第24話:天空の城と、僕の高所恐怖症(※空
砂漠で手に入れた『灼熱のオーブ』をパパが取り込むと、彼の背中の翼がさらに巨大になり、周囲の重力を操る力に目覚めた。
行き先は、雲の遥か上――伝説の『天空城』。
「……あ、あの、パパ。わざわざ浮かび上がらなくても、下から眺めるだけで十分じゃないかな?」
僕は震える足で、パパが展開した重力バリアの端っこを必死に掴んでいた。
「何を仰いますか主殿。次の『疾風のオーブ』は、あの雲を突き抜けた先にあります。さあ、私にしっかりとお掴まりください。……おや、顔色が紙のように白いですが、もしや『高所』がお苦手で?」
「……はぁ。苦手っていうか、人間は地面を踏んで生きるべきだと思うんだ……」
僕は頭を抱えて、遥か下に豆粒のように見える砂漠を直視しないように目を閉じた。
「だらしないわねカンちゃん! ほら、空からの景色は最高よ! あの雲、綿菓子みたいで美味しそうじゃない!」
アビィは空中を自由自在に駆け回り、僕の周りをグルグルと旋回している。その風圧だけで、僕の心臓は止まりそうだ。
「主殿、ご安心を。もし主殿が落下されたとしても、私が音速で追いかけ、地上に激突する0.1秒前に優雅にキャッチしてみせましょう」
「……その0.1秒の間に、僕はショックで別の世界に行っちゃうよ」
ようやく辿り着いた天空城の入り口。そこは、常に暴風が吹き荒れる『試練の回廊』だった。一歩でも足を踏み外せば、文字通り雲の下へ真っ逆さまだ。
「止まれ! 軟弱な地上の民よ! この風の回廊を、一歩も退かずに渡りきってみせよ!」
空の衛兵たちが、巨大な扇でさらなる強風を送り込んでくる。
「……っ、もう限界だ。風がどうとか、試練がどうとか……とにかく、揺れるのを止めてくれ……!!」
僕は恐怖とストレスが頂点に達し、手すり(パパの腕)を掴んだまま、空に向かって……ではなく、吹き荒れる暴風そのものを「鎮める」ために、魂のため息を吐き出した。
「『どん底ため息砲・凪』!!」
スゥゥゥゥゥゥ……ッ!!
僕の吐息が放たれた瞬間、天空城を包んでいた荒れ狂う嵐が、嘘のようにピタッと止まった。
あまりの静寂に、風を送っていた衛兵たちも「え、仕事なくなった……?」と呆然と立ち尽くしている。
「……流石は主殿。荒ぶる大気をその身の『絶望』で黙らせるとは。おかげで空気が固定され、まるでコンクリートの上を歩いているかのような安定感ですな」
「……はぁ。やっと、足が震えなくなった。……さあ、さっさとオーブを取って、一刻も早く地面に帰ろう……」
僕は、無風状態になった回廊を、這うような低姿勢のまま(まだ怖いので)進み、中央に鎮座する『疾風のオーブ』をひったくるように回収するのだった。




