第17話 ワトソン王国略奪計画?
魔人族のゴンザが冒険者に殺されたことを報告しにボロボロになった古城へと向かった長い牙を持った魔人族が息を切らしながら走っているのが見えた。
「なんてことだ…あのゴンザが人間に殺されちまうなんて、早くボスに報告をしなきゃ…」
魔人族は独り言を言いながらまっすぐの道をかれこれ1~2時間は走っていた。それくらいゴンザが敗北したことは重要であったのだろう。
まっすぐの道を走り終えた後に古城へと辿り着き、長い階段の段を一つ二つと上っていった。階段を上り終え、廊下を勢いよく走り大きな扉をバンっと大きな音を立てながら開けた。
「大変です!ゴンザが人間に殺されました…」
魔人族は声を震わせながら大広間の奥の玉座に座っていた魔王らしき人物に報告をしていた。
「貴様!ノックを何故しない!?」
「まあいい、それでゴンザが死んだというのは本当か?」
魔王風の男の隣にいた家臣らしき人物がその魔人族を叱責しようとしているのを魔王風の男が止め、状況を確認していた。
「はい…今まで負け知らずだったゴンザが人間の策にハマり村は解放されてしまいました…」
「そうか、あの雑頭のゴンザが人間に…それでお前はおめおめと逃げてきたというのか?」
「ち、違います…これは報告せねばと思って…」
「言い訳は結構だ。だがゴンザがやられたのは想定外だったな。そこでお前にチャンスを与えよう。」
「チャンスとは?」
「そのゴンザを殺した人間を探し出し殺せ。それがお前の次の任務だ」
「ハッ、了解しました!」
魔人族は声を震わせながら深々と土下座をした。魔王風の男からは異様なオーラを放っており、逆らえば間違いなく殺される可能性が大であった。魔人族は薄暗い大広間を退室していった。
「いいのですか?あの男を見逃しても…」
「気にするな、どうせ奴はその人間を探し出しても生きて帰ってくることはない」
「それが分かっていてわざと…」
「そうだ、この俺が直接手を下さぬとも奴はどのみち死ぬ。俺の目的はワトソン王国を支配することただ一つ、それ以外のことに興味はない」
魔王風の男はどうやらワトソン王国を欲しているようで隣にいた側近は逃げかえってきた魔人族を処刑しなかったことに理解を示せていなかった。
「この俺の力をもってすればワトソン王国をものにすることなど容易いことよ。例え相手が誰であろうと今の俺に敵う人間などおらぬわ。うわーはっはっはっは!」
魔王風の男は大きく口を開き、高笑いをしていた。
ジョセフは街に帰ってからずっと気になっていた。
冒険者ギルドでも耳にする危険な魔人族や魔物の類が極端に出現していることは10年以上はなかったみたいだ。魔王という存在も100年以上も前の存在で勇者がとうの昔に討伐しているみたいだからだ。
「魔王が復活した」とか「帝国が魔人族と同盟を結んでいるのではないか?」と仮説を立てている人がいたが少なくとも人間が魔人族と同盟を結ぶことは低いとジョセフは断定している。
その理由にこの手の異世界ファンタジーは魔物や魔人族が人間と手を組んで世界征服をしようなんて成功率が低いからだ。
だけど物語というものは現実と違い、常にイレギュラーだらけだ。ジョセフの推測が外れることだって確実にあるだろう。
(老人のフリをした魔人族のゴンザだったかな、あいつの仲間がいたとして勝ち目はあるのか?マリーがいくらチート魔法使いだからといって彼女に任せっきりにするわけにもいかないしかと言って何もせずにただボーっとしているわけにもいかないな)ジョセフは肩を竦めながらマリーにばかり頼っていられないと思った。
「この前のゴブリン討伐の件なんだが実は村人の嘘で、その代わり魔人族の一人を討伐することができたよ」
「そうなんですか。ゴブリン討伐の件は嘘だったんですか。ジョセフさんも無報酬でクエスト依頼は極力引き受けない方がいいと思いますよ?」
「そういうものか?」
「少なくとも私はそう思いますよ。ただゴブリンよりもランクが上である魔人族を討伐した功績は大きいです。魔人族はゴブリンや人間よりも力が強く上位ランクの冒険者でも倒すのが厳しいので…」
受付のお姉さんは少々ジョセフのことを心配しつつも魔人族を討伐できたのは凄いことだと褒め称えてくれたのだ。受付のお姉さんの言うように今後とも無報酬でクエストを引き受けない方がいいのかもしれない。クエストの依頼も必ずしも本当に起こっている案件なのか怪しい依頼もあるらしく冒険者ギルドもかなり困っているみたいだ。今回みたいにゴブリン討伐という名の魔人族討伐依頼は少なくとも詐欺の対象になることだってあるだろう。
受付のお姉さんに報告を済ませ、そのまま組合を出ようとしたその瞬間、リサがかなり慌てた様子でジョセフの方へと駆けつけてきた。
「ジョセフ様、大変です!お父様が、お父様が何者かに毒を盛られたみたいです…」
「それは本当か?」
「先程宿に戻ろうとしたら宿主に手紙を渡されて…」
リサの瞳からは大量の涙がこぼれ落ち、手では拭いきれない程にまで流していたのだ。
「んで王様はまだ生きているの?」
「一応…まだ生きているみたいですけどそう長くはないだろうとのことです」
「それなら王様を助けに行こう」
「でも、お医者様は治せないと…」
「マリーがいるだろ、あいつは全ての属性魔法が使えるんだ」
気休め程度ではあるがリサを落ち着かせるためにもマリーの力を借りる必要があった。
「ジョセフー、報告は終わったか?」
「佐藤夏樹、それにみんなもちょうどいいところに来てくれた。マリー、単刀直入に聞くけど毒を盛られた場合でも治すことはできるか?」
「あたしは全ての魔法を習得済みだから勿論使えるわよ」
「すまないがリサの父親を助けてくれないか?」
マリーはリサの顔を一瞬見て状況を把握した。
「その様子だとかなり深刻そうね。それなら今すぐ行きましょ」
「ちょっと俺は?」
スルーされている佐藤夏樹だが、リサの父親を助けるために全員で宮廷へと向かうのだった。
馬車を借りてテレサとジンジャーは御者台にジョセフ達はすぐさま荷台へと乗り込み全速力で馬を走らせ、風に揺らいでいたのだがそんなことを楽しんでいる暇などなく、早く辿り着かないかとピリピリしていた。
「リサ、おじ様きっと大丈夫だよ…」
「ありがとう、アイリス」
アイリスはリサを慰めており、ジョセフはただそれを見ていることしかできないことに歯がゆさを感じていた。
「しかしタイミングとか考えたらかなりおかしくない?」
「そうだな、ジンジャーの言う通り魔人族を倒したと思ったら今度は陛下が…」
「それに今ここで亡くなったりとかしたら戦争がまた勃発して商売も気軽にできなくなるわ…」
テレサは悔しげな顔をして歯を食いしばり、ジンジャーは戦争が起こるのでは?と危惧していた。ワトソン王国は今の王が就任してから一度も戦争が起こったことがなく、他国との貿易も友好的な関係を築いていたのだ。
馬車の車輪は激しく回り、荷台に乗っていたジョセフ達は振り落とされないようにしっかりと荷台にしがみつき、御者台に乗っていたテレサとジンジャーも地面に貼り倒されないように縄を握っていた。
「そんなに速く走らせて馬は大丈夫なのか?」
「何を言っている!ゆっくり走らせていたら陛下を助けられないだろ!」
「確かに急がなきゃいけないのは分かるけどそんな無茶な走らせ方していると荷台ごと馬車がぶっ壊れてしまうぞ」
「テレサ、ジョセフ様の言うように速度を落とすことはできないでしょうか?このまま馬を速く走らせていたらお父様を助けようにも馬の方が危ないですわ」
「リサ、もう少しでお城に到着するからそれはできない」
馬と荷台の心配をしすぎていたためか一体どの辺りまで馬が走っているのか把握できずにいたがよく見てみると宮廷近くまで辿り着いていたようだ。
テレサの言うようにこの距離なら多少馬を速く走らせても大丈夫だろうと再確認した。
「そこの馬車、止まれ!」
城門の前には衛兵が槍を構え、リサが馬車の荷台に乗っていることに気付いていなかったようだ。衛兵の言う通りに勢いの増した馬車を止め、荷台はタイヤの摩擦でドリフトをしていた。
「俺達は国王を助けに来たんだよ」
「そんなことが信じられるか!第一なんだお前のその恰好は」
衛兵を槍を構えたまま、佐藤夏樹の言うことに聴く耳を全く持ってくれず、佐藤夏樹のジャージ姿を指摘していた。
「おい、お前達は目が悪いのか?」
「貴様、何を無礼なことを!」
「無礼なのはそちらです!」
ジョセフが傍若無人な態度で衛兵にリサがいることを伝えようとしたがリサはそのままゆっくりと荷台から降りだした。
「あっ、あなたはもしかして婚約者と旅に出たリサ王女ではありませんか」
「お父様のことが心配になってお父様を救えそうな方を急いで連れてきたのです!」
「ということはリサ王女と一緒におられる方は…」
「私の旅の仲間達です」
「大変失礼しました」
衛兵は槍を降ろし、リサに深々と頭を下げ、ジョセフ達はそのまま城門を潜り抜けた。
またこんな形で城に訪れることになるなんて想像すらしていなかったが物語的に考えればこれは魔王の手下と戦うための伏線になる可能性が大有りかもしれないな。
そのまま城の中に入り、王様のもとへと向かおうとしていると一人の男が慌てて城を出ていこうとしているのが見えた。
「お前、こんな所で何をしている?」
「いえっ何でもないですよ…」
「何でもないなら何故そんなに急いでいる?」
「それはその…」
「取り敢えずお前怪しいな、この城で働いているものとは思えない身なりをしているようだし…」
「放せ!」
そのままジョセフはその男の肩を掴み、男は奇声を上げながら懸命にジョセフの手を振り払おうとしていた。
「放してほしたくば知っていることを全部話せ!」
「誰がお前なんかに話すもんか!」
「そうか…」
ジョセフは光属性魔法『スパーク』を小声で発動し、男の左胸に正拳突きを一発勢いよく入れた。
「ぐぅ~、貴様!俺が怪しいといつ分かった?」
「最初からだ。お前のような汚ねえ格好した奴が城で働いている人間なわけあるか!」
男はオオカミのように長い牙を剥き出しながら殴られた左胸を押さえ蹲っていた。
「さあ話せ、お前は一体何をしていた?」
「俺はこの国の王に毒入りのワインを飲ませたのさ。このまま放っておけば間違いなく明日には死ぬはずだ。それなのにお前達が邪魔したせいで…俺は魔人族なのに、ちくしょう〜!」
「何ですって!?あなたのせいでお父様が…」
リサは男を涙目で魔人族の男を睨みながら声を震わせていた。
「貴様はワトソン王国の王女か…言っておくが解毒剤なんてものはないから助けることは不可能だ…ハッ、な…なんだ…?いっ、き、が…」
男は喘息を起こし、さっきよりも左胸を両手で押さえ、蹲っていた。男の心臓の鼓動が急激に速くなり、肺に送られる酸素も急加速を繰り返し呼吸ができなくなり心臓は次第に膨張し破裂しているのが分かった。
「ばっ…か…な…」
男は蹲ったまま倒れ込み心臓が破裂して死亡しており、男の死体を後にジョセフ達は王様のもとへと向かうべく走り始めた。
寝室には王様は顔を真っ青にしてベッドに寝込んでおり、そこには女王もいた。
「お父様!」
「リサ、帰ってきていたのね…お父様もそう長くないかもしれないわ…」
「そんな…」
「治療を行っているんですけど一向に状態が良くならないみたいで…」
それを聞いたジョセフはすぐさまマリーに王様を治療するように首を振りながら相槌を打った。
「それなら私が治してしんぜましょう、女王陛下」
「あなたは一体…」
「私はリサ王女と共に旅をしている魔法使いのマリーと申します」
「それではマリーというかた、本当に王を助けられるのですね?」
「少なくとも毒の蔓延が酷く通常の魔法や解毒剤で治療しようにもすぐに悪化するようですので私の魔法でなら可能かと思われます」
女王は半信半疑でマリーの様子を伺いながらも信用するしか他ならなかった。
「今から発動する魔法は私のように魔力量が多くなければ使用できない魔法でして使用者も限られています」
マリーはそう言いながら杖を王様の前に差し出し、呪文を唱えていた。
「神よ、このものの毒を消し状態を回復させたまえ…『ホーリーヒール』」
呪文を唱え終えると王様の体内は光に包まれ顔色も良くなっていた。
「んっ?余は生きておるのか?」
王様はゆっくりと起き上がり、手のひらを見ながら自分が生きているのか確認していた。
「陛下、ご無事で…」
「心配かけなかったようですまなかったな…」
王女の目から涙が流れており、それを見た王様は王女に軽くお辞儀をし、謝っていた。
「リサ、そちらにいるのは?」
「私の旅のお仲間でございます!」
「そうかそうか、お前の旅の仲間であったか」
「俺は佐藤夏樹と言います。リサ王女にはいつもお世話になっています」
佐藤夏樹は珍しく謙遜な様子で頭を下げていた。
「私はジンジャーと言います、陛下にお会いできて光栄です」
「おじ…じゃなくて陛下が元気になって嬉しいです」
「アイリス、いつものようにおじさんで結構だよ」
王様は笑顔でアイリスの頭を優しく撫でていた。
「私はワトソン王国に仕えている騎士、ジェームズ・ドイルの娘です」
「おお、君はあのドイル騎士長の娘であったか!あ奴の面影が確かにあるな」
「ところで王様、病み上がりなのは百も承知ですが毒を盛った相手が魔人族であることが判明しました」
「ジョセフ、お前には気遣いというものがないのか!?」
「まあよい、ドイルの娘よ。それでその魔人族はどうしたのかな?」
「抵抗するようでありましたので俺が処刑しました」
なんとまあと言いたそうに口を大きく開けた王様はハアっ…とため息を吐きながら目を閉じていた。
「魔人族か…ワトソン王国は長年戦争をしていなかったがとうとう避けては通れぬ時が来たということか…」
「それは一体どういうことですか?」
「余が国王に就任する前のことなのだが先代の国王は魔人族率いる別の世界からやって来た男と壮絶な戦いをしており余の父でもあるその王は自分の命と引き換えにその男を封印したのだがそれが解かれたようだ…」
「その男の名は何と言いますか?」
「言い伝えによれば大魔王ベルと自称していたようだ」
(別世界から来た?神様はこの世界にどんだけ転生、転移させているんだよ全く。そしてこの前の魔人族といいさっき城で殺したあの男はその魔王を自称している奴の手下である可能性が高いということか……)ジョセフは神様に対して唖然としていた。
「それでよ、何で王様を殺さなくちゃいけないんだ?」
「おそらく私を殺してこの国を乗っ取るつもりでいたのだろう。余のことが気に入らない貴族が封印を解いた可能性があることには間違いないはずだ」
佐藤夏樹は王様を殺す理由が理解できず、王様はこのワトソン王国を略奪するためには自分自身が邪魔であったのだろうと推測していた。もしかしたら封印を解いた貴族は利害一致で魔王を自称する男と一時的に手を組んでいるのだろうがこういう展開はよくあることで目的を果たしたら速攻で殺されるパターンがお約束だ。
文明レベルも中世ヨーロッパ風の世界レベルで考えればそんな知恵の回る人間が多いともジョセフは思えなかった。魔女狩りだ何だのと平気で人をすぐ殺してしまう人達が当たり前のように存在する世界だからだ。
ワトソン王国に魔人族を送り込んだ内通者がいるのではと考え始めてから城内にいた貴族や使用人を一つの部屋に集めた王様は回復した体を軽やかに動かしながら深刻そうな顔をしていた。
「ここに皆を呼び出した理由は言わなくても分かるな?この中にもしかしたら魔人族と通ずるものが紛れ込んでいる可能性があるためだ」
それを聞いた貴族や使用人達はざわついた表情でヒソヒソ話を始めていた。
「陛下、その内通者というのは我々の中にいると?それと何故魔人族がこの城に侵入することを許したのですか?」
「余に仕えている者たちを疑うのは心苦しいがこれは一つの可能性であるだけでまだ明確な証拠はない…」
一人の若い貴族が王様に質問攻めをし、王様はただ予測していることを伝えているだけにすぎなかった。魔人族が城の中に忍び込んでいたのは紛れもない事実で内通者がいなければ簡単に潜入することもできない。王様が人の話を聞いてくれる人間で本当に良かったと今でも思っているのだ。
「しかしまあ、陛下に毒を盛った男はとっくに処分されたのでしょう?だったらこれ以上は詮索する必要がないのではありませんか?そうです陛下、これを機に魔人族と亜人族を抹殺などはいかがでしょうか?」
「ガーグ伯爵、陛下の前で何ということを申されるのですか?いくらあなたといえど場を弁えなければ…」
「よい、ガーグ伯爵の言いたいことは余を暗殺しようと企んだ魔人族への見せしめということで大量の魔人族と亜人族を殺戮するべきということだな?だが余はその案には賛成できんな」
「何ですと?陛下は敵に宣戦布告をされているというのに戦争の準備はしないと申し上げるのですか?」
ガーグ伯爵とかいういかにも異世界ファンタジーに出てきそうな悪人面の小太りな禿げた男は何か慌てた様子で王様に口答えをしていたのだ。
「リサ、あの男が少し怪しい気がするから心を読んでくれないか?」
「心をですか?分かりました」
ジョセフは小声で誰にも聴こえないようにリサに指示を出した。
もし本当に城内に内通者がいたとしたらそいつには事情聴取をしっかりしなければいけないからだ。今度こそはすぐに殺さずにしなければいけないとジョセフは心掛けた。元を辿ればジョセフがすぐに魔人族を殺してしまったのが原因でもあり、その責任は取るためでもあったのだ。
テレサとマリー達がこの場にいない理由に関してだがもしも内通者がいてすぐに逃げ出さないようにジョセフは張り込みをさせていたからだ。
「佐藤夏樹とアイリスに関してはリサの母親とお茶会でもしているんじゃないかな?あの二人は戦闘に関しては不慣れだからな。もしものことがあれば俺自身何とかできないかもしれない」
ジョセフは小声で独り言を呟く。
「ジョセフ達は何やっているんだ?」
「私に分からないけどもしかしたら大事な話でもしているんじゃないかな?」
「もしそうだったら俺達がここでのんびりお茶飲んでていいのか?」
「大丈夫だと思うよ」
「アイリス、お前って本当に適当だなぁ…」
佐藤夏樹はアイリスは他愛もない会話をしながらのんびりとお茶を飲んでいた。
「それにしてもこのお茶、最初は味がないのかと思ったけど飲み続けると段々味がしてくるようになったぞ!?」
「もしかしてお茶飲んだことないの?」
「俺のいた国ではお茶はよく飲んでたけど違う国の飲み物はまだ味が慣れなくてよ…」
異世界でのお茶の味に慣れていなかった佐藤夏樹は飲み慣れることによって美味しく感じるようになっていたのだ。
佐藤夏樹が最初に異世界に来てから日本と食べ物の味が全く違い、口に合わなかったことから思っていた異世界生活と違うと唖然としている様子であったのだが今ではとても美味しそうに異世界の食文化を楽しんでいた。
「早くジョセフ達と一緒にゆっくりしたいのにまだ戻ってこないのかな~?」
アイリスは少し不安になりながらも戻ってくるのを待っていた。
「お待たせ!」
「ジョセフー!待っていたよ~!」
アイリスはすぐさまジョセフの方へと向かい勢いよく飛びつきそのままジョセフはアイリスを優しく抱きしめた。
「それよりこんなに遅くまで何やっていたんだお前達は?」
「この城内に魔人族と内通していた裏切り物を探していたのよ」
「リサのおかげで手っ取り早く見つけることができたがな…」
「ジョセフ様が私に助言を与えてくれたおかげですよ」
佐藤夏樹はすぐ近くにいたマリーに質問をし、マリーは内通者がいたことを伝えジョセフはリサの心を読む能力を使うように指示を出し、リサは照れながらジョセフがいたからこそ事件は解決したと謙虚な様子でいた。
「それで犯人は誰だったんだ?」
内通者が誰だか気なりだした佐藤夏樹はジョセフに顔を近づけワクワクしており、ジョセフは5分前の出来事を回想しながら順に説明していた。
遡ること5分前。ジョセフはリサにこの中に犯人がいる可能性が高いと思った為一番怪しかったガーグ伯爵の心を読んでほしいと他の人に聴こえないように耳元で伝え、リサは集中して心を読み始めていた。
そしたら予想は的中したのかリサの顔は一瞬にして氷のような冷たい表情へと変わっていった。
ガーグ伯爵は心の中で(魔人族に陛下を殺させようとしたのはこのわしだ!陛下が特殊な毒から回復してしまったおかげでわしとあのお方の計画は全て台無しになってしまった…)と思っており、リサはガーグの心を読み取ったのだ。
しかし、あのお方とは一体何者で王様が言っていた先代の国王の命と引き換えに封印した魔王を自称するベルという男のことなのか?ガーグ伯爵という男が何を考えているのかリサには到底理解できずにいた。
「どうしたんだリサ?」
「ジョセフ様の言う通りガーグ伯爵がこの事件の犯人みたいです…」
「そうか、あの悪人面したおっさんが犯人だったか…」
あとはガーグ伯爵が裏切った動機を探るだけであり、ジョセフはリサに心を読んでもらおうとも考えていたがリサの顔色を伺うとどうやら大量の冷や汗をかいており少し青ざめていたためこれ以上婚約者でもあるリサに無理をさせないようにしようと思っていた。ジョセフ達はこれを何とか自力で考えるしかないなと思っていた。
「陛下、この件に関してですが陛下はどうお考えになられるおつもりで?」
「貴様、若造の分際で陛下に気軽に話しかけるでないぞ!」
「ガーグ伯爵、彼は余に質問をしているのだ」
「しかし陛下…もしかしたらではありますがこの若造が陛下に魔人族の特殊な毒を盛ったのではないのでしょうか?」
(ビンゴだ、今ガーグ伯爵は魔人族の特殊な毒と言ったね。王様は一言もそんなことを言った覚えはないのにな)ジョセフは内心形勢逆転するチャンスが転がり込んだと思った。
「そんな、言いがかりです!そもそも私が陛下に…」
「うるさい!お前の妻は亜人だというではないか!貴様の妻が魔人族と内通して毒入りのワインを陛下に飲ませたに違いない!」
ガーグは必要以上に若い男に罪を擦り付けようとしていたのだ。
「つまらん茶番はそれぐらいにしておけハゲヤロー」
「何だ貴様は!どこの馬の骨とも知らん奴がこのわしにたてつくつもりか?」
「お前が魔人族を使って王様を暗殺しようとした犯人であることは分かっている」
「証拠はあるのか?証拠は?」
ガーグが冷や汗をかきながらジョセフにそう言うためリサに証言を言ってもらうようにした。
「お父様に特殊な毒を盛って殺そうとしたことは私が心を読みました…」
「なっ、そんな馬鹿な!?心を読むだと?魔法対策はしているはずだぞ!」
「私の心を読む能力は魔法ではありません!だからあなたがどんなに魔法対策をしていても私には通用しません!」
「くそ!こんなところで捕まって…」
「ウリィヤァァァ!」
ジョセフはガーグの顔面に重いパンチを一発入れ、床へと倒れ込んだ。
「安心しろ、簡単には殺さん。お前には色々聞かなければいけないことがあるからな」
「何が安心しろだ、どうせそういってワシを殺すつもりなんだろ?」
「今から俺が質問することに答えてもらう、お前は王様を殺して何がしたかったんだ?」
「誰がそんなことを、ぐぅぬぬ…」
ガーグ伯爵は急に蹲りながら悶え苦しんでいた。小声で『エレクトリックショック』を発動させようと試しに一発ぶん殴ったけど成功したようだな。軽い麻痺症状に陥ったがすぐに症状は落ち着くだろう。
「もう一度言う、王様を殺した後何がしたかった?次はもだえ苦しむだけじゃすまないぞ?」
「分かった、ちゃんと話すからわしを殺さないでほしい。魔人族と手を組んだのは事実だ。奴らは王を殺せば領地の一つはくれてやると約束してくれた。」
「あなたは…領地が欲しいがためにお父様を…汚らわしい!」
リサはまたもや涙を流しながらガーグを汚物を見るかのような目で睨みつけていた。
「ガーグ伯爵を牢へ…」
王様は目を瞑りながらそう言い、ガーグはそのまま近衛兵に引っ張られ牢屋へと連れていかれた。
「お父様?」
「まさかあの男が魔人族と手を組んでいたとは…これは余の失態だ…」
王様は顔を俯かせながら罪悪感すら感じていた。
「王様、あなたのせいではありません。あの男の過去に何があったのかは知りませんが他の男に罪を擦り付けようとした奴にどのみち未来などありません」
「ジョセフ、流石はリサが婚約者に選んだだけのことはある。君がいなければ余は今頃死んでいただろう。君は余の…この国の救世主になるためにやって来たのかもしれんな」
王様はジョセフに頭を下げながら感謝の言葉を述べていた。
取り敢えず佐藤夏樹に説明をし終えると長話だったからなのか溜め息を吐きながら茫然としていた。




