表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の手違いで異世界転移させられた俺はハーレム生活充実になりました  作者: 桐ヶ谷スバル
第一部 愛を取り戻した転移者 第二章 修行の旅
44/65

第41話 闇に葬られた女王

 クラウディウス帝国の領地っていうのは核戦争で格の炎に包まれ文明が崩壊しているわけでもないのにこの血と暴力支配するといった感じがまさに世紀末感が強く、誰もが正常では生きてはいられない世界であった。


 一人の女性は長い赤毛をなびかせながらクラウディウス帝国の紋章の入った鎧を纏った男に剣を突き出し尋ねていた。


 「お前はクラウディウス帝国の人間だな?あたしの娘二人は何処にいる?」


 「しっ、知らねえ……おめえの娘が何処にいるかなんて知らねえよ!」


 「そうっ、ならここで死んでもらうだけね……」


 赤毛の女性は凍えるような声でクラウディウス帝国の兵の喉を剣で突き刺す。怒りと憎しみに満ち溢れていた赤毛の女性は剣に付着した血痕を払い落とし鞘へと戻す。


 女性の持っている剣は装飾品がつけられておりどこかの貴族か王族が持っていそうなものでありどこかしら人を殺すことに罪悪感を抱いているようにも見えた。


 「クラウディウス帝国が共同統治の約束を破りブリテン王国を略奪さえしなければ、凌辱されることもなく娘達が攫われることもなかった……」


 カバンからクラウディウス帝国の兵から奪い取ったパンを口の中に頬張り泥を啜るような思いで荒野を彷徨っていた。


 赤毛の女性は二人の娘と病気で死別した夫のことを思い出しながらもクラウディウス帝国への憎しみを募らせながら、フード付きの白いマントを纏いながら考えていた。


 「スエトニウス、あいつは絶対に許せない……娘の純血だけでなく国を、財産を奪われたこの憎しみを晴らすまでは死んでも死にきれない!」


 純白のマントとは裏腹に女性の心は荒み切っており、復讐の旅を続けるべく次々とクラディウス帝国の人間を殺害していた。


 これも全ては病死した夫と攫われた二人の娘を取り戻すため、悪魔に身をささげる覚悟さえあった。


 ジョセフ達は街へと到着し、ギルド支部長に手紙を渡しに受付のお姉さんに「支部長本人に渡してくれ」と頼みそれを了承した受付嬢は「かしこまりました」とにこやかに受け答え支部長質へ向かうべく上の階へ行き、ジョセフはケイト、リサと共にクエストの張り紙を探していると冒険者達が噂をしていた。そう、クラウディウス帝国の人間が近頃何者かに無差別に殺害されていることだ。


 何故無差別にクラウディウス帝国の人間が殺害されているのか、考えられることは反乱軍が少しずつクラウディウス帝国の人間を暗殺していること、もう一つはブリテン王国の貴族か王族が復讐のための仇討ちをしているかだ。


 ジョセフは顎に手を当て眉間に皺を寄せ考え込んでいると傍らにいたリサが心配そうに俺に言葉を発した。


 「ジョセフ様、考えていることは分かりますけどあまり無理はなさらないように……」


 修行の旅に出た時からリサはずっと無茶ばっかりしているジョセフのことを心配し続けていた。ジョセフはリサに無理はしないようにと気休めの言葉を言うもリサの表情は曇ったままだった。


 「リサさんは本当に凄いですよね、ジョセフさんの顔は色眼鏡で表情が分からないのにそれを瞬時に察しているわけだから……」


 ケイトはリサに言葉を発しながら関心をしており、リサは「ジョセフ様のことを本気で愛しているからですよ?」と微笑する。


 リサの笑みはとても妖艶でロリコンでなくてもときめいてしまう程でジョセフのアドレナリンが脳内を迸らせていた。


 クラウディウス帝国領土の大都市ブリタンニアの冒険者ギルドはワトソン王国の冒険者ギルド以上に大きな建物で大都市と言われているだけその分稼ぎの良いクエストもジョセフとリサが旅に出る前にいたワトソン王国ロンドハイド支部よりも豊富であった。


 かつて、大都市ブリタンニアはブリテン王国の領土でありクラウディウス帝国の兵が監視を付けていたりと帝国の政策に反対する勢力が少なからずいたのだ。近頃は反対勢力からクラディウス帝国の兵が闇討ちに遭っており、同盟国でもあるワトソン王国の冒険者でもあるジョセフとリサでさえ入国審査の際、しつこく尋問をされたりとブリタンニアには悪印象を抱いていた。


 ジョセフはキョロキョロとギルド内を見物していたが国直属の貴族がかなりの出資をいてるからなのか豪華な装飾類で固められており鹿の剥製が置かれていた。その光景を見たジョセフはこれも支部長の趣味なのか、それとも温室育ちかのどちらかだろう。


 「ジョセフさんとその御一行のみなさん。支部長がお呼びです」


 受付のお姉さんは支部長室へと誘導し扉を三度ノックした。


 「支部長、ジョセフさん達御一行をお連れしました」


 「うむ、そうか……入りたまえ」


 支部長の声が中から聞こえ、受付のお姉さんはゆっくりと扉を開けた後すぐさま一階の受付へと戻っていく。そこに現れたのは明るい赤毛の長めのオールバックで切れ長の目の30代前半の男性だ。支部長室の机には書類がどっしりと置かれており、その支部長は机に座っていた。


 「君が噂のジョセフか……手紙をわざわざ遠方からご苦労だった」


 「それはどうも……帝国ってのは中々に物騒な奴等が多いみたいだがいつもああなのか?」


 ジョセフは支部長に国情を訝し気に尋ねると支部長は目を瞑りフッと息を吹く。


 「ブリタンニアは名前の通り以前はブリテン王国の領地であったことは知っているかね?」


 「いいえ」


 「ここにいる笑死を含めたギルドの職員は皆、ブリテン王国の人間であり以前はもっとクエストも気軽に行えたのだがクラウディウス帝国に占拠されてからというもの色々と制限が設けられてね……そこで君に頼みたい!ブリテン王国の女王陛下を探してはくれないかな?これは私個人の頼みだ。報酬も望んだ額を出そう」


 「支部長さん、何事にも順序があると思っているが俺もあんたもまだ自己紹介を済ませていない」


 「これは失敬……改めて自己紹介をしよう。私は冒険者ギルドブリタンニア支部の支部長をしているワルド・ドゥカティと申す」


 「ジョセフ・ジョーンズ、そして横にいる二人はリサとケイトだ」


 ワルドとジョセフは互いに自己紹介を済ませ、再度ワルドは支部長としてではなくブリテン王国の一国民としてジョセフに女王の捜索を依頼する。


 「ワルドさん、女王はブリテン王国は事実上王族の血は途絶えたと聞いています。生きているかも分からない人間を捜索するというのは……」


 「確かに女王陛下が生きていらっしゃるかは誰にも分からない……だが、このところクラウディウス帝国の兵が夜中に惨殺されていることを考えれば女王陛下は間違いなく生きていると思いたい」


 「女王の捜索を依頼するってことはあんたも《《クラウディウス帝国に抵抗する危険分子扱い》》されるんだぜ?」


 ジョセフは今後の身の安全のためにもワルドに注意を促す。


 「勿論、これは私個人の頼みでありブリテン王国国民の願いでもある。嫌ならばこの件は忘れてもらいたい……」


 「ちょいと待ちな……俺は別に断るとは言っていないぞ。ただし条件はある」


 「その条件とは……?」


 机上で俯かせていた顔を見上げたワルドはジョセフにその条件とは何かを尋ねる。


 「俺は事実、ブリタンニアに到着する前にクラウディウス帝国の凶悪組織ジークのメンバーを数人殺している。女王捜索が終わる前は俺達の後ろ盾になってほしい。それでいいか?」


 ジョセフは多少強引ながらもワルドに交渉を持ち出す。


 「ちょっと待て!今、《《ジークのメンバーを複数人殺した》》と言ったか?」


 ワルドは慌てて立ち上がり両手を机上の上に置きジョセフに尋ねる。


 「そうだ、リサとケイトの三人でな」


 「ジークはここら一辺でもかなりの強敵揃いの人間が集まっている極悪組織なんだぞ!」


 「それは人間の間での話で魔人族と比較すれば大人と子供くらいの差はあるはずだろ?」


 ジョセフは焦燥しているワルドにジークは人間としては強くても魔人族と比較すれば大したことはないと豪語した。ジョセフは数々の魔人族と戦い生還したからこそ貫禄を感じさせていた。


 「ギルドカードを拝見した限りそれなりに結果を出しているとは聞いていたがもしかしてワトソン王国を魔人族からの襲撃を阻止した人間の一人なのか?」


 ワルドは冷や汗を流しながらジョセフに尋ねるとジョセフは小さく頷く。


 「信じられんな……君がそのうちの一人であることは……だからこそ興味深い……しかしいいのか?君は仮にもワトソン王国で活躍していた冒険者で女王を捜索するということは同盟国でもあるクラウディウス帝国と敵対することにもなるが?」


 ワルドはジョセフの経歴を知ったうえでジョセフに再度確認を行う。


 「俺がワトソン王国の冒険者であることがバレないように行動すればいいだけの話だ」


 「君が持ってきたリバープル支部長の手紙を読んだときから中々興味深い少年だとは思っていたがね……」


 ワルドはジョセフに渡すべく依頼書を作成し書き上げた依頼書をジョセフに手渡しする。ジョセフは依頼書を手に取り内容を確認した。


 ジョセフは依頼書を読み終えた後リサとケイトに渡し、二人はないように目を通しコクリと頷きジョセフ二つ返事で答えた。


 「OKだ」


 ワルドは女王捜索の引き受け手が見つかり安堵した。支部長でもあるワルドは一冒険者にすぎないジョセフにゆっくりと頭を下げることはそうそう出来ることではなかった。ブリテン王国の国民として女王を慕っているだけあってワルドの人柄の良さが滲み出ていた。


 ジョセフはリサ、ケイトを連れて事件の起きた場所を記した地図や資料を受け取り支部長室を軽くお辞儀をしながら出て行った。


 ジョセフ達が出ていき暫くワルドは息を吹きながら背伸びをしていたら秘書が現れワルドに声をかける。


 「……いいのですか?よそ者に女王の捜索などさせても……もしかしたら彼らはクラディウス帝国のスパイである可能性だって……」


 「仕方ないさ……彼ら以外に女王を探せるものなどこの国には誰もいないわけだからね。あのジョセフとリサの二人には色々と興味深くも感じているわけだしね。彼らも危険は承知の上で承諾しているわけで特に問題はなかろう。それに……」


 「どうかされましたか?」


 「そうだな……レストレード君、知っているかい?ワトソン王国の王女が一冒険者と婚約をしているとも噂になっていたがその婚約者は8ヶ月ほど前魔人族を率いていた魔王ベルと戦い消息不明になったことを?」


 秘書のレストレードはワルドが突然話し出したワトソン王国の冒険者の話に瞳孔が開いた。


 「支部長はあのジョセフって少年がワトソン王国の王女と婚約しているとでも?しかし《《その冒険者は消息不明》》になったのでしょ?」


 「そして偶然にも彼が一緒に連れている冒険者にリサという名の少女がいたんだよ。ワトソン王国の王女の名前もリサだったし彼がその消息不明になった冒険者で間違いはなさそうだ」


 レストレードは首を横にふりながらワルドの推測を否定しつつジョセフ達が帝国側の人間ではないかと疑っていたがそれとは別にワルドは何処か面白そうな表情でジョセフ達のことを期待していた。


 女王の捜索を開始していたが手がかりらしきものは一切見つからなかった。クラディウス帝国の兵が闇討ちされた現場を記した地図をワルドからギルドを出る前に貰ってはいたもののワトソン王国王都ベイカーハイドの倍以上もの人口がいるためそうそう簡単なものではなかった。


 「リサ、あのワルドという支部長はかなり誠実そうに見えるがどう思う?」


 「ジョセフ様と会話しているときから心を読んでいましたがあの人は本気でブリテン王国への愛国心の強い方だと思いましたよ。他国の人間を巻き込むことには深く申し訳ないとも思っていながらも背に腹は代えられない状況を理解しながらジョセフ様に依頼を申し込んでいたみたいですし」


 「取り敢えず女王様を帝国の人間に見つからないようにしなければいけないな……リサ、ケイト、慎重に行動しないと確実に命取りになるだろうから気を引き締めていこう」


 「「はい!」」


 ケイトとリサは同時に返事をし、ジョセフはフッと微笑しながらもう一度地図を開きながら帝国兵が殺された現場へと足を運ばせていた。


 一刻も早く、女王を見つけてこれ以上ことを大きくしないでいいためにも。


 ジョセフ達はブリタンニアの都心を手当たり次第回るも女王の手がかりは一切見つからなかった。


 それどころかブリタンニアに到着してからずっと歩きっぱなしであったためかなりの疲労が下半身に蓄積しておりケイトは特にバテバテになっていた。


 「ジョセフさん、この辺りで休憩しませんか?」


 「今日は一日中歩いていたからな……泊まれる宿でも見つけて今夜はゆっくり休むとするか」


 「そうですね、私も早くふかふかのベッドで休みたいです」


 ケイトはジョセフに休憩することを提案し、リサはニヤつきながらジョセフを見詰めていた。


 ジョセフはふと足を止め、ワルドから貰った地図を開き近くに宿がないかを確認した。地図を見るとジョセフ達が今現在いる位置は近くの宿から徒歩で五分程度でたどり着ける距離であることからケイトは迷わず指をさす。


 「ここにしましょう!近くにあるんだしわざわざ遠い宿に行っていたら日が暮れてしまいます!」


 ジョセフとリサはケイトの提案に賛成し近くの宿へと向かう。


 五分ほど歩くと地図に書かれていた宿があり、看板には”ノーフォーク”と書かれておりそれが宿屋の名前であることが分かった。


 「ワルドから貰った地図にこの宿と同じ名前が記されていたけど中々年季の入った宿屋だな……」


 「私は早く休憩できるならどこでもいいです!」


 ケイトはすぐさま宿に入ろうとジョセフとリサの手を握り強引に宿へと引っ張る。宿の扉を開けると客は2~3人程度しかおらずこれは空き部屋確実にあるなとケイトは結論付ける。


 「すみません、今晩ここの宿でお泊りをしたいのですが空き部屋ありますか?」


 受付へと駆け付けたケイトは唐突に受付の職員に尋ねる。


 「シングルとダブルの両方空いていますけどどちらをご利用で?」


 「そうだな……俺とリサと二人で寝るからシングルを二部屋でも大丈夫かな?あとは食事と風呂付でいいかな?」


 「はい、お風呂でしたら今の時間帯が丁度空いています。食事とお風呂込みですと銀貨10枚頂いてもよろしいでしょうか?」


 男女別々で入浴することを想定したジョセフは最低でも90分は確保したいと思い、職員にその旨を伝えると「そんなに長く入るんですか!?」と驚き始めた。日本人として育ったジョセフとしては譲れなかった。 


 ジョセフが職員に部屋の提示をするとケイトが発狂しだした。


 「ちょっと、勝手に話を進めないで下さいよ!何で私だけ別室なんですか!仲間外れだなんて嫌です!」


 ケイトはジョセフに猛然と抗議をするもジョセフはケイトを無視して手続きを済ませようとしているも職員はかなりの困り顔でいた。


 「いいじゃないですか。私とジョセフ様は婚約していますし二人一緒でも」


 「それなら私もジョセフさんと一緒の部屋がいいです!」


 「ケイトさんはジョセフ様と婚約関係を結んでいないので一緒の部屋で一夜を過ごすなんて私が認めませんわ」


 「……べっ、別に……リサさんみたいに下品なことは考えてなんていません……」


 リサとケイトの会話を聞いた他の男性客はジョセフに嫉妬の眼を向け、殺意を剥き出しにしていた。宿の職員はキョロキョロとケイトとジョセフ、リサペアを交互に見ながら場を和ませようと試みるも踏み込む隙間さえ与えてもらえないでいた。


 「リサさんが別室に行ってくれればいいじゃないですか!婚約関係を結んでいる割にまだ男女の関係に発展していないだなんてそれは婚約者としての存在意義はあるのですか?」


 「……ん、ありますわよ……ジョセフ様は16歳で私が13歳だからっていう理由でまだ男女の夜の営みをしていないだけで……」


 ケイトはリサが言われたくない痛いところを吐きケイトはあわよくばジョセフと一緒の部屋で寝ることができるとチャンスを掴みつつあった。


 「ジョセフさんと私は同い年ですし……私は、ジョセフさんと婚約してジョセフさんに私の純血を捧げます!」


 ケイトが言葉を発した途端辺りは静寂となり物音一つ立たず周囲はジョセフを凝視していた。


 その後、手続きも無事に終了しジョセフとリサ、ケイトは同じ部屋で宿泊することが決定した。ジョセフは部屋に荷物を置き「やれやれ……」と呟き暫く沈黙とした様子で一人浴室へと向かい長旅で洗い流せなかった垢を洗い落としていた。


 ジョセフの長い金髪はお湯で洗い流したことでハリウッド女優のように艶のある美しい髪の毛になりそれは男性であっても身を惹かれてしまいそうになるほどであった。リサとケイトは全裸で脱衣所から飛び出しジョセフは肩までお湯に浸かりながらその光景をサングラス越しから目の当たりにし、某バトル漫画の仙人のように鼻血をブシャーッと勢いよく血飛沫を上げていた。


 「せめてタオルで隠してもらえないものかな?」


 「嫌です、寧ろジョセフ様にもっと見てもらいたいです!」


 「私もジョセフさんに見てもらいたいんです!」


 ジョセフはタオルで体を隠さないリサとケイトに注意を促すも二人はジョセフに女性の体を堪能してもらいたくて色白で艶のある肌を余ることなく晒しており、ジョセフはそれにツッコミを入れようにも鼻血をしようと用意していたタオルで止血することで精一杯になり思考が回らなくなっていた。


 リサとケイトがゆっくりとお湯に浸かりジョセフはリサ達が入るからという理由で上がろうとするもリサに手を引っ張られそのままお湯の中へとドボンっと沈んだのだ。


 ジョセフは沈みながらお湯の中でブクブクと空気の泡を放出させながら顔を湯の中から出したと同時に時間を停止させ、浴室を出た。


 「あれっ!ジョセフ様がいない!」


 「ほんとだ!リサさんが強引に引っ張った後にお湯の中に沈んで顔を出したと同時に消えましたよ!」


 リサとケイトはジョセフが一瞬にして消えたことで周囲を見渡しながらジョセフの姿を探すも見当たらなかったのだ。


 ジョセフは脱衣所で濡れた体をタオルで拭いながら籠の中に入れていた衣類を着衣した後部屋に戻ろうと脱衣所を出て自室へと向かう。


 宿の階段を上り廊下を歩いているとフード付きマントを付けていた人物がさっきを漂わせながら階段を降りているのを見てジョセフは尾行することにした。ジョセフは時間を2~3秒ずつ止めながら距離を保ちながらその人物の後をつけ、クラウディウス帝国の兵が酒場から出ていき路地裏へと入り込んだと同時にマントの中に隠していた剣を抜き出し振り上げる。


 「天誅!」


 その人物は尊王攘夷志士の人斬り以蔵の異名で恐れられていた土佐藩郷士の岡田以蔵のように絶叫しながらクラウディウス帝国の兵の暗殺をしようとした現場をジョセフは目撃したのだ。


 「……んっ?」


 酔っ払ったクラウディウス帝国の兵は後ろを振り向いた瞬間首をはねられ、その兵は自分が死んだことにすら気付くことすらなかった。クラウディウス帝国の兵は首をはねられ激しく血飛沫を上げ、その人物は暗殺を完了したと同時に引き上げようとするとピタッと立ち止まり「誰だっ!」と叫んだ。


 「あんたがクラウディウス帝国の兵を最近暗殺しているヒューマン・ザ・リッパーか?」


 ジョセフはその人物に尋ねると石畳を蹴り上げジョセフに急接近した。


 その人物はジョセフを突き刺そうとした瞬間、ジョセフは時間を止めることにより上手く回避しその人物の背後を取り『スパーク』でその人物を麻痺させる。


 「ぐっ……動けない……」


 ジョセフは動けなくなったその人物のフードを取り顔を見てみるとフードの中からは赤毛のテレサのような切れ長の目の女性であった。


 「女?」


 「女なら人を殺してはいけないのか?復讐をしてはいけないのか?」


 赤毛の女性の身長はジョセフよりも2センチほど高く胸の大きさはジョセフが今まで出会った女性の中では胸がかなり大きい方でジョセフはその女性に人殺しをさせたくはないと思い始めるのだ。


 「あんた、名は何と言うんだ?」


 「ブーディカだ!辱めなどを受けるくらいなら一思いに殺せ!」


 ブーディカと名乗った女性はグググっと歯軋りを鳴らしながら死を選ぶことすら躊躇わなかった。


 「ブーディカ?ブリテン王国のブーディカ女王か?」


 ジョセフはブーディカに女王であることを尋ねる。


 「それが何だという?分かったなら殺せ!」


 「いいや、あんたは殺させはしない……」


 ジョセフは左手に纏わせた『スパーク』でブーディカの首を手刀で気絶させる。ジョセフは気絶したブーディカをお姫様抱っこをし、人目に気付かれないように少しずつ時間を止めながら宿まで踵を返していた。


 リサとケイトは宿の部屋でジョセフが返ってくるのを待ちわびながら会話をしていた。


 「ジョセフさんは一体どこに行ったと思いますか?」


 「それは私にも分かりません……」


 リサはケイトの質問に対して答えられずにいた。しかし、リサは愛しのジョセフが無事に帰ってくることを信じていた。


 修行の旅で数々の修羅場を潜り抜けたジョセフが人間相手に簡単に敗北することはないことをリサは理解しているからだ。ケイトはジョセフの強さを目の当たりにしてはいるものの殆どが人間相手にしているところしか見ていなかったからなのかジョセフの強さを一割程度しか知らなかった。


 「ジョセフさんは何故あんなに強いのか教えてくれませんか?」


 「何故強いか……ですか?」


 ケイトはジョセフが強くなった過程が知りたくて尋ねると扉がバタンと開いた。ジョセフは女性をお姫様抱っこして現われリサとケイトは何事かとジョセフに問い詰める。


 「ジョセフ様!その女性は誰なんですか?」


 「そうですよ!私達がいながら他の女性を引っ掻き回すだなんてジョセフさん、見損ないました!」


 ケイトとリサは感情的になりながらもジョセフはその誤解を解くべく静けさを保ちつつも説明をする。


 「この女性はブーディカと名乗っていた……そしてクラウディウス帝国の兵を暗殺しているのを俺が見てしまったら急に剣で突き刺そうとしたから気絶させた」


 ジョセフはリサとケイトに説明をし終えた後二つあったベッドの内一つのベッドにブーディカと名乗った女性を寝かせた。


 「ブーディカと言いましたか?」


 リサはジョセフにブーディカであるか尋ねるとジョセフは小さく頷いていた。


 「ああ、このブーディカと名乗った女性が本当に女王かはまだ確証がないから分からないがね……」


 ジョセフはリサとケイトに言ったその時、リサは気絶しているブーディカの心を読むことにしたのだ。


 ブーディカと名乗った女性は(クラディウス帝国め……娘を……私の愛する二人の娘を……返せ!)心の中でクラディウス帝国の兵を殺害していたのは恐らく二人の娘を取り返すべく取った行動の結果なのであろうと瞬時に察した。


 「ジョセフ様、恐らくこの人はブーディカ女王で間違いありません……」


 リサはブーディカの心情を知ったことで表情から哀愁が漂っていた。ジョセフはリサの頭をよしよしと撫で「よくやった」と口元を緩めながらリサのことを褒めていた。


 「ジョセフさんもリサさんが婚約者でなければ確実に浮気しているって誤解されるところでしたね」


 「確かにな、こればかりはケイトの言う通りだ。……てことで今日は三人で寝るか」


 ジョセフは革ジャンのチャックを開けた後脱ぎベッドへと仰向けになり傍らにはリサとケイトがジョセフに密着するように横になった。


 「ジョセフさんの横で寝られる日が来るなんて思いもしませんでした」


 ケイトはジョセフの耳元で本音を囁いた。


 翌朝、ジョセフはふとベッドから起き上がりブーディカに何故クラウディウス帝国の兵を殺し続けるのかを尋ねようとブーディカを寝かせたベッドへと近づいた。


 「……んっ、んん~~~~っ」


 ブーディカはベッドで声を唸らせながら眠っており、ジョセフは半ば左人差し指に纏わせた『スパーク』で頭部に軽い電流を流し覚醒させたのだ。


 するとブーディカは声をハッと上げながら勢いよく起き上がった。ブーディカは左右を見渡すしジョセフ、リサ、ケイトに警戒心を抱きつつもブリテン王国がまだクラディウス帝国に領土を奪われる前のことを思い出していた。


 「目覚めたか?昨日は手荒な真似をして済まなかったな。ああでもしなければ何故あんなことをしたか聞けなかったからな」


 ジョセフはブーディカに軽くお辞儀をしながら謝罪をした。


 「それで、私に何を求める?この体はもう汚れきっているんだぞ!」


 強引にブーディカの着ていた服を時間をジョセフは左目を深紅に輝いたと同時に5秒ほど時を止め、その間にブーディカの服を脱がせたのだ。ブーディカの艶のある白い肌を見てフッと微笑した。


 「別にあんたの体を求めたりなんてしないさ。それに《《汚れている》》と言ったな?その口ぶりだと女を捨てたとでも言いたそうだが安心したよ。あんた、まだ女だよ」


 頬を赤らめながら胸と股間を手で隠しているブーディカを見ながらジョセフは言葉を発した。


 「だがそれでいい、女は自分の幸せだけを望んでいればいい。復讐だなんだのと荒んだ心を持ったものに武器は危険だからな……」


 「お前は私だけが幸せになればいい、そう思っているのか!?私には二人の娘がいるんだぞ!その娘を蔑ろにしてまで幸せになろうなんて思えるわけが……そのためには娘を攫ったクラウディウス帝国の人間を……」


 ブーディカの瞳からは涙がボロボロと零れ落ち、二人の娘を忘れて幸せを掴むことなんてことはできなかった。


 「ブーディカ女王、ジョセフ様が失礼なことを言ってしまい本当にすみません……ブリテン王国は王族の血が途絶えたと聞いていましたがその噂はデマだったのですね……」


 リサはジョセフの傍若無人な態度を振る舞ったことを深く謝罪しながらもブーディカに尋ねる。


 「夫の死後、共同統治を口実にクラウディウス帝国は女に継承権はないという理屈を言い二人の娘と私はクラウディウス帝国の兵に凌辱された上に娘はクラウディウス帝国の兵に攫われたのよ……王族の血が途絶えたことで国が崩壊し、この”ブリタンニア”も今ではクラウディウス帝国の正式な領土になっているけどそんなのは口裏合わせに過ぎないわ……」


 「そんな……クラウディウス帝国はブーディカ女王達の存在を忘れさせるためにブリテン王国を完全に略奪したなんて……」


 「そうよ!それが帝国のやり口なのよ!私は国の再建のためにクラウディウス帝国の兵を殺しているとそこの帽子の彼は勘違いしているみたいだけど二人の娘が無事ならそれでいいのよ!その為には殺生をせざるを得ないのよ!」


 ブーディカは国の再建よりも夫との間にできた二人の娘を救うことだけしか考えておらずそれ以外を考える余裕すらないほどに精神状態は不安定でいた。


 「確かに国を取り戻すためにクラウディウス帝国の兵をぶち殺しているのかとも考えたさ。だが俺はこの街に来る前に反乱軍を名乗る人間に出会ってな、普通ならあんたがいてもおかしくはないのに女王がいなかったことを考えれば反乱軍の誰かがブリテン王国の国王になりたかったんだなとは思ったよ」


 「反乱軍?クラウディウス帝国に反旗を翻す組織がいるとでも言うのか?」


 ジョセフは反乱軍がいることを説明するも娘を救出するべくクラウディウス帝国の兵を殺すことに集中していたブーディカは頭にはてなマークを浮かばせていた。


 「ああ、クラウディウス帝国の政策に不満を感じている人間が少数ながらも抵抗運動をしてね……そのおかげで関係ない村人まで巻き込んでもう戦える人間はあまりいない貧しい村だったよ」


 ジョセフは反乱軍とクラウディウス帝国の凶悪組織ジークのメンバーとの争いで命を落とした老人のことを思い出しながらブーディカに話す。ブーディカはその話に頷きながらもどこか気に病まない様子でいた。


 「本来なら私が戦って死ぬべきだったのだろうが娘二人のことしか考えていなかった私は……なんて愚かで卑しいんだ」


 ブーディカは俯き自虐していた。


 「別にあんたがそこまで責めさいなむこともないだろ?反乱軍と呼ばれる奴らは村を拠点にしたおかげで関係のない村人達を死に追いやったんだ。だが、あんたは今こうやって生きている。それの何が悪いんだよ?人間自分の命が大事だと思えるからこそこうやって精一杯足掻いているんじゃないのかよ?あんたは女王という立場を気にしすぎて勝手に自己嫌悪しているに過ぎない!」


 ジョセフはブーディカにあげつらう。リサとケイトはここまで他人に向き合っていくジョセフを見て涙腺が緩くなり涙がダラーっと流れていた。


 「ジョセフ様が他人を思いやる心をお持ちになっていくところを見ていると修行の旅に出てよかったと思っています」


 「そうですよ……普段はあんなに無口で無愛想だったのに……」


 リサは成長していくジョセフにより好意を抱きケイトはもう少し優しくしてもらいたいとジョセフに訴えかけた。


 ブーディカは身支度を整えすぐにでもクラウディウス帝国の兵に娘の居場所を突き止めるべく部屋を出ようとしたがジョセフはブーディカを呼び止める。


 「何処へ行く?まだ朝なのに出かけたって目立つだけだぞ」


 「娘を一日でも早く見つけたいのよ!母親ならそう思うのは当然よ!」


 「何か手がかりはあるのか?何もないのに出かけるのであればそれは無謀だ」


 ジョセフは感情的に動いているブーディカに論うも今のブーディカの精神状態では考える余地などなかった。


 「娘を助けたいのであれば俺が行く。忘れ去られた女王とはいえ、元ブリテン王国女王とも知れば反乱軍が調子に乗って攻め込んだりと大惨事に発展しかねないからな」


 ジョセフはブーディカが使用していたフード付きマントで体を覆い隠し、深紅に輝く左目の能力で時間を停止し宿を出る。ジョセフはフードを被りそのうえサングラスもかけているため日本であれば完全に不審者認定されてもおかしくはない風貌でギルド支部長のところまで駆け付けていた。


 冒険者ギルドへと難なく辿り着いたジョセフはすぐさま中に入り受付でギルド支部長に用があるとだけ伝え手紙を渡した。


 すると受付のお姉さんは慌てたようにバタバタと走り出し支部長室へと向かっていった。ジョセフは5分程度待っていると受付のお姉さんが戻り支部長室へと誘導するのだ。


 支部長室へと行くのはこれで二回目でありジョセフはブーディカが見つかったことを報告するためと二人の娘の手がかりを聞き出そうとしていたのだ。


 受付のお姉さんは前回と同じく扉をノックし、「入りたまえ」と扉の中からワルドの声が聴こえ、受付のお姉さんは「失礼します」と言いながら扉を開けた。


 「まさかここまで早くにまた会えるとは思ってもいなかったよ。それで、女王は見つかったのかな?」


 ワルドは真剣な眼差しでジョセフに尋ねる。


 「勿論見つかった。”ノーフォーク”という宿でどうやら宿泊をしていたみたいだ。俺からもあんたに尋ねたいことがあるんだがいいかな?」


 「どんなことをかな?」


 ジョセフはワルドに尋ねるとワルドは興味深そうな表情をしていた。


 「ブーディカの二人の娘の居場所を知っていたりはしないか?もしその二人の娘が見つからなければブーディカは確実にクラウディウス帝国の兵を殺すことを辞めないだろうからな」


 「ジョセフ、知っているならば今すぐにでも教えたいところだが残念ながら手がかりはなしだよ……しかし、女王の二人の娘は恐らくだがスエトニウスの奴隷にされているかそれとも他国に売り飛ばされたかどちらかであろう」


 「人買いに売り飛ばされたか奴隷として今もそのスエトニウスにこき使われているかの二つか……」


 「女王を捜索してくれた報酬をすぐにでも用意してもらうから少しゆっくりしていくといい」


 ワルドはブーディカを見つけてくれたジョセフを引き留めるように促す。


 「早くブーディカの娘を見つけたいのでね、あんまり長居はしたくはいないのだが焦っていても無駄だろうから暫くはゆっくりしとくとするか……」


 ブーディカの娘の捜索を開始したいとも思っていたが答えを急いでも意味がないと考えたジョセフはワルドの提案した意見に賛成し、ワルドは応接室まで誘導した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ