第十一話 歓迎会 下
「それ! それを聞きたかったんですのよ!」
「そうだ。ただ同じ苗字だったにしては、ここへ配属されるなんて、あまりに……」
ウツギ達の質問にユリカとスギノもそう言った。他の隊員も彼女達と同じ意見のようだ。
なるほど、なるほど。そう心の中で呟きながら、ホノカは彼らの様子を探る様に少し目を細くする。
そうしてまず言葉を発したのはヒノカだった。
「そうだね、確かに御桜ミハヤ隊長と僕達は同じ苗字だ。でも、それに何か意味があるのかい?」
「意味? 意味なんて、もちろんあるに決まってますわ!」
「何故?」
返って来た言葉にホノカは短くそう聞き返す。すると、そう返されると思っていなかったのか、戸惑う声があちこちから聞こえて来た。
ホノカは小さく息を吐いてヒノカに続く。
「私達は浅葱司令の指示で、両隊の隊長を務めるために、ここへ配属されました。その事にそれ以上の意味がありますか?」
「あんた達がミハヤさんの……御桜隊長の関係者かどうかで、だいぶ違うんだよ」
アカシが手で後頭部をがしがしとかきながら言う。
「そうです、僕達にとって御桜隊長は大事な人なんです!」
「もしもお二人が関係しているなら……」
他の隊員も、そうだそうだと言葉をつづけた。
やはりそうかとホノカは思った。
ここの隊員達は初代隊長と、彼の後にやって来た新しい隊長を常に比べていた。
彼らにとっての理想は御桜ミハヤであり、それ以外は御桜ミハヤくらいの人物でなければ駄目だと自分勝手に判断していたのだ。
だから隊員達は隊長の指示を聞かない。新しい環境を受け入れられない。
理想からかけ離れて行く現状が、自分達の理想通りでなければ嫌だと言う甘ったれた考えが、彼らからやる気を奪っているのだ。
「「論外」」
だから双子は彼らの甘えをバッサリと切り捨てた。
父である御桜ミハヤを慕ってくれる気持ちはホノカ達だって嬉しい。けれど、それはただ逃げているだけで、思い通りにならないと駄々をこねている子供と同じだ。
ホノカ達は問題児だ何だと言われても、どれだけ周囲から煙たがられたとしても、それでも上を目指して戦って来た。ホノカ達からすれば、彼らの考えはあまりにも甘く、軽い。
だから双子は、希望に縋るような彼らの言葉を払いのける。
「私達の親が何者か。そんな事で人となりを知る事はできないでしょう」
「もしも僕達の親が誰かを知って、それで対応を変えると言うのなら」
ホノカとヒノカはそこで一度言葉を区切り、
「「あなた達は最低だ」」
はっきりとそう言い切った。
ヒュッと息を呑む音が聞こえる。その場にいた全員が目を見開いて双子を見ていた。ウツギやアカシ達、一部の隊員が声を出さずに「ミハヤさん」と動いたのが見えた。
食堂はシンと静まり返る。誰も微動だにしない。
――その時だ。
「よーう! 遅れちまって悪いな! いや~、予約したケーキ買ってきたんだがよ~、支払いがこれまた混んじまってて……」
食堂のドアが開いて、やたらと明るい声が響いた。
入って来たのは双子の上司であるミロクとシノブだった。二人は手にケーキが入っているらしい箱を持っている。
笑顔で入って来た二人だったが、衝動に足を踏み入れたとたんに、あまりの空気の重さに怪訝な顔になった。
「おいおい、空気がクッソ悪ィな。何だ何だ、反省会かこりゃ。歓迎会って聞いてたんだが?」
「浅葱司令!」
二人が入って来た事で、張りつめていた空気がほんの少し和らいだ。
双子が直ぐに敬礼をすると、他の隊員達も少し遅れてそれに習う。
「ああ、いいよいいよ。かたっ苦しいのはな。遅くなって悪かったな、ヒノカ、ホノカ」
「謝るところはそこじゃありませんよ、ミロクさん」
「そうだよ。シノブさんにシメられ足りない?」
「ハハハ」
双子がそれぞれツッコミを入れると、ミロクは笑って誤魔化した。
そんな気安い態度の双方に、隊員達は目を丸くする。
「……名前呼び?」
「何か仲良さそうですね?」
「俺さ、こいつらの保護者なんだよ。ああ、つっても贔屓で取り立てたんじゃねぇぞ? そこはさすがにな、俺の給料に響くからやってねぇ」
冗談めかしてそう言うと、ミロクはニヤッと笑い、
「おし、二人とも。歓迎会が終わったら、ちょいと話がある」
と言ったのだった。




