第47話 修行の旅の終わり
ジョセフがリサと共に修行の旅に出て一年が過ぎた時だ。ジョセフはふと、旅に出る前のことを思い出しながらリサが傍らで微笑しながら小さな胸をジョセフの腕に押し付けていた。
「修行の旅に出て一年が経ちましたけど色々ありましたね」
「そうだな、こうやってケイトやブーディカ、ジャンヌ、ヴィクトリアと出会うこともできたし結果は強くなるというよりは婚約者を増やすための旅になった感は強いんだけどね……」
ジョセフは帽子の上から頭を掻きながら訝しげに肩を竦め俯いているとリサが「うふふっ……」と声を出しながら笑った。
「でも、ジョセフさんも含めここにいる私達だって強くなったんですよ?それにジョセフ様に妾が10~20人になろうとも正妻である私の地位が変わるわけではありませんしその辺りは気にすることではないですよ」
「妾って……それよりもジンジャーとアイリス、テレサは無事にしてるのかな?それだけはどうしても気になるんだが――」
「きっと皆さんジョセフ様の帰りを待っている頃ではないでしょうか?私はそう信じています」
ジョセフとリサが楽しく会話をしていると後ろにいたケイトはジト目でジョセフとリサの方を見詰めていた。
「ジョセフさん、リサさんとばかりじゃなくて私の相手もしてほしいです!私だってジョセフさんの婚約者なんですから……」
ケイトは顔を俯かせながら上目遣いでジョセフに懇願すると「すまないな」とジョセフはケイトの頭をポンポンと撫でていた。
「もう、そうじゃなくてぇ……」
ケイトは顔を赤くしながら首を横に振り、ジョセフは「俺何かやっちゃいましたか?」とラノベ主人公特養の鈍感さで首を傾げる。
ジョセフの方へと詰め寄ったケイトは両手を腰に当てながら上目遣いで睨みながら「ちゃんと婚約者として扱ってください!」と本音を吐露した。
「あっ、そういうこと――」
「ジョセフ様は結構恋愛面は鈍感ですから仕方ないですよ。ケイトさん」
ジョセフがポンっと手を叩きケイトの気持ちを察しリサはこの状況を楽しんでいたのかケイトを宥めていた。
「本当にこの子達は……」
ブーディカはジョセフ、リサ、ケイトを見て呆れつつも微笑していた。
その瞬間だった――ジョセフ達の体は軽くなり浮遊したかと思えば一瞬にしてからだがどこかへ転移されるのが分かった。
さっきまで荒野を歩いていたと思ったらジョセフとリサにとって見覚えのある地形に足を踏み入れていたのだ。
「「「ここはっ……?」」」
ケイト、ブーディカ、ジャンヌ、ヴィクトリアは驚愕のあまり開いた口が塞がらない状態だった。
「ワトソン王国の王都の近くです」
リサはケイト達に説明をすると四人は「え~っ!」と大声を上げる。
「本当に一年というのは短いものだな……」
「私は楽しかったですよ」
ジョセフ達はワトソン王国王都ベイカーハイドに通じる大きな門と壁、そして検問所の方へと向かった。
「身分証を――」
ジョセフにとっていつものテンプレ展開であったため事前に用意していた冒険者カードを門番に提示すると門番は言葉を切り、笑顔を浮かべた。
「これは失礼しました!我がワトソン王国の救世主ジョセフ様!そしてリサ王女まで……」
「というわけで通してくれるか?」
ジョセフは門番に尋ねると「救世主様とリサ王女であれば……」とすんなり通してくれたのだ。
「それにしてもリサさんって本当に王女だったんですね……」
ケイトはリサには勝てないなと皮肉交じりに言う。
「あんまり王族の権威とかを振り回すのが嫌でしたので……」
「まあ、それよりも早くジンジャー達の所に行こうぜ」
「そっ、そうですね」
リサは苦笑しながらジョセフ達と共にジンジャー達に再会しようと門を潜り抜け一年ぶりにベイカーハイドの石畳に足を踏み入れ、ジョセフは懐かしい景色と空気を楽しんでいた。
「ワトソン王国ってのは中々いい国だな」
ブーディカはワトソン王国の雰囲気を気に入ったようで思わず本音を声に出す。
「まあ、見ず知らずの俺をリサが助けちゃうくらいだからね」
「それはジョセフ様だって同じですよ」
一年ぶりの王都でジョセフ達は興奮しており会話を楽しくしていた。
ジョセフ達は冒険者ギルドへと向かい、冒険者ギルドベイカーハイド支部は一年前と何も変わっておらず、中は賑わっているのが瞬時に分かった。ジョセフ達はギルド内に入ると静寂になりジョセフ達のことを凝視していた。
「すまないが、ちょっといいかな?」
ジョセフは受付嬢に尋ねると上の空を向いていた受付嬢はすぐさまジョセフに気付き畏まっていた。
「じょっ、ジョセフさんじゃないですか……どのようなご用件で?」
受付嬢は焦燥しており、ジョセフはブーディカの方を指さし「冒険者になる手続きをしてほしいのだが」と伝えると受付嬢はニコリと笑いながら手続きの準備を開始していた。
ブーディカは一通り受付嬢から説明を受けながら必要な書類で手続きを済ませ最後に冒険者カードに細い針で指を刺し血を冒険者カードに擦り付け手続きは完了した。
「はい、ブーディカさんは今日から冒険者として活動できるようになりました。最初はランクの低いクエストからになりますので自分に合ったクエストを選んでくださいね」
受付嬢は笑顔でブーディカにそう言い、ジョセフ達はギルドを出て宮廷へと向かった。宮廷前には衛兵が見張りをしており、リサが眼前に現れた瞬間衛兵は敬礼をして「姫様、お帰りなさい!」と張った声でリサをお出迎えしていた。
王様は何処にいるのか宮廷に入る前に確認したらどうやら謁見の間にいるようだ。
謁見の間に入るとそこには王様と誠がいて、佐藤夏樹、ジンジャー、テレサ、アイリスもいた。
「お父様、ただいま戻ってきました」
「おお、リサか……今帰って来たのか」
リサと王様は一年ぶりに再会し、ジョセフは王様に軽くお辞儀をしていた。
「王様、相変わらずお元気のようですね」
「ジョセフよ、ここでは他人行儀で接しなくても大丈夫だ。君はリサの婚約者であるのだから」
他人行儀で接しているジョセフに王様は寛大な態度を振る舞っていた。
「よう、ジョセフ!」
「佐藤夏樹か、男の面になったな」
ジョセフは佐藤夏樹を見てほっこりと笑う。
「そりゃあ、テレサにしごかれてたら嫌でもそうなるよ――」
「「ジョセフぅ~~~~!」」
アイリスとジンジャーがジョセフの方へと急接近し、ジョセフの胸元まで飛び込みジョセフは床へと倒れ込んだ。
「会いたかったのだぞ、ジョセフ……」
「一年も会えなかったから結構寂しかったんだよ」
アイリスとジンジャーの瞳からは涙が零れており、ジョセフは二人の涙を拭っていた。
「それよりも、早く離れてくれないか?起き上がれないから……」
ジョセフはそう言うと二人は周囲を見ながら顔を赤く染め我に返り、咳ばらいをしていた。
「んで、誠は何でまたここにいるんだ?」
ジョセフは誠に尋ねると誠はニコッと笑いながらジョセフを見詰めていた。
「君がそろそろ帰ってくるだろうと神様にも言われたからこの謁見の間を借りてロバートさんに報告していたんだ」
「それだけではなさそうな気がするんだが?」
「誠さん、ジョセフさんにそろそろ言わなくていいんですか?」
誠の傍らにいたレイラは誠の白いロングコートの裾を引っ張りながらそう言うと誠はコホンと軽く咳ばらいをし、「君に話したいことがある」と真面目な表情へと変わった。
「実は、魔王ベルをも凌駕する真の魔王を名乗る者がいるみたいでそれを討伐してほしいとのことなんだけど手伝ってはくれないかな?」
「いや、それなら誠単体で解決できるんじゃないのか?」
ジョセフは首を傾げながら誠にそう言うも誠は目を瞑り首を横に振る。
「すまないけど半分神になった僕でもその辺りはどうしようもないことなんだ……神の力を使って直接この世界に関与するのは禁止みたいで神に匹敵する強さを身に付けた君にしか頼めないんだ……」
誠はジョセフに魔王討伐を手伝うよう頼むもジョセフは渋った表情でくしを傾げ訝しげな様子を見せていた。せっかく修行の旅から帰って来たというのにいきなり魔王の討伐を手伝ってくれと言われれば誰でも同じ表情をするものだ。
「そうか、なら手伝うしかねえな……リサを守るために修行をしてきたんだ。修行の成果を見せなきゃいけないしな」
ジョセフは真の魔王を名乗るものと戦えることで闘争心がさらに燃え、これまでに培ってきた実力を見せつけたいとも思い、リサ達を連れ魔王を討伐するための旅に向かうことを決心した。
「ていうわけでさ、飯にしようぜ」
ジョセフがそう言うと周囲はズコーっと昔のギャグマンガのように転げ、唖然としていた。
第二章はこの辺りで一旦終了になり第二部へと突破するのですが主人公でもあるジョセフ・ジョーンズは準主役的なポジションに変更していきたいと思っております。
理由などは執筆しているうちに分かるような内容にしていけたらと思いますので今後ともご期待ください。




