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14.パーティ再び ①

大公夫人として今度こそパーティで上手く振る舞わなければと悩むエミリアです。

マリー様が秘策?を提案します。

 私はフリードリヒ様が仕事をしている新棟を飛び出した後、庭に出て絵を描き始めた。

 しかし、うまく描こうとすればするほどどうしたら良いか分からなくなった。


「そもそも私は絵が上手くないのに、なんでフリードリヒ様は私の描いた絵を私室に飾っているの?!」

 数日絵を描き続けたが納得いくものはできず、私はフリードリヒ様に直接聞く事にした。

 

「エミリアの好きなように描いていいよ」

(好きなようにが一番難しいんです!!!)

「なんか、モチーフだとか、ありませんか…?」

「じゃぁ…草木とか花とかかな」


 そう言われて描き始めた矢先だった。

 またまたパーティへ出席しなければならなくなった。


 今度は大規模なパーティだ。これといった目的もなく、年に数度行われる様々な爵位の貴族を呼ぶ交流会のようなものだった。

 フリードリヒ様は引っ張りだこになるだろう。

私1人で大公夫人としてちゃんとできるようにしなければ!


「リカ、またお願い。何とか他の貴族の方々とお話しできるように」

「今度のパーティはエミリア様より下の爵位の方しかおりません。これといった目的もありませんから、舐めた態度で良いのでは?」

「ダメよ!学友がたくさんいるの!」

 私は学友に馬鹿にされまくっている。大公夫人になっても馬鹿にされたら、フリードリヒ様の妻として恥ずかしい。

 何とか、馬鹿にされないようにしなければ!


 ということで、私は今までの汚名を返上すべく前回より懸命に取り組んだ。

 リカも前回より出来が良くなったと言ってくれた。


 そう喜んでいた矢先

「奥様、依頼されていた出席者リストです」


 そのリストに愕然とした。私のことを馬鹿にしていた令嬢ばかりがいたからである。

(私の授業ノートを勝手に持って行って写した子、空いている前の席に無理やり座れと言ってきた子。かわいい髪飾りをつけていたら何だかんだ言って取って行った子…会話中も馬鹿にしてきた子ばかり…)


『エミ、私の代わりにやってよ!友達でしょ?』

『あ、これエミのだったの?ごめーん、汚しちゃった!』


 馬鹿にした笑い声が聞こえるようだ。


 だが、そんなもの慣れているので今更いい。

 この子達より偉そうにしなければならない方が問題だ。

 ヘラヘラと謝っている方がマシなくらい。

 でも、何とかしなくては…

「エミリア様、マリーメイド長にご相談なさっては?」


 *


 私はメイド長室までリカに送ってもらい、マリー様と対面した。

「どうかなさいましたか?奥様」

「次のパーティなのですけど、参加する方は学友で私を馬鹿にしてきた子ばかりなんです。どうしたら公爵家の妻として堂々と振る舞えるか、分からないのです……」

 マリー様は頬に手を当て「まぁ」と言った。


「良いのではありませんか?馬鹿にされたままで」


「……へ?」


「それが奥様らしさです」


 それが私らしさ?そうかもしれないけど、公爵家の妻になった以上そんなもの捨てなければ…!

「そ、そんな!ダメです!フリードリヒ様に恥をかかせてしまいます!」

「そんなこと旦那様はお気になさならいかと」

「えっ?!でも……」

 そう言うと、マリー様はニコリ……いやニヤリと笑った。


「私、奥様の得意なことや長所を考えました」


「は、はぁ…そんなところありますか?」

「奥様、以前貴族の情報をまとめたノートを見せてくださいましたね」

「はい…」

「とても多くの情報が記載されていました。普通、貴族同士は警戒するので、安易に話さない内容もございます。

 ですが、かなりプライベートなことも書かれていました」

 何が言いたいのかわからず、私は不思議な顔をしてしまう。


「奥様が軽んじられ警戒すべき相手ではないからこそ、きっと皆さん話してしまうのだと思います。

 そして恐らく奥様は聞き上手なのです。ご機嫌を伺うように良い反応をされるのでしょう」


 今度は明確にマリー様はニヤリとした。


「これを使いましょう。下手に出るのです。相手を気持ち良くさせて、色々と情報を引き出しましょう。

 幸い奥様のキャラクターは変わっておりません。公爵家の妻となった今も気が弱くお優しいまま。あえて付け込ませましょう」

 まさかそんな発想の転換があるとは!尊敬の眼差しでマリー様を見つめた。


「ただ、一つだけ約束して欲しい事がございます」


「な、何でしょうか…?」

「公爵家の力をむやみやたらと利用するお願いは、やんわりとお断り下さい」

「できるでしょうか…」

「できないことは、どうせ旦那様はお断わりになります。旦那様にお断りさせる一手間をなくすと思って下さい」

「!」


 そうか。私自身は馬鹿にされても良い。

 でも、お忙しいフリードリヒ様のお手を煩わせるのはダメだ。

「特に、下級貴族の依頼は聞いてはいけません。依頼を聞くのは伯爵家以上、という事にしましょう」

 まずは判断が難しいでしょうから、とマリー様は言った。


「少しは気が楽になられましたか?」

「は、はいっ!ありがとうございますマリー様!」


 あ。

 マリー様と言ってしまった!

 メイドを様付けで読んでしまった!!


 はっと口元に手をやる。

「様はいりませんよ。奥様」

「し、失礼しました。ですけど、マリーはとても威厳があって、品が良くて、ついそう呼びたくなってしまうんです。

 他のメイドや旦那様も一目置いているように思いますし…」

「奥様、私は…」

 そう言いかけて、マリー様は口を閉じた。

「お褒め頂き、光栄でございます」

何事も一歩ずつ。

エミリアのパーティでの目標は、"難しい事依頼は断る事"になりました。

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