第14話 修羅場
俺は、神様で女子高生の賽河原マツリという女の子と交際中の高校2年生。幼馴染の鏡花は気に食わないことがあるとすぐ世界をアップデートしてしまう悪癖があって、そいつの暴走に怯えながら生活している。というのが俺の現在のおさらいである。
そして先日、俺は童貞を卒業した。もちろん彼女のマツリと。それで俺は、鏡花の機嫌を損ねたんじゃないかと思って世界の崩壊を視野に入れていた。しかし、俺が想像した最悪の事態はどうやら免れたみたい。世界も俺も、童貞卒業前と今でまるで同じだ。
マツリと一緒に登下校しても、放課後を過ごしても、たまに彼女の家に泊まっても、鏡花は嫌味すら言うものの大人しくしている。彼女は、願うという行為だけで世界を変えてしまうという恐ろしい能力を持っているが、俺がマツリと交際を始めてから一度も能力を発動させていない。それが何よりの謎で、すごい不気味。
「って思うんだけど、どうかな」
「思考盗聴を応用するとは、やりますね」
「えへへ」
マツリの元上司のナギは、片思いの相手を人間なんかに寝取られたことでかなり頭にきてるみたい。俺より何万年も長く生きてるのに恋愛に関しては成長が無いって考えるとなんか辛い。彼からすれば俺なんて精細胞くらい年下に見えるだろうに。
「平和ならいいじゃないですか。鏡花さんも他に好きな人ができたのでは?」
「え、そんなのあり得る?俺って鏡花が作り出したセクサロイドみたいなもんなんでしょ?それが他の男に気移りするとか許せないんだけど」
「生みの親を無視して神様と寝るような男にそれを言う権利は無いでしょう」
「親だから、鏡花とは恋愛する気になれないっての」
んー、もやもやする。鏡花は幼馴染で兄弟同然だけど、俺という存在の創造主だからな。神様界ではそういうことになってるらしい。彼女が「幼馴染ほしい」と思ったから、俺がここにいる。
それを聞いた日から、てっきり鏡花は俺にゾッコンで、彼女ができようものなら泣いてわめいて嫉妬すると思っていた。それがこの有様。なんとなく俺に好意があるような雰囲気を醸し出しているが、マツリとくっつく分には異議ないらしい。どういうこと。
「僕はね、あなたが鏡花さんと相思相愛になればいいと思うんですよ」
「まあ、お前目線だとそうだろうな。マツリと付き合いたいわけだし」
「正直、マツリの中ってどんな感触ですか?」
「えっお前そんなこと聞くキャラだっけ」
童貞をうん万年こじらせると、容赦なくセクハラ発言できるようになるらしい。というか、エロいとか下品とかそういう概念を持ち合わせていないって感じか。俺が正直に答えてあげたら、ナギは切なそうに「そうなんですね」と言った。
最近の俺の悩みとして、ナギに打ち明けていないことが1つある。俺も脳内で処理しきれていないので、これを誰かに話すってことをまだしたくないのかもしれない。
それは、鏡花が毎晩夜這いしてくるようになったってことだ。俺たちはいつも通り一緒に食卓を囲んで、順番に風呂に入って、それぞれの自室で宿題やらをこなした後、寝入る。そこまではいつも通りだ。「うざいわよ」「きもいわよ」などと、なじられることもしばしば。
それが、夜になると毎回これだ。
「三太ぁ、さむいから来ちゃった」
「お布団入るよ?」
「ここ、おっきくなってる……」
股間を容赦なく触ってくるし、ズボンもパンツも脱がせてくるし、鏡花も脱ぐし。それで、最後までやんないと気が済まないらしい。これが毎晩だ。
俺が絶頂に達すると、鏡花は満足そうに俺の布団で眠って、朝までには自室に戻っている。それで、昨晩のことは覚えていないというのがセオリー。
最初はびっくりしたし止めたけど、夜這いモードの鏡花は正直かわいすぎるので許してほしい。普段のあいつからかわいくない要素を全て排除した生物があれなのだ。
それで今晩も、鏡花は俺の布団にもぐりこんできた。彼女は自主的にパジャマの前ボタンを外して俺の手を胸のところに持ってくる。マツリのつるぺたも悪くないけど、やっぱ鏡花のは別格……とか思ったらばち当たる。でも巨乳に罪はない。
彼女は俺にキスした後、するすると股間まで下りてくる。それはもう嬉しそうに頬張るので、俺も思わず声が出る。
あーこれやばいな、出そう。
ちょっと耐えよう。
そう思って目線を鏡花からそらしたら、窓の外にマツリが浮遊していた。これは大変な地獄絵図だぞ。彼女が窓の外から幼馴染に抜かれる俺を見ている。マツリの表情は暗くてよく見えなかったが、悲しいとか怒ってるとかではなさそう。
もう窓の外でマツリが見てるとかそういうことに意識が向かなくて、俺は鏡花の口内で果てた。直後、窓に視線をやるとそこに人影は無かった。めっちゃホラー。
鏡花は俺のをごっくんしたあと、ふにゃ~と笑って寝落ちした。
もう、なんかよくわかんなくなってきた。




