2-14.ゲームの練習
フリードリヒ様とリーゼロッテ様、エレオノーレ様、そしてパーティの噂を纏めると、ヴィルヘルミーネ様の私的な部分が見えてきた。
ヴィルヘルミーネ・ホーエンローエ(24)
幼い頃から武術や剣術などに長け、軍人や武人のような生活をしてきた。歳の離れた妹(16)は宮廷学校に通う一般的な貴族令嬢であり、ヴィルヘルミーネが特殊である。
21歳の時に結婚。結婚してからも日々鍛錬し、軍の指揮官としても活躍する文武両道。
酒と賭けのあるカードゲームが好き。パイプの愛煙家でもある。
噂によると、ホーエンローエの家臣の貴族が経営する酒場にも出入りし、賭博などにも手を出しているらしい。
そのような噂から、「ちょいワルなところが良い」「危険な香りがするところにときめく」などというご令嬢が多い。
「すごい方ね……」
軍人の男性とほとんど同様の生活をしているよう。そういえば、五大公爵会談でワインを飲んでいたわ。パイプもやるのね……
貴族がサロンなど小規模の集まりでカードゲームをする事はよくある。その中でこっそり賭けが行われることもあるらしい。
特に男性に多いが、一部の女性もするのだとか。リーゼロッテ様もたまに仲の良いご夫人とするようだ。エレオノーレ様はその話を聞いてびっくりしていたので、知りもしなかったようだった。変に興味を持ったので、忘れるように言ったけれど。
そういう私も、お父様に禁止されていたから賭け事はしたことがない。ゲームはルルとよくやっていたけれど、カードゲームもそこまで詳しくない。
一緒にカードゲームをやるくらいならヴィルヘルミーネ様と楽しめるかもしれない。
最悪、ちょっと賭けをするくらいは覚悟しておこう。
ということで、ルルに会ってカードゲームについて教えてもらうことにした。
ルルは結婚して近所(馬車で2〜3時間のところ)に引っ越してきたので、すぐ会えるようになった。
結婚式もフリードリヒ様と参列したし、家族ぐるみで仲良しだ。
「エミ〜!また遊びに来たの?今暇なの?」
相変わらずの言葉選びのルル。辺境伯の夫人として大丈夫なのか少し不安になるが、社交に参加する機会は少ないようだし、彼女も成長しているらしい。私相手だから気が抜けたのだろう。そうだったら嬉しい。
「“遊びに来てくださったのですか?“でしょう」
マグノリアの胃痛は耐えないようだ。
「突然ごめんなさい。ダメだったら帰るのだけれど……」
「えー!帰らないで!あたし結構暇なの!」
「そう?それならカードゲームの練習に付き合ってくれない?」
「サロンで今度やるの?いいよ!何が良い〜?とりあえずマグノリア全部持って来て!従者さん達は客間にお茶お願いね!コンフィ(砂糖漬けの果物)!」
可愛らしいルルに従者達もにこやかだ。
「従者は男性が多いのね」
「うん。あたしのお家って攻められることが多いでしょ?だから屋敷には男性の従者が多いの。みんなちゃんと訓練してるんだよ、すごいよねー。
ここも私が襲われるんじゃないかって心配な旦那様が、男性の従者をたくさん送ってくれたの。心配し過ぎだよね。こんな街に近いところなら男の人ばっかりじゃなくても良いと思うんだけど」
しばらくしてカードゲームが持ってこられた。専用の台がないとできないものもある。
「賭け事はしたことある?」
「うん、あるよ」
あっさりと言うルル。意外と不良だったのね。
「男兄弟が多いとそういうのもやるよ〜。旦那様も、私がゲーム好きと聞いて親近感湧いたらしいからね」
ルルは学校のチェス大会やカードゲーム大会で入賞の常連だ。名前が知られていてもおかしくない。暇があれば今も旦那様や従者と延々とやっているらしく、昔から付き合わされているマグノリアも強いのだとか。
頭は悪くないのに、ゲームのやりすぎで勉強を疎かにしているから落第ギリギリだったのよね。
「手加減してね、ルル」
「もちろんだよ〜エミは私より弱いもんね。本気出したら試合にならない!」
「ルルには一度も勝てた試しがないわ」
「賭けの練習もする?」
「そうするわ。やるかもしれないから」
コンフィとお茶でゲームの練習をする。
「大公様はお忙しいの?」
「うん。ディナーに来ないこともしばしばよ」
「じゃぁ一緒にゲームの練習はできないね。賭け事も」
賭け事か……男性ならよくするから経験あるのかな。以前なら想像つかなかったけれど、最近のフリードリヒ様の人間らしいところを見るとある得るのかも。どんな感じでやるのかな。結構悪い顔してたりして。それも見てみたいなぁ。
「ちょっとエミ!集中して!大公様が好きなのは分かるけど」
「うん、好き……」
「え?!エミなんか今の好きって前のと違う気がする!」
「……え?」
カードを選ぶ手が止まる。
「ねぇ、結婚して思うけど、大公様に本当に恋愛感情ないの?」
「……」
今までは、フリードリヒ様に恋愛感情を抱くなど恐れ多いと思っていた。けれども、今のフリードリヒ様に恐れ多いという感情はあまりない。
愛おしいとか、好きとか……
「あれ?」
私の中の認識がズレ始める。推しってこんな感じだったっけ?
驚いて照れた顔も、少しだらしないところも好きなのって、ファンだから?
こんなにもお役に立ちたいのは、助けてもらった感謝だけ?
「あれあれ?エミ。手が止まってるよ〜」
「揶揄わないで!」
次回準備をしていざホーエンローエへ!
ルルの夫の名前を ゲオルク・ファルケンシュタイン に変えました。
それに伴って結婚後のルルの名前は ルル・ファルケンシュタインとなっています。




