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ヴァルキリー戦記【戦闘中行方不明になっていた父親が人型戦闘兵器になっていたので、元の姿に戻す為に一緒に戦い抜く】  作者: 尾松成也
episode1 Ghost Rebellion

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第九話 「父さんと共闘する」

「とりあえず、僕はこのまま見学でいい? 起きたばかりだろうし、準備運動も必要でしょ?」

「ハッ、準備運動にすらならねぇだろ。中型相手だったら三分かからずにぶっ潰せる」


 マリウス先生が機嫌良さそうに「だろうね」と笑っている。

しかし、だ。自分の意思とは関係なく口や身体が動くのはとても気持ちが悪い。というか、どうして父さんが俺の身体で喋ったりできるのだろう。


 口調が違うから判別できるとはいえ、これが通用するのはマリウス先生だけだろうなぁ……。


 そんな事を考えていると、『悪いな、イグニス』と頭に声が響いた。


『説明は後だ。今は目の前だけ集中しろ』

「わ、わかった!」


 とりあえず、父さんの指示通りに敵を目視する。

モニター越しではなく、自分の肉眼で見ているような感覚が慣れなかったが、操縦桿だけは離さないように強く握り締めた。


『ウツワッ、サンビキッ!』


 敵が涎を撒き散らしながら、こちらに突っ込んできた。

鋭い爪をこちらに向けて突っ込んできたので、俺は躱そうとした。だが、何故か機体のコントロールが効かず、爪が当たる寸前で避ける。


「うぉっ……」


 鎖骨あたりにピリッとした痛みが走った。〝グルヴェイグ〟は俺の意思とは関係なく敵の腕を掴み、そのまま蹴飛ばして腕を肘辺りから引きちぎった。


『キィィィィィィッ!!』


 敵が金属音に似た不愉快な叫び声を上げ、肘から赤い液体がシャボン玉のようにフワッと漂う。〝グルヴェイグ〟は引きちぎった敵の腕をグシャリと潰した。そして、そのままゴミを捨てるかの如く、腕を放り投げる。


「なんだよ、これ……」


 先程までは操縦できていたのに、こうも上手くいかなくなるとは。父さんの意識が戻った事と関係があると思い、「父さん!」と声を張り上げる。


「さっきから機体の制御が効かないんだけど!?」

『あー、悪い。俺が主導権握っちまってるわ」

「はぁ!? どういう事だよ!?」

『シンプルな話さ。お前に比べて、俺の方が〝グルヴェイグ〟動かそうとする意思が強いんだ』


 意味が分からず、俺は少しイラッとしたまま黙り込んでいると、『まぁ、少し落ちついて考えてみろよ』と諭すように声をかけてきた。


『俺はさ、コイツらのせいで、ずーっと〝グルヴェイグ〟の中で寝たきりだったんだ。ストレス溜まりまくってるんだよね。グチャグチャにしてやらねぇと気が済まないんだよ』


 頭の中で静かな怒りを含んだ声音が響き、背筋に悪寒を感じる。心臓が早鐘を打ったが、俺は負けじと「つまり、ストレス解消したいって事?」と聞き返した。


『端的に言えばそうなるな』

「じゃあ、俺はどうすれば良いんだよ」

『ほんの少しだけ良いから機体のコントロールを全部俺に預けてくれ。イグニスも俺の本気の操縦、見てみたいだろ?』


 一緒に敵を倒す話はどこにいったんだよ!? とツッコミそうになったが、ヴァルキリーを操縦する者として、父さんの本気の操縦に興味が湧いた。


 きっと父さんは「どうぞ、操縦して下さい!」と言い出すと思っただろう。けれど、予想に反して俺の答えは驚くほど簡単に出た。


 今、〝グルヴェイグ〟の操縦桿を握ってるのは俺だ。

父さんじゃない。どうして、パイロットとして操縦桿を握ってない人に〝グルヴェイグ〟のコントロールを譲らなきゃいけないんだ? そんなのおかしいだろ!


「父さんの操縦は見たい。けど……」

『けど?』

「今、〝グルヴェイグ〟の操縦席に座ってるのは俺だ! 俺の手でアイツをぶっ倒したい! だから、譲りたくない!」


 はっきりと答えると、父さんは暫く黙り込んだ。そして、クツクツと声を押し殺しながら笑い、最後は一際大きな声で笑った。


『ハッハッハッ! そうかそうか、イグニスもパイロットとしてのプライドがあるもんな! いやー、こんなに頼もしく育ってくれて嬉しい限りだ!』

「お、怒ってないの?」

『全く! むしろ、息子の成長が垣間見れて嬉しいくらいさ!』


 てっきり無理やりコントロールを奪われると思っていた。

俺は目を丸くして黙り込んでいると、『あ……。でも、息子の成長を十年分見られなかった恨みは晴らしたいけどな』と笑ったので、俺は嬉しくなって口元が勝手に緩むのを感じた。


「ねぇ、父さん。一緒にアイツをボコボコにしよう」

『望むところだ。そういえば、イグニスは喧嘩慣れしてるのか?』

「ほぼ毎日、上級生に絡まれてるよ」

『お、いいねぇ! 俺も昔はよく年上に喧嘩を売られてたんだ! ちなみに喧嘩で負けた事は?』

「一度もない! 無敗完勝だ!」


 俺はスラスターを吹かし、痛みに悶えていた敵の懐に入り込んだ。敵が防御する前に拳を顎に叩き込んでやる。『アギッ……』と耳障りな短い悲鳴が漏れる。


 白い仮面のような顔が砕け入り、長い舌が露わになった。

舌先がビュンッ! と〝グルヴェイグ〟の顔に向かって飛んでくる。


『遅いな』

「うん、遅すぎ」


 物凄い速度だったと思うが、俺達の目にはスローに感じられた。真っ直ぐに飛んできた舌を掴み、根本から引っこ抜いてやる。すると、敵は喋る機能をなくしたらしく、喉だけが痙攣し、悲鳴にならない音が漏れていた。


「これで終わりだ!」


 〝グルヴェイグ〟の爪を敵に向かって振り下ろした。小規模の爆発が起こり、赤い液体が歪な滴となって、宇宙空間を漂い始める。


『やるじゃねぇか、イグニス! 〝グルヴェイグ〟をここまで使いこなすなんて、さすが俺の息子だな!』

「ハァッ……ハァッ……! 死ぬほど疲れたけどな……!」


 肩で息をしながら笑みを浮かべると、父さんが俺の頭を撫でているようなイメージが頭に浮かんだ。


『ゆっくり休んで欲しいところだが、軍の艦隊が近付いてきてる。もう暫く気を引き締めた方が良さそうだ』


 遠くから大型の艦隊がこちらに向かってくるのが見えた。

「こちら第一艦隊・ミラージュ。武器は捨て、直ちに停戦せよ。繰り返す、直ちに停戦せよ――」とこちらに呼びかけている。


 俺は一気に血の気が引き、現実に引き戻された。

〝グルヴェイグ〟を探し、父さんを探し出すという目的は果たされた。


 覚悟はしてたものの、ここからどうなるのか自分でも全く予想がつかず、身体中から冷や汗が噴き出てきた。


「ハハ……。怒られるだけで済んだら良いな……」


 俺は大型の戦艦を見つめながら、引き攣った笑みを浮かべる事しかできなかった。

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