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第13話 リンク

初デートでお泊りとは積極的な神様だな、なんて思いながら緊張を紛らわせてマツリの家までやってきた。マツリはツインテを左手でくるくるもてあそび、右手で俺の袖を掴んでいた。手を握ればいいのに。俺もこういうときエスコートできないのが恥ずい。


「今宮鏡花のことが気になる?」

「まあ、厄介なことしてくれなきゃ問題ないな」

「そう」


上がって、と言われて靴を脱ぐ。去年初めてマツリに会って、いろいろと伝えられた時には家をじっくり見る余裕なんてなかったけど、今日はじっくり観察できる。不自然なくらい片付いていて、清潔で、無機質な部屋。まあ人間じゃないしな……。


それからは、マツリが作ってくれたオムライスを一緒に食べて、読書して過ごした。ちなみに今のアプデ状況だと、俺は全パラメータがカンストしていて、所属は文芸部。結局この部活でマツリと出会うルートに入ってしまい、今こうなっている。


畳の部屋、ちゃぶ台、薄い座布団。なんかむずむずする。対角線上に座ったマツリと、ちゃぶ台の下で足が触れ合ったり。なんせ相手が無口なので俺がなんとかするしかない。男気を見せなければ。


「マツリ」

「何」

「チューしていい?」


マツリが吹き出した。この人が笑ってるところ、初めて見る気がする。神様にも笑いのツボがあったとは。


「なんだよ」

「あなたは非効率的な行動ばかりとるから面白い。こうすればいいだけ」


マツリに唇を奪われた。なるほど。神様界隈では非合理とか非効率とか、そういう人間臭い行動がウケるんだな。よくわかんないけどなんか理解した。あとときめいた。


それから俺たちは、交代で風呂に入った。髪を下ろしてパジャマ姿のマツリは新鮮で、かなり心掴まれるものがある。そんな彼女を見ながら今さら、俺、この子のこと好きになっちゃったんだな、と思う。神様で2万何千年とか生きてるのに?俺、正気か?見た目人間だけど服の下とかどうなってるのかめっちゃ気になる。見たい。


なんか冷静じゃなくなってきたので俺はいったんトイレに行って、それで寝室に戻ってきた。戻ってきたら、マツリが全裸になっていた。全裸で正座していた。


ん?


「ちょ」

「好きにしていい」

「えっと」


時刻は23時だった。俺は、言われた通り好きにした。ああこれ世界が終わっちゃうかもなあ、とか思ったけど我慢できなかった。




翌早朝、俺は心ここにあらずで一旦自宅に戻った。気分を落ち着けたかったのと、取返しのつかない世界改変が起こっていないか確かめるのが目的。マツリに一言声かける間もなく出てきちゃったって俺相当動揺してるな。寝顔、かわいかったな。


俺と鏡花の部屋がある2階にこそこそ上がって、いったん俺の部屋に入る。そこはまだ俺の部屋だった。存在ごと今宮家から消されるかと思って焦った。次に鏡花の部屋を覗く……と、これまた異変なし。鏡花がいつも通りすごい寝相で寝てる。


ん、なんか寝言言ってる?


「三太ぁ……」

「へへ、しあわせ……」


こんな日に限って俺の夢を見るなよ。今まさに世界を大改造してるとこなのか?

俺は寝言と夢の内容が気になって鏡花に近づいた。そしたら動いた拍子に足元のペットボトルを倒して、カコンカコンと音が鳴る。やべ。


鏡花がこっちに寝返りをうつ。半分目開いてる?起こした?


「三太……?」

「鏡花すごいえっちな夢見たぁ」


いつもの鏡花とはかなり様子が違う。とうとう自分のキャラまで改変してしまったのかこいつは。そう思ってちょっと会話してみることにした。


「どんな夢だ」

「えとねえ、もー、とにかくえっちなの!三太と一緒のお布団で、新婚さんみたいで~、鏡花のおっぱい見て三太のあそこが」

「分かった、もう大丈夫」


偶然にしては都合が良すぎる内容の夢と、それを堂々と話す鏡花の口ぶりから俺は赤面せずにいられない。何が起こっているんだ。間違っても下ネタなんか言わない堅物の鏡花が、口からよだれ垂らしながらあへあへしている。単に思春期と片付けていいものか……。


俺がいろいろ考えているうちに鏡花は眠ってしまったらしい。また寝息を立て始めている。なんか不安だったので、俺は鏡花の部屋で彼女が起きてくるのを待っていた。この人格にアップデートされてるとしたら、先が思いやられる。


外が明るくなってきて、鳥が鳴いて、目覚まし時計が鳴った。鏡花がもぞもぞと起きてきて、視界の端に俺を捉える。


「朝帰り?意味わかんないんだけど……てかなんで私の部屋にいるの」


あくび混じりだけど、これは明らかにいつもの鏡花だった。


「友達の家に泊まるって連絡したろ、それで、お前の顔見てから登校したくなったっていうか……」

「はあ?」


確かに俺はおかしなことを言っている。だけど、いつも通りの鏡花を見てとてつもなく安心している自分がいた。どうしてだろう、童貞を卒業した日に幼馴染の顔が見たくなるなんて。俺ってなんかよろしくない性癖を持ってるんだろうか。

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