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神様の手違いで異世界転移させられた俺はハーレム生活充実になりました  作者: 桐ヶ谷スバル
第一部 愛を取り戻した転移者 第一章 転移者とワトソン王国
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第21話 草凪誠とジョセフ

 ワトソン王国よりも東にある国からやってきた少年と四人の少女がワトソン王国の冒険者ギルドベイカーハイド支部の受付にて手続きを行っていた。


 少年の身長は165cm程度で体格は細身で黒のロングコートをまとっており、双子と思わしき少女は白のブラウスに紺色のミニスカ、貴族のような恰好をした少女は小綺麗なドレス風の格好に革製の鎧をまとい、お上品な華奢な少女の方は青のブラウスに膝にかかる程度の長さのスカートを穿いていた。


 「すみません、無報酬でゴブリン討伐を引き受けた冒険者がそちらのギルドの冒険者だと聞きましたがその人は今どこにいるのかわかりますか?」


 「あの、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 「そうでしたね、僕は草凪誠と言います。その人にクエストの依頼をしたくて東の方にあるホームズ王国から来た冒険者です」


 草凪誠という少年は金貨のたんまり入っている袋を受付カウンターに置き、受付のお姉さんが受け取ろうとするとあまりの重さに耐えきれず片手で持ち上げるのが困難であった。


 (この重さ、それにこの坊や見た目によらずこんなに大量の金貨をどうやって…冒険者って言ってたけど彼のランクを考えればまだそんなに高い報酬を受けられるクエストはないのに…)


 受付のお姉さんは内心そう思い、草凪誠の存在とランクに関して半信半疑でいた。


 「クエスト依頼料ですが今渡したので足りますか?」


 「内容にもよりますけど少し余分な気は…」


 受付のお姉さんは少し引き気味に思いながらもクエスト依頼の書類作成を始めた。


 ワトソン王国とホームズ王国は同盟国であり、同盟国である場合他国でのクエストを引き受けることも可能だそうだ。先代のワトソン国王とホームズ国王はともに魔人族と戦った戦友で戦いが終わった後も友好的な関係を気付いている。


 「ねえ誠、朝からまだ何も食べてないんだしそろそろ何か食べないと」


 「リンの言う通りだね、ここには食事するところもあるしワトソン王国の味も知っておくのも悪くないね」


 そう言いながら誠は少女四人を連れてテーブル席へと腰を掛け、腹ごしらえにチキンとサラダを四人分注文した。


 「それにしてもワトソン王国ってホームズ王国に随分と近い雰囲気を持っているわよね。何よりもここの国の王様はとてもいい人だってレイラも言っていたし納得ね」


 「トキさん、王様もいい人ですけどリサ王女もとてもいい人なんですよ」


 トキとレイラはワトソン王国の王族について色々と語り合っており、注文した料理がくるまで楽しそうに会話をしていた。


 「せっかくワトソン王国にきたんですからリサ王女に後で会いに行きましょうよ」


 レイラが提案を出すと他の三人は「お~っ、いいねぇ」と頷きながら賛成していた。


 ジョセフとリサは昼食を済ませた後宮廷の中へ戻ろうとすると一人の近衛兵が息を荒げながらこちらへと走りながら向かってきているのが分かる。


 「リっ、リサ姫と婚約者のジョセフ殿、やっと見つけました…シャーロック王子が…お呼びです」


 近衛兵は言葉を発することすら困難になるほど探していたようで「すぐにお戻りください」と言わんばかりに馬車へと乗せ、近衛兵は御者台でジョセフ達が乗り込んだのを確認した後馬を勢いよく走らせ宮殿へと一気にひとっ飛びだ。


 馬車の中は激しく揺らぎ近衛兵も早く戻らねばと顔色が悪くなっていたのが分かったがそのくらい深刻な状況なのだろうと把握することができる。(それにしてもこんな街中で馬車を勢いよく走らせて事故に遭ったらどうするつもりなんだ?)ジョセフは近衛兵にツッコミたくなるほどに馬の走る速度が速いと感じていた。


 「シャーロックが私達を呼んでいるなんて一体どういうことなのかしら…」


 「俺とリサの婚約に反対だったりとかじゃないよね?」


 「そんなことは多分ないと思いますよ、ジョセフ様。私が寝ている間にシャーロックに一度お会いしたのならそれは分かるはずです」


 「しかし、人間一度見た程度じゃ人間性なんてわかるものじゃないぞ?リサのように心でも読めない限り」


 激しく揺らぐ馬車の中でリサとそんな会話をしながら呼び出された理由を考えてはいたがジョセフはせっかくリサと二人でゆっくりしようと思っていたのに必ずどこかで忙しくなるのは計算外であった。


 「リサ姫、ジョセフ殿、ご到着しましたのでお二人ともお降りください」


 近衛兵が軽く頭を下げながら馬車の扉を開けリサはゆっくりと降り始め、ジョセフも一緒に馬車から降りる。


 宮廷の敷地はいつ見ても綺麗で扉の前には噴水があったりとおしゃれな作りをしている。宮廷内は赤い絨毯で広がっており、そこには執事とメイド達が列を作りジョセフ達の帰りを待っていたのだ。


 さっきジョセフ達を馬車に乗せた近衛兵が赤い絨毯の敷かれた階段をのぼりながら王室へとジョセフ達を誘導し始めた。


 「シャーロック王子が俺達を呼び出す理由は聞いていないかな?」


 「申し訳ありません、ジョセフ殿。王子は何も言わずに陛下と口をそろえて連れてくるようにとだけしか申されてなかったので…」


 近衛兵は答えらないことを申しわけなく思っていたのか声を震わせていた。王室へと辿り着き近衛兵が大きな扉を三回ノックする。


 「誰だ?」


 扉の中から王様の声が聴こえた。


 「リサ姫とジョセフ殿をお連れしました!」


 近衛兵が扉の中にいる王様とシャーロックにも聴こえるような声で報告をする。


 近衛兵が扉を開け、ジョセフとリサは王室へとお辞儀をしながら入りそこには王様とシャーロック、王妃様がお茶を飲みながらソファーに腰を掛けていた。


 「リサにジョセフよ、帰ってきていたか」


 「それで王様、一体何のご用件で?」


 ジョセフは単刀直入に王様に質問をする。


 「実はだな、そなたが無報酬でクエストを二度もこなしたことが同盟国でもあるホームズ王国の方にも噂が広まってな。今からホームズ王国の冒険者がここに来るそうなのだよ」


 ジョセフは王様が何を言っているのか一瞬分からずに佇んでいた。そこで状況を整理し、要するにジョセフがゴブリンを無報酬で討伐したことが他の村や街でも話題になってることが原因であることが判明した。それはまあ分かったがわざわざ他国に来る必要はあるのか?ジョセフはそれが理解できずにいた。


 「陛下、ホームズ王国の冒険者と王女様がやってきました!」


 「冒険者がくることは聞いていたが王女様身自らおいでになられるとは」


 ホームズ王国の王女様まで来訪されることまでは王様も情報は聞いていなかったようだがその王女様がくるってことはジョセフは相当やばいことをやらかしてしまったのか?と少し心配してしまった。


 「失礼します」


 扉の向こう側から細い声が透き通るように聴こえてきた。


 ジョセフはそのホームズ王国の王女とその冒険者とやらを拝見させていただくことにした。外からリサと同い年くらいの少女が4人と黒髪の日本人?と思わしき人物が入室したのだ。


 「お久しぶりです、ワトソン国王陛下。そしてこの3人は私達と共に旅をしている冒険者と私の従妹のマギーです」


 「初めまして、僕は草凪誠といいます。そしてこちらのお二方はリンとトキで僕と最初に出会った双子の姉妹です」


 「そして私がレイラの従妹のマギーです」


 草凪誠という名前からしてジョセフはすぐさま日本からやってきた転生者か転移者であることを察することができた。そしてジョセフはマギーという少女はどことなくアイリスとどことなく似ている気がした。


 「数年ぶりにワトソン王国に来てみてどうかな?」


 「はい、街の人達はとても親切でこのまま平和が続けばと思っています。えっと、あちらの方は?」


 ホームズ王国の王女様はジョセフの方を見て王様に尋ねた。


 「そうだったな、あちらにいるのは余の娘リサ姫と婚約している…」


 「ジョセフ・ジョーンズと申します。以後お見知りおきを」


 「ジョセフさんと言うのですか、自己紹介が忘れていましたね。私はホームズ王国王女のレイラと申します」


 レイラと名乗る少女は丁寧に自己紹介を済ませソファーへと上品に腰を掛ける。


 ジョセフが一番気にしているのはレイラの傍らにいる草凪誠という男である。ジョセフは誠からは佐藤夏樹とは違う何かを感じていた。この気配はジョセフをこの世界に転移させた神様にも似た気を感じたからだ。強さに関してはおそらく俺TUEEE!チート的な何かを持っているのだろうがジョセフは今はそんなことを考えるまでには至らなかった。


 「失礼かもしれませぬがレイラ姫と申されましたかな?今回は何用でワトソン王国にやってこられたのでございますか?」


 延々と長話をされる前にジョセフはレイラ本人に直接尋ねることにした。


 「実は、ワトソン王国の冒険者がゴブリンを無報酬で討伐したものがいるとお聞きしまして…」


 「それなら俺がしました」

 

 ジョセフの発する一言によりホームズ王国から来た王女と草凪誠、双子とマギーは口に含んでいたお茶を勢いよく口から吹き出し始めた。


 「きっ、君が無報酬でゴブリン討伐を引き受けた冒険者だって本当なのか?」


 誠はジョセフの発した言葉を半信半疑に思い信用するまでに時間がかかるみたいだ。


 「そうだ。無報酬クエストを二回引き受けたがちゃんとクエストもこなしたぞ」


 「とある町で吟遊詩人が弾き語りをしてその冒険者を探していたがまさかワトソン王国王女の婚約者だとは…」


 「俺達の活躍がそんなにも広まっていたなんてな…」


 傍にいたリサは誇らしげな表情でジョセフに身体を密着させてており、実の両親と弟の前でこんなにも体を密着させて恥ずかしいとは思わないものかとジョセフは苦笑いしながら思っていた。それを見たレイラ王女は誠に身体を密着させていたり何かとリサに対抗心を燃やしているようだ。


 「あの、失礼ですがそのサングラスは傷か何かをお隠しになられているのですか?もしそうでないのなら外してもらってもいいですか?」


 「サングラスをか?」


 「はい」


 誠はジョセフの素顔を見たいと尋ねてきたのでジョセフはゆっくりとサングラスを外し、首を横に振り長い金髪がなびいた。


 「このサングラスは俺のトレードマークみたいなものでね、誰も声をかけてくれないから外すことを忘れていたよ。それと草凪誠君は歳はいくつかな?」


 「僕は今年で16歳になりました」


 「16歳?俺も今年の冬には16歳になるからため口でいいよ」


 誠は急すぎる展開に思考と反射がついて来れていないようで状況を上手く把握しきれていない部分があった。


 「ジョセフの素顔を見たことがなかったがリサが選ぶだけのことはあるな」


 王様はジョセフの素顔を見てはふむふむと頷き、納得し始めていた。女王に関しては目がハート状態になっており、「王が若い頃はジョセフと同じくらいの美男子だったわね」とうっとりとした表情で回想していた。


 (それにしてもリサといいこの両親がいるとすぐに終わる話も終わらないな……)ジョセフは内心早く話し終わらないかなとめんどくさそうな表情で思っていた。


 誠とその一行たちは何とも言えない表情でジョセフ達のことを見つめ、「あの~、早く話を進めたいんですけど~」と言いたそうに誠の存在感が薄れていた。


 「誠君、ちょっと二人で話したいから外に行かないか?」


 「外へ?」


 誠はぽか~んとした表情を浮かべながらもうんと頷き、ジョセフと誠はリサ達が盛り上がっている間に王室を抜けることにした。勿論、ジョセフはサングラスをちゃんとつけていた。外している状態で外を歩く気にはなれなかったからだ。


 王室を抜け、城の外へと出た時にはそれの色はオレンジ色に輝いており、地球で言うところの17時を過ぎているだろうとジョセフと誠は推測した。外には庭園があり、そこには人はおらず基本誰もよらないだろうと思い庭園に設置されているベンチに腰を掛けた。


 「草凪誠君、単刀直入に聞くとしよう。君は日本という国の人間か?」


 「そういうジョセフは何故日本を知っているのか教えてくれるかな?」


 「俺が日本人だからさ。神様の手違いでこの世界に転移させられたのと金髪だから異世界人と間違われても仕方はないだろうが…」


 「僕は神様の手違いで死んだことがきっかけで転生したんだけどまさか君が神様の言ってた転移者ってことでいいみたいだね。サングラスといい革ジャン来ている異世界人なんていないからまさかとは思っていたけどね」


 誠はどうやらジョセフが転移者であることを一気に悟り、さっきまでとは違い気迫すら感じている。ジョセフは誠が転生者であることから予想するなら間違いなく神様から特別な力を授かったのだろうと考えた。


 「ラノベあるあるのチート日本人がマジでこの異世界にいるなんてな…まあ物語上どこかに必ずいるだろうとは思っていたがまさかこんな身近にいたとは思ってもいなかったよ……」


 「無報酬でゴブリンを討伐したジョセフにクエストを依頼したいのだが引き受けてくれるかな?」


 「内容にもよるがね」


 誠はジョセフにクエストの依頼をし、ジョセフはう~んと渋ると誠は淡淡とした様子になるのかと思ったが至って冷静であった。


 「ここ最近、ドラゴンがこの辺に生息しているみたいでね。そこでワトソン王国の冒険者に頼んだ方がいいと思って…」


 「誠は神様に色々と底上げしてもらっているとかじゃないのか?」


 「確かに簡単に死なれては…てことで記憶力、魔力、その他諸々強化しては貰っているが魔法に関しては火力が弱くてドラゴンのような強力なモンスターを一撃で仕留めるのは難しくてね…」


 誠は自分自身は神様に底上げしてもらったことを認めつつ火力が弱いため確実に仕留めるために他の冒険者に依頼せざるを得ない状況であることを説明しだした。


 「…それならウチのパーティにマリーという全属性魔法適正を持っている仲間がいるから俺達向きのクエストかもしれないな」


 「ジョセフには本当にすまないと思っているよ。僕の魔法がもっと火力が強ければ他人任せにするようなことは…」


 「気にするな…それよりも報酬はちゃんと出るのか?俺の分はいいとして他のメンバーにタダ働きさせるのは申し訳なくてな…」


 頭を深々と下げた誠はジョセフに謝罪の言葉を述べているがジョセフはそんなに頭を下げなくてもと思いながらもそろそろ他のクエストをこなさなければと思っていた。


 「分かった。報酬に関してはジョセフの望んだ額を支払えるようにするよ。一応僕の方も結構お金はある方だから。それでドラゴン退治の件を引き受けてもらいたい」


 「金持ちなんだな。それに可愛い女の子とパーティ組んだりとオタクの理想そのものだな、君は。勿論俺は引き受けるよ」


 ジョセフは誠にそう言うと誠はそれほどでもと言わんばかりに苦笑いをしながらジョセフに再度ドラゴン退治の依頼を要請する。


 (誠と佐藤夏樹を対面させない方がいい気もしたがいずれ顔を合わせることもありそうだし黙っておくつもりもないがそれはそれで面倒になるだろうな)ジョセフはふとそう思った。


 「本当に助かるよ。もしかしたら断られるんじゃないかと不安にも思っていたけど」


 「同じ日本から来たもの同士、助け合うことも大事だからな」


 そう、ここで誠に恩を売ることでコネクションを広げ今よりもいいクエストを引き受けられるようになればテレサやジンジャー、佐藤夏樹達を養えるようにはなるだろうからだ。それに人との出会いによって人の人生というものは左右される傾向もあり、その辺りもしっかりと考えていかなければいけなかった。


 「ジョセフは日本にいた頃は何していたのか聞いてもいいかな?」


 「俺か?俺は喧嘩の相手を必要以上にぶちのめしたり悪徳教師を学校から追い出したりとお世辞にも英雄になれるような大層な生活はしていないよ」


 「そうなんだね、僕はごく平凡な学生をしていたよ」


 「ごく平凡か…俺もそんな学校生活を送れたならどれ程マシだったかと思う気持ちもあったが今の生活に馴染んできた以上日本に未練はそんなにないかな……」


 ジョセフは草凪誠から受けた依頼を引き受けることにし、報酬もそれなりの額を支払うとのことで交渉成立?と言っていいのだらうか分からないが一度引き受けたからにはきちんとこなすつもりでジョセフは事を進めていた。そんな風に考えたジョセフは誠と共に王室へと戻ることにした。


 王室に戻ってみるとリサ達は未だに雑談を続けており「何処に行っていたの?」としつこくリサがジョセフに尋ねる。


 「リサ、アイリス達を王室に呼んでもらえないかな?」


 「それでしたらとっくに使用人に頼んでおきましたよ」


 「…そうなのか、ありがとう」


 ジョセフはリサに一言だけ感謝の言葉を述べ、沈黙な状態でソファへと座ることにした。


 「それでジョセフ様、彼とはどんな話をしていたのですか?」


 「リサ、心を読めば分かるのにわざわざ俺に尋ねるということは俺の口から言ってほしいってことかな?」


 「婚約者としては当然です!」


 「やっぱりそうだよなあ、そりゃあ婚約している相手に隠し事なんかされたらたまったもんじゃないだろうし妥当な判断だな…」


「当然です!ジョセフ様」


 「ドラゴンの討伐依頼を受けることにした」


 ジョセフがそう発するとリサと王室に入ろうとしていたアイリス達はえっ?と言いたそうな表情で体が硬直した。


 「「「「「え~~~~!」」」」」


 いきなり硬直したかと思ったらリサ達は一斉に口を揃え叫び始めた。当然の結果ではあるのだが冒険者になって一か月も経ってないというのにいきなりドラゴンの討伐依頼を持ってきたわけだから驚くなと言われて驚かないのは無理な話だ。だが、どのみち後々そういうクエストを引き受ける可能性もあるわけでいい経験になるかもしれないのは間違いないだろう。


 「おいおいジョセフ、ドラゴンの討伐って俺達だけでやるつもりかよ?」


 佐藤夏樹は眉間にしわを作りジョセフに問い詰めるが誠が何か言い足したそうな表情で茫然と立っていた。


 「あのお、一応僕達も一緒だから身の安全は保障するよ」


 「ところでお前誰?」


 佐藤夏樹は誠のことを見ていない為どこの誰か分からない状態で誠に尋ねた。


 「僕は草凪誠、ホームズ王国で冒険者をしているんだ」


 「俺は元引きこもりの佐藤夏樹ってんだ。よろしくな」


 佐藤夏樹はキラキラと輝く歯を見せながら親指をピンと立て本人は決めポーズを決めたつもりでいたがジョセフ達はちょっと何言っているのか分からないと言いたそうな状態で冷たい目線で佐藤夏樹を見つめる。


 「えっ?何で俺そんなに睨まれてんの?」


 「いや、お前が中二病であることをすっかり忘れていたよ…て思っただけだ」


 「そうだな……って、誰が中二病だよ!ジョセフだって世紀末にでもいるのかと突っ込み入れたいふくそうしているじゃねえかよ!」


 佐藤夏樹がジャージ姿であまりにも空気を読んでいなかった為にジョセフは両手を出しながら首を振りやれやれと内心思いながら肩を竦め深く溜め息をつき、佐藤夏樹はジョセフの服装を見てキレのあるツッコミを入れジョセフは言い返すことができずうっと声をあげながらも否定はしなかった。異世界で革ジャンにサングラスにハットなんか被っていたら一人だけ浮いているのは仕方のないことなのだ。


 「そこで誠、一度お前と手合わせ願いたいがいいか?」


 「えっ?」


 流石の誠もいきなりタイマン勝負を申し込まれたことは予想外だったからなのかとぼけた表情をしていた。


 「僕と勝負したいってこと?いいけど本当にいいの?」


 「それなら今からやろう」


 ジョセフは革ジャンを床に脱ぎ捨て、誠は目を閉じながら右手を前に出し『エニィウェアゲート』と呪文名を唱え、そこにはラノベあるあるの特殊なゲートが開かれそこには草原へと通じていた。


 「準備万端のようだから行くとしますか」


 誠はジョセフを特殊なゲートへと誘導し足をゲートの中に足を踏み入れるとそこには草原があり、本当に移動できるのだと感心してしまった。


 「それは魔法かい?」


 「うん、無属性魔法の『エニィウェアゲート』と言って知っている場所ならどこへでも移動できるんだ」


 (知っている場所ならどこへでもって、まるでちびっこたちが大好きな某国民的アニメの道具かよ!)とジョセフは内心ツッコミを入れていた。


 リサ達も草原へと足を踏み入れ、女子同士でキャーキャー言いながらテンションがかなり上がっており、タイマン勝負に集中できるのか少し心配になってきた。


 「ジョセフ様大丈夫ですよね?」


 「誠さんもそこまで悪い人じゃないので死ぬことはないですよ」


 「いえ、そういうわけじゃなくて…」


 リサはジョセフの身の安全を心配しながらただ見守ることしかできず、テレサ、ジンジャー、マリーは腕を組みながらタイマン勝負を見納めるつもりでいた。


「ジョセフ、勝てるよね?」


 ジンジャーがテレサに問うもテレサはただ沈黙と腕を組んで仁王立ちをし、ふっと口を小さく開けた。


 「分からない、確かにジョセフは強いけどあの誠という男は今までに感じたことのない何かをある気がして予測ができない…」


 「テレサちゃんでも分からないんだ、多分この勝負ジョセフ君は負けるわ」


 テレサが険しい表情で口を震わせ言葉を発すると普段サバサバと明るいマリーが真剣な眼差しで声を低くしてテレサに言う。


 「ねえ、ジョセフが負けちゃうってこと?」


 「もしあたしの感が当たればの話しだけどね…」


 マリーはアイリスにそう言うのだがマリーは他にも何か隠しているような気がしてテレサはその違和感を拭えずにいた。


 「何暗い話してんだよ、ジョセフが負けるわけないじゃん。ただでさえチートみたいな奴なんだしよ」


 佐藤夏樹は状況を全く把握していない様子でヘラヘラと笑いながら周囲を和ませようとしていた。それでもテレサ達は深刻な表情を辞めずに唇を噛みしめていた。


 ジョセフはベルトに帯刀していた名刀龍王丸を鞘から抜き出すと誠も剣を鞘から抜き構えていた。


 (やはりこの男、ただものじゃないな……)ジョセフは誠から感じる威圧からは人とは違う何かを感じずにはいられなかった。


 「ジョセフ、攻撃を仕掛けてもいいかな?」


 「何を言っている、剣を抜いた時点で試合は始まっている」


 ジョセフは誠にそう言うと誠は一瞬でジョセフの方へと急接近し、名刀龍王丸を構えようとした時点で誠の剣はジョセフの間合いを詰めていた。


 「なら行くよ『ハイスピード』」


 誠は一瞬にしてジョセフに近づきさっきまで構えていた剣がバシュッと耳元を素早く掠め、これは手を抜けば確実に死ぬとジョセフは直感で分かった。誠に少しでもと刀を振り回すが全て切り払いされまるで赤子同然のように相手にならない状態だ。


 「身体強化の魔法でも使えるのか?」


 「一応全属性の魔法は使えるんだけど不得意な魔法もあってね、火力とかも中ボスクラスになると一撃では倒せないけどこういう無属性魔法は得意な方でね」


 誠は涼しげな顔で鍔迫り合いをしながらジョセフと会話をする。


 カンッ、カンッと刀と剣が交錯し、火花が飛び散りジョセフは左手に握っていた刀を大きく振るも誠はそれを瞬時に読んだのか余裕のある態度で躱す。神様に身体能力などを底上げしてもらうというのがこれほどまでに凄いのかと驚愕してしまい心が折れそうになるもジョセフは誠に一本でも当てる方法はないかと策を練っていた。


 「やっぱりジョセフは強いよ、僕が出会った誰よりもね。でもそれでは僕には勝てない」


 「ならこれはどうだ!『スパーク』」


 ジョセフは左手に握っている刀に青白い電流を流し、『スパーク』を最大出力で発動したことに驚いたのか誠は足をつまずきジョセフは今だと間合いを取り刀の向きを峰に変え、誠の肩に一発当てることに成功した。一発当てたと同時に誠は正面から倒れ、コートは泥で汚れジョセフは立ち上がるのを待つことにした。


 「ふう、この対魔法コートを着ていなかったら間違いなく死んでいたよ。その様子だとジョセフは本気を出して攻撃したみたいだね。さっきの魔法で息も荒くなっているみたいだし」


 「…くっ!」


 (嘘だろ!?最大出力で『スパーク』を発動したってのに誠はケロリとした顔で俺の息の荒さを指摘し、それでも俺はここで倒れるわけにはいかないと刀を構える。いくら神様に底上げしてもらったとは言ってもチートすぎるだろこいつ……)ジョセフは誠の異常すぎる身体能力にあっけを取られてしまい戦略で負けてしまったのだと唇を噛みしめていた。


 「でもジョセフの強さは大体分かったよ。僕の目に狂いはなかったみたいだしこれなら簡単に死ぬこともないね」


 そう言いながら誠は剣を鞘に戻し再度『エニィウェアゲート』を開いた。


 ジョセフは異世界に来て初めて敗北をしてしまったのだ……悔しい気持ちも勿論あったがジョセフは最初から勝てる勝負ではないことは分かっていたのに、(何故俺はあいつに勝負を挑んだんだろう?)と自分自身に問い詰め頭の中が真っ白になりながらも名刀龍王丸を鞘に戻し、リサ達と共に王室へと戻ることにした。


 「井の中の大海を知らずとはこのことだな…」


 ジョセフはそう呟きながら王室を出た後、寝室へと向かいそのままベッドにダイブした。

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