第23話:砂漠のオアシスと、僕の蜃気楼(※水着審査はいりません)
精霊の森を抜けた先に広がっていたのは、見渡す限りの黄金の砂漠だった。
三つ目の核――『灼熱のオーブ』が眠る場所。……だが、そこへ至る道には、巨大なスフィンクスのような門番が居座っていた。
「止まれ、旅人よ。この先の聖域へ進みたければ、汝の『真実の姿』をさらけ出すのだ」
「……真実の姿? 僕はただの無能な元宮廷魔導師だけど……」
僕が正直に答えると、門番は首を横に振った。
「言葉ではない。この『審判の泉』にて、汝の肉体と魂を包み隠さず開放せよ! ――さあ、水着になれ!」
「……は?」
門番が前足を叩くと、周囲に豪華なパラソルと、どこから持ってきたのか「特設ランウェイ」が出現した。
「いいじゃない、カンちゃん! アタシ、魔界の最新トレンドの水着、仕込んでおいたのよ!」
アビィがパチンと指を鳴らす。一瞬で、彼女の装備がトゲトゲした黒いビキニ(魔界風)に変わる。
「主殿、ご安心を。私も主殿の評価を上げるべく、執事服を脱ぎ捨てて参戦いたしましょう。……これぞ、私の真の姿――『マッスル執事モード』ですな」
パパまでもが、燕尾服を脱ぎ捨てて黒い競泳パンツ一丁になった。……なぜか筋肉が異常にパンプアップし、全身がオイルを塗ったようにテカテカと輝いている。
「……はぁ。もう、帰りたい。砂漠の熱さより、二人の格好の方が耐えられないよ……」
僕は頭を抱えて深く、深い、絶望のため息をついた。
門番のスフィンクスは「ほう、魔神の肉体美、実に見事! だが、カノンよ。汝の『隠された熱量』を見せぬ限り、扉は開かぬぞ!」と、さらに煽ってくる。
周囲の気温は50度を超え、蜃気楼で視界が歪む。羞恥心と熱気で、僕の意識は朦朧としてきた。
「……ふぅぅぅぅぅぅ…………っ!!」
僕は羞恥心をすべて投げ出し、この「ふざけた空間」を丸ごと冷やすつもりで、渾身のため息を吐き出した。
「『どん底ため息砲・氷点下』!!」
パリパリパリッ…………!!
僕の吐息が砂漠に放たれると、極寒の冷気が爆発的に広がった。
熱い砂は一瞬で凍りつき、スフィンクスの足元は氷漬けに。さらには、テカテカに光っていたパパの筋肉も、寒さでシュンと萎んでしまった。
「な、なんだこの『心まで凍りつくような虚しさ』は……! 汝の真実の姿、それは『絶対的な冷笑』であったか……! 合格だ、通るが良い!」
スフィンクスがガタガタと震えながら門を開けた。
「……はぁ。冷笑じゃないよ。ただの呆れだよ。……パパ、早く服を着て。見てるだけで風邪引きそうだよ……」
僕は、凍りついたランウェイをスタスタと歩き、門の奥に輝く『灼熱のオーブ』を手中に収めるのだった。




