第17話「皇女が村を訪れた理由」
「それではお聞かせ願えますか? なぜ、この村を訪れたのか。その経緯を」
「それは――」
「聞いてくださいますか⁉ 私はこの地に聖女がいると聞いてやってきたのです!」
「ほう……聖女ですか」
ダリアスがあらためてここまで来るに至った理由を訊ねた。そこでメイドが口を開こうとしたところを遮り、メイスは興奮した面持ちで声を上げる。
そんな様子を興味深く見ながら頷き、その先を促す。
「そう……そして先ほどの輩に馬車が襲撃され、運転していたメイドのリディヤも怪我を負ってしまい命からがら、この村へ逃げ込んだのです」
「(えっ? 急に落ち着いた⁉)」
「それは大変でしたね……」
「しかし! そこに救世主が、いえ! 聖女さまが現れたのです!」
「(かと思ったらまたヒートアップした⁉)」
促されたメイスは語るうちその言葉は熱を帯びていく。
「聖女がいるという噂自体は聞き及んでいましたが、まさかわたくしたちを魔族の救世主でもあったとは思いませんでした! ガルナ、今一度お礼を申し上げます。わたくしたちを救ってくださりありがとうございます!」
「そ、そんな! 顔を上げてください! 私はあのときやれることをやっただけですから!」
「たとえそうだとしても、わたくしたちがあなたに──あなたたちに救われたことは事実ですわ」
「そうです。ガルナさま。どうか姫さまの気持ちを受け取ってあげてください。もちろん私もガルナさまに感謝しております」
先ほどまでの雰囲気から一転、しおらしくなった姿を見て、あらためてガルナの中で人を救ったという実感が湧いてくる。
ガルナはそんなふたりの想いを肯定し静かに頷いた。
「わかりました。その気持ち、頂戴いたします」
「ありがとうございます。ガルナ。嬉しいですわ」
メイスが微笑むとガルナも釣られるように微笑みを返した。
そんな様子にその場の雰囲気は和やかなムードが流れた。
「さあそろそろ行くか」
「うん、わかった」
「ダリアス、あなたのお料理、美味しかったですわ」
「ありがとうございます。皇女さまの普段召し上がっておられる食事に比べれば粗末のものに過ぎませんが」
「いいえ。そんなことはありませんわ。あなたの作ったお料理にはたしかに温かみがありましたもの」
「大変恐縮でございます」
そしてしばらくの時間が経過し、一行は村を出てから王都に向かうことになった。
この村で起きた出来事を国王に報告しなくてはならない。もちろん各々の用事はそれだけではないが。
「まあ! 姫さまったらそれではまるで我がアクアレイン皇国の食事が温かみがないみたいではありませんか!」
「そのような意図はなかったのだけれど、そのように聞こえたかしら?」
「聞ーこーえーまーしーたー!」
メイスとメイドのリディヤは軽口を叩く。
どうやら公の場ではない場所ではそのようなやり取りが珍しくないほどに自然にガルナとダリアスの目には映った。
「聞きたいのだけれど、この村に墓場はあるのですか?」
「えぇ、もちろん。墓場ならば、ここからそう遠くない距離にございますよ」
「そう。であるならば案内してもらってもいいかしら?」
「墓場にですか……はい、かまいませんよ」
こうして一行はメイスの頼みで村を出る前に墓場に立ち寄ることになった。




