第40話 ジョセフ、荒野で何を見る!?
第一章と比べてかなりチート満載で異世界ファンタジーらしさも出せたかなと思っています。
皆さんの周りにいますか?せこい人、憎たらしい人、性格が悪くて偉そうな人、口うるさい人……。
殺してやろうか!と考えてはいるけどその人の前ではオドオドと縮こまってしまったりと……。
もし俺が身長195cmあって強ければ正義の鉄拳を喰らわせているんだけどなぁ~と思っています(笑)
そんな思いをジョセフに込めています。
世の中の理不尽と小悪党達を小説の中で制裁!
修行の旅に出て8ヶ月が過ぎ、ジョセフ達は荒野を彷徨っていた。
荒野は戦争により人の死体で溢れかえり地面は血で赤く染まり異臭が漂い死体周辺にはカラスなどが群れ死体の肉を食らっていた。
その光景を見ながら次の街へと歩き続けていた。
「この異臭といいこの近辺はどうなっているんだ?」
「一年程前にブリテン王国のプラスタグス王が病死されたことで国は解体されワトソン王国の同盟国でもあるクラウディウス帝国に吸収されたって聞きました。クラディウス帝国の政策に不満を抱いている人達が反乱を起こした結果です……」
リサはジョセフに悲しそうな表情で荒野に群がる死体の山となった原因を説明する。
「それなら私も聞いたことがあります。確かその反乱組織を指揮しているのが確かプラスタグスの側近の人だとも聞いていますよ」
ジョセフの傍にはリサがいてその隣にいた栗色の髪をサイドテールで結んでおり瞳はワインレッドで身長はリサと大差変わらず年齢はジョセフと同い年の少女だ。
「そうなのか、リサ、ケイト、ここは俺でさえ不愉快に感じるから早くこの荒野を出よう……」
「そうですね……ジョセフ様の言う通りです」
リサは頷きケイトという少女もジョセフの歩幅に合わせながら小走りをしていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どこからか悲鳴を上げる声が聴こえ周囲を確認すると荒野の崖下を見下ろすとそこには荒くれ者から必死に逃げ惑う老人がおり荒くれ者達は蹲る老人を蹂躙していた。
「ジョセフ様、どうやらあのおじいさんは食料を持っているみたいです……」
「……んっ、てことはあれは盗賊か何かか?」
「この周辺にはクラウディウス帝国の盗賊が好き放題やっているって聞いているけどまさかこんな所にもいたとは……って、ジョセフさん!話聞いてましたか!?」
ジョセフはプールで高飛び込みをするように崖から飛び降り着地する前に荒くれ者の仲間の一人に両首筋に『スパーク』を纏わせた両手の指で突き刺し一人の荒くれ者は首を抑え息ができずに窒息死しそのまま泡を吹きだしながら地面へと倒れた。
「おい、そこのモブヤロー」
リーダー格の荒くれ者がジョセフの方へと振り向き大きな弓矢を構える。
「誰だテメエは!」
「どういうわけかは知らんがその老人の前から消えろ!」
「てめえ、この弓矢が見えねえのか?」
「…………」
ジョセフは無言で指をバキッボキッと鳴らしながら威圧をかける。
「色々な死闘を繰り広げた俺の前には弓矢の動きなど止まって見える。お前では俺を殺すことはできん」
「なぁにぃ~、俺じゃおめえを殺せないだぁ?馬鹿が、死ねや!」
荒くれ者は弓矢を勢いよく弾き、ジョセフはすんなりと躱す。一瞬唖然と固まった荒くれ者は次の矢を慌てて準備しジョセフはブルースリーのようにファイティングポーズを構える。
「今度はよく狙いな!外せばお前の体の一部をいただく!」
「うっ、うるせぇ!このクソガキがぁ!」
荒くれ者はジョセフの頭部目掛けて矢を放つも弾丸を摘まむように矢を取り、その光景を目の当たりにした荒くれ者は唖然とし口を開けながら黙り込む。
「……………………」
「呪文名言わなくても発動できるが取り敢えず言っておくか……『レールアローガン』!」
ジョセフは摘まんだ矢をペン回しの要領で回しダーツを投げるように矢を光属性魔法『レールアローガン』を付与して荒くれ者目掛けて投げつけ矢の軌道はまさにレールガンのように速く青白いプラズマを発していた。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『レールアローガン』の圧により荒くれ者の顔面は火傷を負い、欠損した左耳は吹き飛び荒くれ者は地面に転がり込みながら出血している左側頭部を押さえ悶え苦しんでいた。
もう一人の荒くれ者はどこかへ逃亡しリサとケイトはすぐさまジョセフの方へと駆け寄る。
「ジョセフさん、あれはこの辺で大暴れしている極悪組織《《ジーク》》のメンバーです!まずいですよ!」
「《《ジーク》》って?」
ジョセフは頭にはてなマークを浮かばせながらケイトに尋ねる。
「ジークはクラウディウス帝国の極悪組織で旧ブリテン王国一円を制圧しているんです!いくらジョセフさんでもそんなのと対峙すれば……」
「ジョセフ様は死にません!」
「いやいやリサさん、あの極悪組織は一国の騎士どころか冒険者でさえ敵に回すことを避けているくらい強いって聞きますよ?そんな相手をいくらジョセフさんが強いからといって……」
「魔人族と比べたらどのくらい強い?」
ジョセフはどれほどの強さかケイトに尋ねるとケイトは言うのを躊躇いながらも「魔人族なんてそりゃあいくらジークが相手でも雑魚同然です……」と口を震わせる。
「……そうか、なら別に大丈夫だろ」
「ちょっと待ってください!ジョセフさん、ジークも勿論怖いですけど魔人族がどれほどの強さか分かっているんですか?人間じゃ到底かないません!」
ケイトはそんなジョセフに人間が魔人族を倒すことは不可能だと説得を試みていたがジョセフは魔人族と戦って生還している以上、チート能力を授かっていない人間というものが如何に弱いかが分かる。
リサはボロボロになった老人を光属性回復魔法『ヒール』で治療を行い老人の息遣いは安らぎ艶が出てきていた。この8ヶ月の修行の旅の間にリサは回復魔法と戦闘技術も上達しており剣の技術だけならジョセフ以上に強いと言っても過言ではなかった。
婚約者に剣で負けるってのは少々癪ではあったがそもそもがブルースリーのように素手での戦闘を中心にしている以上剣の技術がリサより劣るのは仕方のないことなのかもしれない。
「リサさんもジョセフさんもかなりのお人好しですよね……このお爺さん見たところ反乱軍の人っぽい感じがするのに……」
ケイトは小声で呟きながら老人を治療しているリサに放っておけばいいのにと内心思っての発言だ。
「ケイトさんの言いたいことは分かりますが困っている人を助けたい……そう思うのはいけないのでしょうか?」
リサは不満を抱くケイトに尋ねるとケイトは俯きながら「確かに困っている人を助けるのは人として当然ですけど……」と口を噤む。
「爺さん、何故あの集団に命を?反乱軍の人間ってだけではなさそうだが……」
ジョセフは地面で仰向けになっていた老人に尋ね、口を開こうとしていた。
「食料じゃよ……」
老人が手に持っていた袋から出したのは麦の種であった。
「また何で麦の種なんですか?」
「麦を耕して美味しいパンをたくさん作って村の人達が植えないようにするためじゃよ……クラディウス帝国が国王の死を利用して共同統治の約束を破りブリテン王国を略奪したことにより村は飢えを強いられるようになったのじゃよ……」
老人はクラウディウス帝国の領地となってから納める年貢が倍以上になり生活もままならなくなり何処からか麦の種や野菜などの食料を調達せざるを得ない事態にまでなっており配給も底を尽きていたのだ。
クラウディウス帝国の領土となった元ブリテン王国は色々と制限があり銀貨を製造枚数が設けられ金貨を製造することは禁じられていたのだ。そのうえブリテン王国の女王と二人の娘はクラウディウス帝国の人間に凌辱を受け事実上ブリテン王国の王族は途絶え、国は崩壊しクラウディウス帝国に吸収されたことにされたのだ。
「そんな……」
リサはその事実を知り唇を噛みしめ普段優しい笑みを浮かべていたリサからは殺意に満ちた表情へと変わっていた。クラウディウス帝国の同盟国でもあるワトソン王国の王女としてクラウディウス帝国の政策を許せずにいた。
「リサ、許せない気持ちはその老人以外にもブリテン王国の女王も同じことだろう。だが今はこの老人を反乱軍の村まで送り届けよう」
「ジョセフ様、早く次の街に行ってギルド支部長に手紙を渡すのでは……」
「それでいいのか?リサ自身はこの老人を救いたいと思っているのではないのか?」
「そうですけどジョセフ様はそれでいいんですか?」
リサは次の街でギルド支部長に会うことを優先していた俺のことを気遣って言うが首を突っ込んだ以上引き下がるわけにもいかなかった。
男としても。
「俺はどうやらクラウディウス帝国を敵に回す行為をしてしまったからな。この世界の秩序を守る以前にここで悪党を葬らなければ俺達のこれからの道の邪魔をするだろうしな。俺の敵になる以上は帝国だろうが魔人族であろうが俺は容赦はしない」
そう言うとリサはなんだかホットした表情でジョセフの傍らに来てケイトはジョセフとリサがくっついてるのをみて妬いていた。
辺りは暗くなり野宿をすることになったのだが荒野で焚き火を焚きヨロの寒さを凌いでいた。
「ジョセフさん、やっぱり私には何故あのおじいさんを助けたのか理解ができません!」
「……久しぶりに《《人間らしい人間》》に出会った気がしたからだ……」
「…………《《人間》》?」
ケイトは何故ジョセフが老人を助けたのかを疑問に思っており、それが反乱軍の人間であることを指摘するも物怖じせずにジークのメンバーと戦ったことが理解できずジョセフは人としての心を持っている老人を見ることでこのような人達が大勢いてくれればと思っていた。ケイトはジョセフの言葉の意味を理解したのかは分からないが暫く考え込んでいる様子で、リサは微笑みながら俺の傍らに座っていた。
「……フフッ、ジョセフ様はこの8ヶ月で変わりましたね。でも、向こう見ずに行動するところは初めて会った時と変わらないものですね」
「リサがいたからこそだよ。人間ってのは出会いや環境で変わると言うだろ?」
「あの~、リサさんとジョセフさんは初めて会った時からかなりのバカップルを見せつけてますよね~」
ケイトはジョセフとリサが楽しく会話しているのに嫉妬をしているからなのか皮肉にも嫌味を言う。
「そうでもないさ、リサを助けたからって理由でいきなり婚約させられた時はこんなに仲は良い方ではなかったしこうやって仲が良くなったのも冒険者を始めてからだよ……」
「リサさんの性格考えたらジョセフさんにいきなり婚約しちゃうのも無理もないですね。私ならリサさんのようにジョセフさんに猛アタックできる勇気なんてありませんもの……」
「ケイト、もしかして俺のこと好きなの?」
ジョセフは真顔で思わずケイトに尋ねるとケイトは顔を赤く染め焦燥ぶりを見せつけ顔を勢いよく横に振っていた。
「そっ……そんなことありませんよ……だって、ジョセフさんはリサさんと婚約しているわけだし私みたいな女がジョセフさんのような美男子に好意を寄せているなんて……」
「私は別にケイトさんなら私の次にジョセフ様の婚約者になっても構いませんわよ?」
リサはケイトの心を読みおちょくりケイトの頭から湯気が湧きだし気絶してしまった。それを見た老人は「若いってのはいいのう」と笑顔を見せたあとに眠りにつきジョセフとリサは火にあたっていた。
「ジョセフ様がいなければ今頃私はこうやって生きていることもできなかったのでしょうね……」
「それは俺だって同じさ。リサはどんなことがあっても俺のことを信じてくれたじゃないか。修行の旅に出たときからリサには助けてもらってばかりでこうやって仲間も増えているわけで」
リサとの出会いから本当の愛を知り、本来持っていた人間らしい心を取り戻しつつあるのだが、魔人族や魔物との戦いで何度も死の境地に辿り着くことにより人間としてのリミッターを解除していることへの恐怖に駆られてもいた。
そう、いつか心が暴走して狂戦士のように敵味方見境なく破壊を望むのではないかと……それにより愛する者を失うのではないかと考えるとジョセフは自分が人間であり続けられるのか分からずにいた。
老人を背負って村まで送ることにしたジョセフ達はそこからというもの辺りが何もない荒野で草木も生えていない辺境な地をかれこれ2~3時間歩いていると遠くからピカッと光っている場所があった。
まだ昼前だっていうのに何故あんな光をとも思ったが恐らく老人の住んでいる村の人達が見張りをしているのだろうか、近くまで駆け付けてみるとそこには貧相な槍を持った痩せ細った紋章の入った川鎧を纏った男二人がジョセフ達の所へとやってきたのだ。
「そこを動くな!背負っているのは誰だ!?」
髪の長い顔まで痩せていた男がしゃがれた声でジョセフに尋ねる。
「この老人はお前達の仲間ではないのか?」
するともう一人の坊主頭の男が目を細めジョセフの背に乗っている老人を見やると構えていた貧相な槍を下ろす。
「麦の種を手に入れたと他の者に伝えてくれんかの?」
「そっ、村長!どうしたのです?この男はもしや……」
「この若いもんはわしをクラウディウス帝国の凶悪組織のメンバーから命を救ってくれたのじゃよ……」
村長と呼ばれる老人は事の経緯を二人の男に説明し納得したからなのか村の中に入れてくれたのだ。
「先程の無礼はお許しいただけないでしょうか?私達はクラウディウス帝国の製作に反対している反乱軍の身でありますので……」
「それはいいが早く爺さんを安静にさせておいた方がいいと思うぞ?長旅で疲れているようだし」
ジョセフは背負っていた老人を坊主頭の男に後を任せ、ジョセフ達は髪の長い痩せた男に小さな小屋へと案内されそこには客を招き入れる場所とはお世辞にも言えず、ジョセフ達はただ茫然とボロボロになっている椅子に腰を掛けた。男は案内した後すぐに小屋を出ていき、小屋の外から何か村人と反乱軍の兵達の喋り声が聞こえた。
外からは村人達は老人が生還したことに喜びこれで食糧難を免れることができると号泣する者もいた。
反乱軍の兵達は村人に対し、「これは俺達の食料になるのだから俺達が貰うのは当然だ」と言わんばかりに老人から奪おうとするも反乱軍のリーダー格が部下を宥めるように止め言葉を発する。
「お前、そんなことをして亡くなられたプラスタグス陛下が喜ぶと思っているのか?食料がなくて困っているのは俺達だけではない!それに村人は大事な戦力にもなるんだ!丁重に扱うのは当たり前だ!」
反乱軍のリーダー格は部下達を説得し、それを舌打ちする部下もいた。
「村長が後でお前達にお礼をしたいから暫くそこにいるんだぞ」
反乱軍の兵達の会話が終わったかと思ったら髪の長い男が再び俺達のいる小屋へとやってきてそう言いながら小屋を出ていき待ち時間の間リサとケイトと雑談を始める。
「リサ、ケイト、ブリテン王国ってのがどんな国か知っていることを詳しく話してくれないか?」
「ブリテン王国のですか?」
「そうだリサ、分かる範囲でいいんだ」
リサにそう言うとリサはブリテン王国がどんな国であったのかを話し出す。
「ブリテン王国はワトソン王国のように治安は他の国と比較してもいい方で国王のプラスタグス王とブーディカ女王は国民からとても慕われていてかなり潤わせていたみたいです。そして運が悪かったのがクラディウス帝国と同盟を結んでいたことですね……クラディウス帝国はワトソン王国でさえ口出しできないほどに戦力と財力があるため基本的には逆らうことができないんですよ。そのためクラウディウス帝国は好き放題暴れまわったりしていて修羅の国とさえ言われるようになっていますわ」
「なるほど……」
プラスタグスとブーディカというのはジョセフのいた世界ではローマ帝国が国土を拡大していた辺りの時代にいた人物でプラスタグス死後国を奪われ復讐者となったブーディカはローマの人間を大量虐殺し最後はブーディカの率いていた反乱軍はローマに負け自殺をしたという個人的には不幸な人だったのだが、もしこっちの世界のブーディカも復讐のために大量虐殺をするのであればこれ以上長居をするわけにもいかないとジョセフは思った。
「リサ、ケイト、早くここから出よう……」
「えっ!?」
逃げる準備をしようとジョセフは二人に伝えるとリサはすぐに察したからなのかコクリと頷きケイトは声を上げた。
ファンタジー世界あるあるでは取り敢えず疑わしきものはすぐに消せというのが鉄則でこの小屋に案内された時から何か陰気臭さを感じていた。
「ジョセフさん、言っていることが分かりません?」
「今ここで説明している暇はない!早くここから出よう!」
ジョセフはボロボロになった椅子から立ち上がりリサとケイトの手を引っ張り小屋を出るべく扉を開けるとそこには複数の村人と反乱軍の兵達が周囲を取り囲んでいた。
「何処へ行くつもりだ?」
さっきの髪の長い痩せ細った男が槍を構えジョセフに尋ねる。
「何処って、俺達は爺さんを村まで送り街へ向かってギルド支部長に手紙を渡さなきゃいけないんだよ。悪いけどここを通してくれないか?」
道を通すようにジョセフは男に頼むも一向に道を開ける気はなく殺気が漂っているままだ。
「お前達を完全に信用したわけじゃない!お前達がクラディウス帝国のスパイである可能性だってあるんだ!」
「そうだ!悪いけどお前達はここで死んでもらう!」
髪の長い痩せ細った反乱軍の男がジョセフに目掛けて槍を投げつけその軌道はジョセフの方へと急接近し、ジョセフは仕方なく修行の旅で身に付けた能力を使用することにした。
そう、時間停止だ。
男の投げた槍を投げてから1秒後に時間を止めジョセフは男の投げた槍の軌道を地面下へと変え元いた位置へと戻り再び時を動かす。
「なにっ!?」
投げたはずの槍が地面へと突き刺さり地面から槍をもう一度投げるもまた地面に刺さりと繰り返し周囲にいた反乱軍の兵達は立ち竦みながら怯えていた。
「何故槍を投げようとしたら地面に刺さるんだ!?」
男はジョセフの方を指さしながら喚き散らした。
「俺の邪魔をこれ以上しないでもらいたい、こっちだって暇じゃないんだよ」
そのまま兵達は後ろへと後退しジョセフ達は村を出ようとした瞬間だった。
「大変だ!クラディウス帝国の凶悪組織ジークのメンバーがやって来たぞ!」
顔面蒼白になりながら駆け付けてきたさっきの丸坊主の男が兵達に伝える。
「村で戦えそうのない女子供は早く中へ!戦えるものは武器を持て!」
反乱軍は凶悪組織ジークの襲撃から村を、食料を守るために戦い村の中で沢山の血が流れていた。
「フハハハハハッ、村の人間は皆殺しにしろ!反乱軍を匿う村の人間などに慈悲など必要ない!」
狂気に満ちた高笑いで殺戮を楽しむジークのメンバーは次々に逃げ惑う村人を、反乱軍を蹂躙していた。
「いいか、村人と反乱軍は殺しても構わんが女を二人侍らせている金色の長髪男はここへ連れてこい!そいつだけは俺が殺す」
「はっ!」
顔に火傷を負い左側頭部に包帯を巻いていたジークのメンバーが他のメンバーに命令を下す。ジークのメンバーは世紀末のヒャッハーしている荒くれ者そのものの風貌をしており唖然としたままリサとケイトは武器を構えジークのメンバーへと急接近する。
「はぁっ!」
「てぇい!」
リサは剣で次々とジークのメンバーを斬り捨て、ケイトはあたふたとしながらもダガーを逆手に持ち脇腹を斬り付けたりと応戦しており、ジョセフも二人の足手まといになるまいとジークのメンバーを殲滅していた。
「陸奥守吉行……だいぶガタが来ているが短期戦なら問題はないだろう……」
ジョセフは腰に帯刀していた陸奥守吉行と龍王丸を抜き龍王丸をメインウェポンとして使用。龍王丸はこの世界の鉱物資源を用い、ジャスミンというテレサの馴染みの鍛冶屋で鍛えられた疑似日本刀ではあるが切れ味は日本刀以上、耐久性も西洋の剣以上と異世界ならではの仕様となっている。
ジョセフは二刀流で戦うスタイルを『スパーク』などの魔法メインで戦い始めてから用いていなかったが魔法の通じない相手との戦闘を想定するならと思いこの8ヶ月間刀と魔法を使い分けていたのだがこの戦闘スタイルは陸奥守吉行の状態を考えればあまり使いたくはなかったが一気に殲滅するなら無駄に魔力を消費するよりも刀で斬り倒した方が速いからだ。
時間を2~3秒、短くても0.5~1秒ずつ止めながらジークのメンバーを斬り捨てるのだがこの戦法を思いついたのはかれこれ修行の旅を始めて6ヶ月目からだ。
最初は瞬き程度にしか時間を止められなかったが3秒~5秒と時を止められるようになり、ジョセフは昔読んでいた漫画を思い出していた。そしてこの時を止められるようになったのも左目が深紅になった時だけであり通常の色の状態では時を止めることができない。
目が赤くなるのも左目だけでそれが何故、どのようにして出現したのかは未だにジョセフは理解できていない。
リサに目の色を指摘するまでジョセフはそれに気づかず、左目が赤くなった時だけ体力を消耗しやすくなっていたりと昔読んでいた漫画のキャラそのものであった。
ジョセフの動きを眼前で見ていたジークのメンバーは次々とさっきまで押していたのが次々とリサとケイトの援護もあって数は次々と減っていた。
「あの金髪の男、何であんなに速いんだよ!あれは金色の悪魔じゃないか……」
ジークのメンバーは声を震わせ逃亡しようとするとあの男は逃亡するメンバーを殺害したのだ。
「敵前逃亡など許さん!あの男と反乱軍を皆殺しするまでは」
「しかしボス、あの化け物じみた強さを持った二人を相手になんて無茶な話ですぜ……」
「戦いは数だよ!数で押し切るんだよ!」
ボスのかなりの無茶ぶりに溜め息を吐き訝しげな表情をしながら「了解しやした」と了承したメンバーはそのまま数で押し切るよう残ったメンバーに指示を出す。
「『サンダースピア』!」
リサは雷で形成した槍でジークのメンバーを一掃し砂埃が舞う中ケイトは敵の懐へと入り次々とダガーで再起不能にする。
ケイトとリサのロリっ子コンビに関しては俺自身感慨深く思い真似できないほどである。
「ちくしょう……ジークがこんなに追い込まれるなどあり得ぬ……数で押し切れると思っていたのになんてすばしっこい奴等なんだ!伊達に女二人を侍らせ得ているわけではないな……」
ボスは一人残った状態で唇を強く噛み、血が滲み出ていた。
「てやぁぁぁぁぁ!」
ケイトが残りのメンバーを殲滅している隙にボスは地面に落ちていた槍を拾い、勢いよく投げた槍の軌道はケイトの方へと乗り始め躱すのは不可能な状態で、今から俺が時間を止めても間に合わなかった。
いつの間にか現れた老人がケイトを突き飛ばし庇い、老人の胴体に槍が刺さる。槍は心臓を貫いておりリサの回復魔法では助からないのは目に見えていた。
「爺さん!」
ジョセフは力いっぱい声を出し老人の方へと駆け寄り老人を抱き上げると老人は麦の種が入った袋を握り締めており最後の力を振り絞りジョセフに最後の願いを頼んだ。
「この……むっ……ぎ……の……種を、実らせてほしい……頼みます……」
老人はジョセフにそう言いながら麦の種の入った袋を託し、ぐたりと眠るように息を引き取り老人の体は一気に軽くなり死んでいることが分かった。
「ジョセフさん、私のせいで……このお爺さんは……」
ケイトは涙を流しながら自責を感じぐすっ、ぐすっと音を立てながらジョセフに言う。
「ジジイめ、黙って逃げていればいいものをこんな小娘の為に命を無駄にするとは笑止」
ジークのボスの甲高い声は村中に響き渡る。
「……てめえ……」
ジョセフはぼそぼそとした声で声を唸らせる。
「なんて言ったんだ?まっ、どうせテメエもここで死ぬんだからよお」
ジークのボスは囁くような声で俺にそういい手持ちの武器を振り上げる。
この間合いなら時間を止めることができると思ったジョセフは涙をグッと堪え深紅に染まった左目の力を解放し、時間を停止させ龍王丸と陸奥守吉行でジークのボスの四肢を切り裂き時を動き出した後、陸奥守吉行と龍王丸を腰に帯びた鞘に納め両拳に纏わせた『スパーク』を連続で打ち込み『スパーク』から放たれる電流は閃光の如く何度もジークの顔面を行き来し、猛然とした攻撃が終わり3秒後には肉体は血飛沫を上げながら無惨に飛び散っていた。
「これがクラディウス帝国の、人間のやることなのか……」
「ジョセフ様……」「ジョセフさん……」
ジョセフは老人が手に持っていた麦の種が入った袋を取り、生き残った村人にそのまま手渡しし村を去ろうとした時だ。
「あんた、名前は……?」
村人は老人を失い、結果的にジークから村を救ったジョセフに尋ねる。
「……ジョセフ、ただの冒険者だ」
切なそうな表情でそう言い残したジョセフはリサ、ケイトを連れて村を去った。
村にはもう戦力といえる反乱軍の生き残りはおらず、結果として一時的にクラディウス帝国の凶悪組織ジークのメンバーから守ることはできたが今後ともどうなるかは誰にも分からなかった。
「ジョセフさん、あんな荒れ地に麦なんて実るとは思いませんけどあれでよかったんですか?」
ケイトはジョセフに訝しそうに尋ねる。
「実るさ……あの老人の願いの籠った麦の種だから」
「だといいんですけどねぇ……」
ジョセフの傍らにはリサ、ケイトがいてこの二人と共にギルド支部長に手紙を渡すべく、砂埃が激しく舞う荒野を淡々と歩き続けていた。
何だかんだで第二章執筆開始となりました。
始まりはジョセフとリサが修行の旅に出て8か月後が舞台になっていますが物語がある程度進んだら修行の旅に出た初日からゆっくり執筆していこうと考えています……(笑)




