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帝都怪異事件簿~双子の隊長と帝都の化け物達~  作者: 石動なつめ


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第十五話 朝食 上


 目が覚めた後、ホノカはしばらくはベッドで横に鳴っていたのだが、結局眠る事は出来なかったため起きる事にした。

 着替えを済ませて時計を見ると、時間はまだ四時前くらいだった。

 部屋の外へ出てみたが、他の隊員達もまだ起きていないようで桜花寮内は静まり返っている。

 ホノカは足音を立てないように気を付けながら食堂へ向かった。酷く喉が渇いていたので、水を飲もうと思ったのである。


「おはようございます」


 小さな声で挨拶をしながら食堂へ入ると台所へ向かい、適当なグラスを手に取って蛇口から水を注ぎ、一気に飲み干す。


(冷たくて美味しい……)


 ホノカは、はぁ、と息を吐いた。

 そんな事を思いながら食堂を眺めていると、ふと、壁に食事当番表が貼られている事に気が付いた。


「そう言えば桜花寮は隊員達が交代で食事を作っているんでしたっけ」


 その内ホノカ達にも割り振られるだろう。そう考えながら確認すると、今日はトウノとヒビキが担当のようだ。


(それにしても不思議ですねぇ。仲が悪くても食事は一緒に準備するなんて)


 何か理由があるのだろうかと思いながら、ホノカは今度は時計を見上げた。十人分の朝食を作るならば、もう少ししたら起床して来る頃だろう。

 ふむ、と呟いて、ホノカは冷蔵庫を開けた。中に入っている食材を見たところ、味噌汁と焼き魚辺りが今日の朝食だろうか。


「時間もあるし、作ってしまっても良いでしょうかね」


 袖をまくり、手を洗い、ホノカは朝食の準備を始めた。

 まずはお米を研ぐ。十人分を炊くのは初めてなので寮に量に少々悩むが、多ければおにぎりにでもしてお昼で利用すれば良いだろう。

 お米を炊きながらホノカは朝食の内容を頭に思い浮かべる。

 冷蔵庫にあった材料から考えると味噌汁は豆腐とワカメ、鮭の塩焼き、あとはキュウリのお漬物があったのでそれも並べよう。 


「……あと、卵焼き」


 ホノカはふと、甘い卵焼きが食べたくなった。ホノカ達の父親がよく作ってくれた料理だ。しっとりとして甘いあの卵焼きがホノカは大好きだ。ヒノカの好物でもある。うん、と頷いてホノカは冷蔵庫から卵を取り出した。

 そうしてのんびりと料理をしていると、しばらくして足音が聞こえ、食堂のドアが開いた。

 やって来たのはトウノとヒビキの二人だ。彼女達はホノカがいるのを見て目を丸くする。そんな二人にホノカは「おはようございます」と挨拶をした。


「お、おはようございます、ホノカ隊長」

「おはようございます。あの、えっと、隊長は何を……?」

「早くに目が覚めてしまったので、朝食の準備のお手伝いをと思いまして」


 そう答えると、トウノとヒビキは顔を見合わせる。それから直ぐに「自分達も!」と加わった。


「わあ! ホノカ隊長、お上手ですね!」

「ありがとうございます。うちではいつも作っていたので」


 料理をしていると手際の良さを褒められて、少し嬉しくなった。

 包丁の音をトントンと響かせながら食材を切り、鍋に入れる。くつくつとお湯が笑っている。

 それを見ながらホノカは、


「昨日は少し言い過ぎました。申し訳ありません」


 と二人に謝った。

 するとトウノとヒビキは「え?」と目を瞬く。


「知らない相手を、見たまま談ずるな。それが私達の父の、御桜ミハヤがよく言っていた言葉でした」

「いいえ、そんな! 私達こそ、すみません。御桜隊長のご家族が来てくれたんじゃないかって、嬉しくなってしまって……」

「僕達もです。……失礼な態度を取りました」


 二人は首をぶんぶんと横に振ると申し訳なさそうにそう言った。


「……やはり御桜隊長の御家族だったのですね」

「ええ」


 ヒビキの言葉にホノカは頷く。

 何か気の利いた返しが出来れば良かったのだが、特に思い浮かばなくて会話はそこで途切れてしまった。


(ヒノカなら、もっと上手くやれたのでしょうけれど)


 自分はこういうところは本当にまだまだである。

 その後も、トウノとヒビキが気を遣って話し掛けてくれたおかげで、和やかに時間は過ぎて行った。

 一品、また一品と料理が完成して行くにつれて良い香りが漂い、それにつられて隊員達が食堂へと集まり始める。

 彼らは眠そうな顔で食堂へ入って来ると、トウノやヒビキと一緒に朝食の準備をしているホノカを見て目を丸くした。


「あれ? ホノカ隊長?」

「ああ、皆さん。おはようございます」

「お、おはようございます……?」


 ホノカが挨拶をすると、きょとんとした顔でウツギが返してくれた。彼はそのまま不思議そうな顔でトウノを見た。


「えーと、トウノさん。これは一体何事で?」

「今日は私とヒビキ君が食事当番だったでしょう? でも私達より早く、ホノカ隊長が起きてらっしゃっていて」

「ちょっと目が覚めてしまって。朝食の用意は隊員で行っていると伺っていたので、お手伝いをと思いまして」

「……と言いつつ、ほとんどホノカ隊長が作ってくれたんですよ」


 ヒビキもそう言ってテーブルの上に並んだ料理に手を向けた。

 白飯に豆腐とワカメの味噌汁、鮭の塩焼きに甘い卵焼きときゅうりのお漬物だ。それを見てウツギが「うまそ……」と呟く声が聞こえてホノカは、ふふ、と微笑んだ。

 そんな話をしていると、ヒノカが元気よく「たっだいまー!」と食堂へ入って来た。


「みんな、おはよ~」

「おはようございます、ヒノカ隊長。お出かけでしたか?」

「うん、ちょっと見回りがてらに、軽く走って来たとこ。お、卵焼き! 甘い奴? 辛い奴?」

「甘い奴ですよ」


 ホノカがそう答えるとヒノカは軽く目を見張った後「そっか」と小さく呟く。それから直ぐに満面の笑顔になって「好物!」と言った。

 そうして全員が席に着くと、


「それでは皆揃ったので、食べましょうか!」


 トウノが手をポンと合わせて楽しそうにそう言った。

 そして彼女の「いただきます」の言葉に全員が続き、食べ始めたのだった。

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