第6話 中二病の神様ちゃん?
『賽河原マツリ』
俺はその日、帰宅してからずっと画面を見つめていた。スマホにインストールされた謎のウイルスアプリ(仮)は、俺の幼馴染ともうひとり、知らない誰かのプロフィールを表示している。賽河原マツリの内容については全てが「??」表記になっているけど。
それから俺はいろいろと調べた。ウイルスアプリ、能力、個人情報、プロフィール、女の子……など物騒なサジェストで検索しまくって、たどり着いた結論がこれ。俺はギャルゲーの主人公になったらしい。ということ。
このアプリは「ドキドキメモリアル」というゲームのプレイヤーが使用する、メイン画面に酷似している。主人公の男子生徒に扮したプレイヤーは、この画面を駆使してパラメータを磨き、女の子の情報を得ながら恋を成就させる。
それを、なぜがこの俺が手に入れたというわけ。しかも攻略対象には俺の幼馴染が含まれている。あいつと恋愛とかあり得ないだろ。家族みたいなもんだし、そもそも鏡花と俺じゃ釣り合いとれない。しかも謎の少女、賽河原マツリに至っては面識すらない。
やれやれ、どうしたもんかね……。
「三太!!」
いきなり部屋のドアが開いたと思ったら鏡花がすでに横にいた。
「ちょ、ノックくらいしろよ」
「いいじゃないの。隠すものなんかないでしょー?ねえ」
近い近い。もうガキじゃないんだから湯上りの無防備な姿を俺に晒すな。
「何の用だよ」
「いや~。なんていうか。三太、モテてんのね」
「なんだ回りくどい」
「じゃあ単刀直入にいくけど。今日、女の子と一緒に帰ってたでしょ」
「今日……というか俺はいつも1人だが?」
「え~~~?うっそだ。あれ、4組の賽河原さんでしょ?」
賽河原……?プロフィールにあった名前と同じだ。
「賽河原さん、三太のちょっと後ろ歩いてさ。イメージ通り、控えめなかんじ」
うんうん、おしとやかだね。……ってそれ、ストーキングでは!?
「鏡花。教えてくれてありがとう。その人は俺の恋人でも友人でも知人でもないぞ。鏡花が見たのが幻覚か幽霊じゃなければその人は俺のストーカーだ」
「ふーん、言い訳にしては考えたわね。
……まあ、三太って誰にでも優しいし?けっこうその、顔も悪くないし?男だからって油断してると本当に刺されるから気をつけなさいよね」
鏡花はなぜか頬を染めて視線を逸らす。そんな顔で刺されるとか物騒なこと言うな。
「その……賽河原さんとやらは鏡花の知り合いか?」
「話したことないわ。美人だって話題になってたからこの前4組に見に行ったのよね。逆に三太、知らなかったの?」
知らなかった。それにしてもつくづく恐ろしいな、こいつのアンテナと行動力は。
「あ、そうそう。賽河原さんって美人だけど、なんかちょっと変わってるのよね。悪い人じゃないんだけどね。何考えてるか分かんないっていうか」
その翌日、俺は賽河原マツリの所属する1年4組に突撃して彼女の素性を暴く――なんてことはできるはずもなく、下校する彼女の後ろをつけていた。名付けて逆ストーカー作戦である。
賽河原マツリは噂の通りクール系の美女で、ツインテールがとても似合っている。すらっと伸びた背筋は微動だにせず、人体工学上最も効率的な動きがコレですと言われて信じるくらいの完璧な歩き姿だ。
ひたすら彼女の後ろ姿を眺めながら歩いているが、どこかで声をかけなきゃな……いやさすがに怪しすぎるんだけど。ただ尾行するだけじゃ何も分からないし。
細い路地に入る。この道の突き当りには神社がある。確か、もとは鏡花の祖父母が管理していたが、後継ぎがいなくなり手放すことになった神社。
まあ……そんなのは偶然か。
「何か用」
ギャー!振り返った!
しまった。いろいろ考えながら歩いてたら隠れるの忘れてた。
「あの、い、いや、この神社にちょっとお参りを」
「来栖三太」
「はい!……って、俺の名前知ってるんですか」
ええええ何何怖い怖い怖い。賽河原マツリは無言で俺の目をただただ見つめてくる。これってもしかして彼女なりに、しまった~ヤベ~、とか思ってる顔なんだろうか。だって俺のことストーキングしてたくらいだし。俺の名前知っててもおかしくないし、それを隠そうとするのも自然。
「あなたのことは、よく知っている」
上回ってきた!!
「俺たちクラス違うし……話したことないですよね」
「それは、部分的にそうと言えるしそうでないとも言える。
どちらにせよ、いずれ分かること」
アキネーター?意味深だけどまったく何言ってるか分からない。おそらく賽河原マツリは中二病をこじらせて、高校生の今時期まで引きずってしまっているのだろう。そんな子に好かれてしまっているとは。
「私は人々の思念が具現化させた存在。つまり神様。あなたが理解しやすい概念に例えると、有機アンドロイドやヒューマノイドインターフェースにも近い」
かなり重症っぽいけど、どうしよう。




