているから喝を入れただけだ!」


 「お前は俺のオカンか!誰がそんなことしてくれと頼んだよ!つかお前は婚約者のジョセフと碌にイチャイチャできない癖に偉ぶるなよ!」


 夏樹はジョセフとリサが修行の旅に出ている間に数々のクエストをこなしており、夏樹はマリーと同化したことで自身の力を過信していたのか暴走しておりテレサはそんな夏樹に注意を促すも夏樹はそれを無視していたのが原因のようだ。


 しかし、夏樹はそんな自覚もなくただテレサが一方的に理不尽に起こっているという認識しかなかったのだ。


 テレサと夏樹が口論している間に和泉と裕二はスケルトンの大群を息ぴったりに斬撃を加え殲滅していたのだ。


 スケルトンの大群を事の十分弱で全て討伐完了した和泉と裕二の凄さに驚愕したジョセフ達は唖然としながら二人が戻ってくるのを待っていた。


 「なぁ裕二、このダンジョンはスケルトンの大群がこうやって出現するときがあるのか?」


 戻ってきた裕二にジョセフは尋ねる。


 「僕がこの世界で訓練感覚でクエストをこなしてた時にはスケルトンなんてこのダンジョンには出現しなかったよ……スケルトンなんて脱初心者クラスの魔物である以上この初心者用ダンジョンに出現するなんてことは本来ありえないことなんだよ」


 裕二は顔を俯かせながらジョセフに説明をし、ジョセフは魔王軍の幹部がスケルトンの大群を何らかの方法で大量に排出しているのであろうと推測をしていた。


 そうでなければこうも都合よくスケルトンの大群がジョセフ達の眼前に現れたことに辻褄が合わない。


 「裕二、これはあくまで俺の予想だがもしかしたらこの辺り一辺はもう既に魔王軍が占領しているのではないのか?そうでなければスケルトンの大群といいこの淀んだ空気はどう説明する?」


 訝しげな表情をしたジョセフは火の着いた煙草を口に咥えながら裕二に尋ねる。それに上手く答えられなかった裕二の代わりに和泉が答えたのだ。


 「多分、もう国全体が魔王軍に支配されている可能性も考えられるんじゃないのか?流石に公にできないだろうからそんなの俺達が知らないのも当然だろうけどさ――」


 「流石は妹の小説を読んでいるだけあるね。そこだよ、俺が言いたいのは……」


 「和泉と一緒にコンビを組んでよかったよ……」


 裕二は和泉を見て笑みを浮かべながら安堵しており、和泉は「それ程でも……」と照れ隠しをしていた。


 「それならそれで安心している場合ではないのではないのか?いくら和泉と裕二が強くても油断すればこっちだって全滅なんて可能性もないわけではないのだから!」


 「相変わらずお前ってバカ真面目で堅っ苦しいよなぁ……そんなんだからお前はジョセフとの夜の営みの回数も少ないんじゃねえのか?」


 テレサの堅実ぶりに唖然とした夏樹は皮肉交じりにテレサを煽り始めた。


 「何だと!それとこれとは関係ない!第一何で私とジョセフの関係をお前にとやかく言われなければいけないんだ!」


 「それくらいお前はジョセフにとって近寄りがたいって意味だよ」


 感情剥き出しになったテレサは鬼気迫る表情で夏樹の胸ぐらを掴み、夏樹はテレサを睥睨しながらテレサの手を振り払った。


 「夏樹、それぐらいにしておけ。それに俺はテレサのこと別に近寄りがたいとは思ってないよ。まっ、テレサのそういう生真面目な部分は結構好きだけどね。だからここで口論する理由もないだろ?」


 「「そうだな……」」


 ジョセフは二人の口論を見苦しいと思ったのかテレサを宥め、テレサと夏樹は顔を俯かせながら一緒に頷いたのだ。


 リサは「流石はジョセフ様です」とジョセフのことを褒め称え、ジンジャー、ケイト、ブーディカ、アイリスもそれに同意見のようで「うんうん」と笑みを浮かべながら頷いていた。和泉と裕二は開いた口が塞がらない状態で唖然としながら佇んでいた。


 「「あのぉ~、そろそろ行きましょうよ……」」


 和泉と裕二は肩を竦めながら小声で呟くように言った。


 ジョセフ達の雑談は一向に終わりそうになかった為、裕二は大きく咳払いをした。


 「うぅん!それよりも早くこのダンジョンを抜けようよ。魔王軍だっていつまでも廃墟に立てこもっているわけじゃないんだから!」


 「そうだぜ、いくらジョセフや夏樹が強くても間に合わなきゃ意味がないんだからよ」


 裕二と和泉は早く魔王軍を討伐して報酬を獲得したいからなのかかなりの焦燥ぶりをジョセフ達に見せていた。


 ジョセフとリサは二人の気持ちを察していたのか言い返すこともなく二人の提案に頷き先を進むことにしたのだ。夏樹達に関しては「何をそんなに焦っているんだ?」と唖然としていた。


 ダンジョンを進めば進むほど空は暗くなり、夕方になっているのが分かった。


 それからというものスケルトンの大群が出現することは無くなりジョセフは首を傾げていた。


 (う~ん、魔王軍の幹部とかがこの辺りをとっくに占拠していると思っていたが俺の思い違いだったのか?そうだとしてもさっきから魔物が一体も現れないのは妙に変だなぁ……)


 「ジョセフ様、私もそう思います……ダンジョンなのに魔物がさっきから一切現れないのはどう考えてもおかしいと思います」


 心の中でジョセフは違和感を感じており、それを読み取ったリサはジョセフの考えに同意見であった。


 夏樹に関しては「思い違いなんじゃねえの?」と呑気な態度でジョセフの肩をポンポンと叩きながら笑い飛ばしていた。


 「いや、ジョセフの思い違いじゃないと思うよ」


 裕二はジョセフと夏樹の後ろから間に入るように言う。


 「思い違いじゃないなら何で気配すら感じねえんだよ?確かにダンジョンでこんなに静かってのは怪しいけどさぁ……それでも、もう少しで無事にダンジョンを抜けられるのならそれでいいじゃねえかよ」


 夏樹は無属性魔法”感知”と”スヌーピング”を発動しており、何も以上はないと判断したのか自身の魔法の実力を過信していたのだ。実質、夏樹はマリーという少女と同化したことによって異世界に召喚させられた時以上の力を有しているために自分が一番であると思いたいのだ。


 「大体、魔法が必ずしも万能ってわけでもないんじゃないのか?」


 苛んでいた和泉は口をはさむ。


 「お前さぁ、ここは地球とは全く異なる世界なんだぜ?」


 「そうだけど、ジョセフの妹の小説を読む限り魔法でも感知できない存在がいてもおかしくはないと思うぜ?ジョセフが強くなったのだって実際無茶苦茶すぎる描写が多いしそうゆうパターンも想定した方がいいと思うしよ――」


 「和泉、これ以上言い争う必要もないよ。和泉と夏樹が口論している間に”感知”と”スヌーピング”を発動してみたら敵が一体こっちにゆっくりと接近しているみたいだから……」


 裕二は険しい表情でジョセフの予感が的中したことを和泉と夏樹に話す。和泉は夏樹に「ほれみろ!」と言わんばかりに責め立てており、夏樹は舌打ちしながら肩を竦めていた。


 ふと、和泉達の眼前に黒い影が少しずつ現れ始め、薄気味悪い笑い声が聴こえ始めたのだ。


 「ふっふっふ。スケルトンの大群を相手に無事にここまで辿り着けるとは思いもしなかったよ」


 黒いローブを着ていた耳の尖ったエルフ風の男は和泉達にゆったりとした表情で待ち構えていたかのような発言をした。


 「誰だテメエは?大道芸人か?」


 「礼儀知らずなお前に特別に教えてあげよう。我こそは魔王軍幹部の一人の魔導士ヴォルテールというものだ!」


 黒いローブはバッ!となびき手を大きく広げ自己紹介をし終えた後謎のポーズを取っていた。


 ジョセフは左目の左目は深紅に輝き、左目の能力で時を止めヴォルテールと名乗る魔王軍幹部の男を一方的に殴った。殴り終えた後、元いた場所へと戻り止まった時を動かす。


 「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ヴォルテールは時を止めたジョセフにタコ殴りにされたことに気付かず痛みのあまり絶叫をしながら蹲り始めた。


 「ジョセフ様、いくら何でもあれは少し卑怯だと思いますよ?」


 リサはジョセフに苦言を呈しつつも微笑していた。


 「いや、魔王軍の壊滅が目的である以上取り敢えず弱らせた方がいいと思ってさ。洗脳できる可能性もあるかもしれないし」


 「おいおい、リサにジョセフ!『少し卑怯』とか『弱らせた方が洗脳できるかもしれない』って問題じゃないだろ!つかジョセフ、お前絶対あのボールからモンスターを召喚する有名なアニメの影響強いだろ!そうだろ?」


 「どうだろ?一応子供の頃そんなアニメとゲームをやっていた記憶はあるがね」


 夏樹のツッコミに対してジョセフは煙草を喫煙しながら小学校の頃の記憶を思い出しながら質問に答えていた。


 「そういえば子供の頃そんなアニメあったよなぁ……今でもシリーズ化して放送されてるけど」


 「うん、そうだね……」


 和泉と裕二はそのアニメが幼稚園児から小学生に愛されている有名なアニメであることを思い出しながらジョセフの行動に茫然としながら棒読み状態で会話をしていた。


 「貴様か!俺をいきなり殴ったのは?私だけ自己紹介して貴様らは自己紹介はないのは不公平という者だろ!」


 ヴォルテールはジョセフの方を指さし癇癪を起していた。ジョセフは茫然と煙草を喫煙しており、一本目を吸い終えた後二本目を咥え左人差し指に火属性魔法”ファイヤー”を最小出力で発動し煙草に火を着けたのだ。


 ジョセフは煙草の煙を吸い込みふぅっと煙を放出し、煙草の匂いが周囲に漂い傍らにいたリサ、ケイト、ジンジャー、アイリスは咽込んでいた。


 「もう、ジョセフ様!煙草はメッです!」


 「血管を締めるためだよ。それにこういう時こそ冷静でいなきゃいけないしな……」


 そのようにジョセフはリサに注意されても意に介していない様子で煙草を吸うのを辞めようとはしなかった。


 「つかジョセフ、お前未成年なんだから吸うの辞めろよ……」


 「ラノベ主人公としてあるまじき行動だぜ?」


 「僕もそう思う……」


 夏樹、和泉、裕二は肩を竦めながら溜め息を吐きながら未成年が煙草を吸うことをよく思っていない様子で注意を促していた。


 ジョセフは二本目の煙草を吸い終え、そのままポイっと地面に捨てるのかと思うと上へと投げ”ファイヤー”で焼却し消し炭となり空中に飛び散っていた。


 「さてと、死ぬ準備はできたようだな――」


 「いや、戦うのは俺じゃねえぞ。戦うのはこいつだ」


 ヴォルテールはジョセフを指さし戦闘を仕掛けようとするとジョセフは和泉を前に出し戦うのは自分ではないことを主張した。


 「俺かよ!」


 「そうだよ、だって神様に力授かってるなら明らかに和泉強いだろ?」


 「神様に力貰ってるとはいえどの程度強いかまだ分からねえんだぜ?」


 和泉は必死に戦うことを拒否しようとするもジョセフ自身戦う意欲を見せない以上仕方なく引き受けることにしたようだ。和泉にとってあまりにも予想外な展開でパニックに陥りそうでもあったがここで実力を見せつけることで異世界で俺tueee!ができるのではと脳内を過らせていた。


 「んじゃぁ、俺が行くか……」


 溜め息を吐きながら剣を鞘から抜いた和泉は気だるそうに剣を構え、ヴォルテールは見下したような態度で親切に待っていたのだ。


 「言い残すことはないのか?」


 「どうせ全員殺すつもりなんだろ?だったら言い損じゃん」


 「そうだな、だったら俺の力に屈して死ね!」


 ヴォルテールは魔法陣を掌から放ち、魔法陣から複数の氷の矢が飛び出し和泉を急速で狙っていた。


 和泉は氷の矢を剣で素早く薙ぎ払い間合いを詰めようとするもヴォルテールの魔法攻撃が一向に終わる気配がないため足止め状態だ。


 魔王軍の幹部なだけあって神様に力を授かった転移者をここまで足止めできるのは

流石ではあるのだが和泉は息切れ一つせずに少しづつ足を一歩前へと進めていたのだ。


 「和泉、僕も手伝おうか?」


 裕二は心配になったのか和泉の援護をしようとするも「もしもの時は……」と丁寧に和泉は断った。


 「あいつ、大丈夫なのか?」


 「恐らくこの勝負、すぐに決着はつくだろう……」


 「あんなに魔法を発動しまくっているのにか?」


 夏樹は勝敗が決まると断言したジョセフに首を傾げながら尋ねる。


 「ヴォルテールの使ってる魔法は水属性初級魔法”アイススピア”だろ?初級魔法は魔力消費量が少ないものの貫通能力に関しては弓矢よりも上だから上級ランクの冒険者もよく使用している魔法だ」


 「そんなもんかね……?」


 ジョセフの説明に夏樹は訝し気な表情で溜め息を吐きながらジト目になり、裕二が二人の間に入り込む。


 「夏樹、ジョセフの説明は合っているよ。”アイススピア”は魔力消費量こそ少ないが戦い方によっては中級魔法と間違えてしまうほどに強力な魔法だから水属性魔法に適性のある人達からはかなり重宝されているんだ。和泉の戦い方はまだまだ基礎というかデタラメではあるが鍛えようでは一気に最上級ランクに上り詰めることも可能だと思う」


 冒険者としてキャリアを積んでいた裕二の和泉への評価はかなり高評価で期待値も高めだった。


 「ばかな……俺の魔法攻撃をいとも簡単にはねのけるなんて……初級魔法とは言え中級魔法と間違われる”アイススピア”が通用しない人間なんて今までにいなかったっていうのに……」


 「たまたま俺がそれに適応できたってだけだろ。”アイススピア”って言ったかな?ゲームでプレイした時の銃弾よりも遅いぜ」


 魔力を使い切り息切れをしていたヴォルテールは自分の魔法攻撃が人間に通用しなかったことで自信を喪失してしまい、和泉はラノベ主人公のように誇らしげに剣を軽く肩の上に乗せるように上げていた。


 「人間ごときにこの俺が……この血からは使うまいと思っていたがこれを使う時が来るとはな……俺の覇王眼はおうがんの力で貴様を確実に始末してやる!」


 ヴォルテールの両眼は深紅に輝き、和泉はヴォルテールの気迫に気圧され立ち竦んでいた。


 リサはヴォルテールの《《覇王眼》》と名乗る目を見て何かを思い出していたのだ。


 (同じだ、ジョセフ様の赤い左目に……しかし、覇王眼とは一体?)


 リサはジョセフの深紅に輝く左目に似ていると思っていたのだ。


 「おいおい、あいつ俺達世代ならテレビで見たであろうバトル漫画のチート眼に似てないか?」


 夏樹は日本にいた頃に読んでいた某週刊少年誌に連載されている漫画に覇王眼に似た眼を持つキャラクターの存在を思い出していた。


 「それよりも、和泉の援護をしなくていいのか?裕二」


 「取り敢えず様子を見てからじゃないとどうとも言えないかな……」


 裕二は恐らくヴォルテールの持つ覇王眼の能力の凄さに気付いたのだろう。和泉やジョセフ、夏樹達日本から来た転生、転移者の中で一番年上であるからなのか人生経験も長く、判断力もそれ故に長けていたのだ。


 「その覇王眼から発せられるオーラ、魔眼なのか?」


 「人間でありながら俺の魔法攻撃に耐え抜いた貴様に特別に覇王眼の能力を教えてやろう。覇王眼とは瀕死の重傷を何度も負い、人間としてのリミッターを解除したことにより開眼できるものだ。俺以外に覇王眼を開眼したものはいないと思っていたがどうやら貴様のお仲間も片目だけ覇王眼を開眼しているようだな」


 ヴォルテールはジョセフの方を向きもう一人開眼者がいることを和泉に教え、ジョセフの深紅に輝く左目が覇王眼であることが判明した。


 「覇王眼の能力は魔力を直接操作できるため詠唱、魔法陣を発動する必要性が無くなるがその代償として能力を使用しすぎると視力もかなり低下する諸刃の剣だ。そして魔王はこう言っていた。覇王眼を開眼したものは神にも悪魔にもなれると。だから俺は、悪魔になることを決意し人間そのものを辞めたのだよ」


 ヴォルテールは覇王眼の説明を終えると”アイススピア”を魔法陣なしで発動し、和泉は反応が遅れ左肩にかすり傷を作ってしまった。


 和泉は異世界で初めて痛みを感じた。


 泣き喚くほどの痛みではないが左肩の傷口に熱が帯び焼けるような感覚さえ生じておりこれはゲームの世界委ではないことを再認識したのだ。


 覇王眼を発動したヴォルテールの掌から放たれた”アイススピア”の速度と威力は倍以上に上昇しており詠唱も魔法陣も必要としないため和泉は苦戦を強いられていた。


 (クソッ!スピードも威力もさっきとは桁違いだ……しかし、神様から貰ったこの力と剣なら覇王眼なんかに負けるとは思えないが俺だけでは防御することで精一杯だ……)


 神様に力と黒い剣を授かった和泉は自信の機敏な反応速度と知覚でなんとか補ってはいるものの通常の人間では対処することもできずに即死していたことは間違いないだろう。


 しかしまだ、希望は残っていた。


 覇王眼を片目だけでも開眼しているジョセフが和泉の味方である以上敗北することはないと確信が持てていたからだ。


 「どうした?さっきまでの威勢は何処に行った?覇王眼の能力を発動してから未だ俺の攻撃に押されているが」


 ヴォルテールは和泉を見下すような言い草で煽り、和泉は舌打ちしながらもなんとか魔法攻撃を防ぐことで精一杯のようであらゆる部位に掠り傷ができていた。


 和泉の脳内にヴォルテールの攻撃を凌ぐ方法が閃き、それをすぐさま実行しようと大声で裕二に指示を出した。


 「裕二、援護してくれ!」


 「分かった、すぐに行くからそのまま耐えててくれるかい?」


 「頼む……」


 「”ハイスピード”!”電光石火”!」


 裕二はコクリと頷き剣を構えながら地面を勢いよく蹴り上げ無属性魔法”ハイスピード”と光属性魔法”電光石火”を発動。


 ”ハイスピード”と”電光石火”を発動することで裕二の動きは更に機敏になり、一瞬にして音速を超えていた。


 ヴォルテールは裕二の速さに一瞬手が止まり、和泉は隙を見たのか剣を大きく振りかぶり黒い剣は緑色に輝き、和泉は剣を勢いよく振り下ろした。


 「”ウィンドスラッシュ”!」


 和泉の剣からは複数のソニックウェーブが飛び出し、その軌道はヴォルテールに乗っていた。


 「そんな複数の攻撃など覇王眼を使わずとも見えるわ!――”アクアウォール”!」


 水属性魔法”アクアウォール”で水の壁を張り巡らせ和泉の放った”ウィンドスラッシュ”は抵抗により威力が減衰し水の壁を貫くことができなかった。


 「チッ……俺の攻撃ではダメか――」


 「”サンダーウェーブ”!」


 和泉が舌打ちをしながら唇を噛みしめていると裕二が和泉の横を通り越し青い剣は金色に輝き電流を迸らせていた。


 裕二の剣から放出された”サンダーウェーブ”により”アクアウォール”を切り裂きヴォルテールとの間合いを取り、裕二は勢いよく剣を前に突きだしヴォルテールの胸部へと軌道が乗っていた。


 「やった!」


 ヴォルテールの胸部を貫き、裕二は安堵とした様子で口元を緩めるとヴォルテールの肉体はボン!と煙が生じた。


 「――消えた?そんな馬鹿な!確かに手ごたえはあったのに……」


 「裕二!無事か?」


 和泉は声を張り上げながらすぐさま裕二の所へと駆け付け、裕二の眼前からヴォルテールは消失し、気配すらなくなっていた。


 「魔王軍の幹部……中々手強いな……数々の魔物を討伐してきたけどここまで変則的な敵と戦うとなると無事にクエストを完了できるか分からないな……」


 裕二は顔を俯かせながら肩を竦め、溜め息を吐いていた。


 「しかし、覇王眼ってのがやっぱり気になるな?裕二、覇王眼について何か知っていることはないか?あいつがジョセフも覇王眼を左目に開眼しているとか言っていたけど……」


 「すまないが覇王眼という名前すら今日初めて知ったんだ……」


 「俺の左目は魔眼だと思っていたがどうやら相当やばい代物だってのは分かった」


 裕二と覇王眼の持ち主でもあるジョセフでさえ、覇王眼の存在を今日初めて知ったようだ。

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