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リンホンコード ―暁少女と鉄の男の終末歩き―  作者: 卵掛 小保下
旅する無垢人形〈ウェイストドール〉
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8話 ユゥインの見立て/モルグの気づき



 

 ロボットペットの情報を求め、他にも数人ほどのアンドロイド達とすれ違ったが結局めぼしい情報を手に入れることは出来なかった。


 そうして帰り着いたLUBANは昼間なのもあって、ネオンの明かりは落とされている。夜とは違って、少し褪せたような印象だ。

 だが無人ではなく、そこそこの賑わいがあった。複数人おり、一つのグループのようだ。

 発注していたのだろう、大きな機械を受け取ると、落とさないよう、傷つかないようにグループ全員で持ち上げて去っていった。

 先ほどまでの賑わいは一瞬にして消え、店はいつものようにがらんとしていた。

 そこでシャオはあることに気がついた。


「あ、聞くの忘れた」

「別にいいだろう。時間はいくらでもある」


 ヴィハーンはそう言い残しロボットペットを荷台から放り投げると、バイクを新たに増設した車庫へ戻しに行った。


「:( ☝・&>:(#”&@:/ &’%:@ ー!」


 言葉こそ分からないが怒っていることはなんとなく伝わるロボットペットを転がしながら、シャオは先に店へ入ることにした。


 ――カランコロン

 

「イン、ただいま! それとね、ボール君。ここはインのお店だよ。インはね、修理屋だけど直すだけじゃなくて、何でも作れるんだよ!」

「ぴぴ……。ぷ」


 シャオはじゃーん、と自慢げに腕を広げ、店をアピールする。

 ロボットペットはそれに返事をするように何か鳴いていたが、やはり何と言っているのかは全く分からなかった。

 そのとき、店の奥から人影が見える。ユゥインだ。


 「お帰り、シャオ。何でもは言い過ぎさ。それと……。ロボットペットだね。にしてもまあまあ失礼な子だよ」

 

 呆れたように奥から出てきた彼女も、ロボットペットの言葉がわかるのだろう。

 なんとなく、初めて会った時の事を思い出した。

 だがあの時よりはユゥイン自身に余裕があるからか、工具を投げることはなかった。


 ◆

 

 作業台の上で道具を広げ、中心部に設置した台座の上にロボットペットを置く、そこで何かに気が付いたのか、眉をしかめて台座から持ち上げた。


「こりゃあ酷い、ボコボコじゃないか。それに最近のものじゃないね」


 睨むように様々な角度から観察をしている。ロボットペット本人はよくわからないのか、不思議そうに鳴いていた。


「え、どこが? こんなにまん丸なのに」

「ほとんどの奴はそう言うだろうね。でもあたしからしたら細かく歪んでるんだ」


 ヴィハーンも言っていたが、このロボットペットは丈夫なのが売りである。ユゥインからすれば、荒れた地面を転がることによる傷ではなく、大きな衝撃を数えきれないほど受けたような形跡だった。


「あんた、ずっと殴られてたんじゃないかい? 同モデルにはよくある扱いとはいえ、その友達とやらは――」

「ぴ!? ぴ、ぴぴー!」


 漸く何を疑われているのか気が付いたロボットペットは焦りからか、否定するようにけたたましく鳴いた。ユゥインは「ならいいけどね……」とどこかスッキリしない表情ではあるものの、一旦は納得したようだった。


「ま、いまは良いさ。取りあえず、今内部スキャンもかけたけど、問題はなかったよ。外殻だけの問題さ」

 

 それを聞いたシャオが「よかったねえ」と声をかけると、台座の上に戻されたロボットペットは気怠そうに鳴いた。


 ――カランコロン


「おかえりなさい!」


 音と共にヴィハーンが帰ってきた。彼だけでなく、モルグも一緒だ。

 バイクを戻すだけにしては帰りが遅かったことに、モルグも関係あるのだろうか。

 ユゥインも驚いたように目を開いている。


 「珍しいじゃないか、滅多に無理をしないあんたが。見た感じ不調もなさそうだけど」


 彼の活動範囲は主に中流階級の住居エリアだ。コアから抜き取った情報を基に価値のあるものを収集している。


「先ほどもらったコアの情報にね、そこのロボットペット君が映っていたんだよ。記録日時は十五日前。つい最近だ」

「ぴぴ!?」

「もしかして、ボール君の友達のコアだったの? そんな……」


 ショックを受けたように動かなくなるロボットペットに、シャオはなんと声をかければいいかわからなかった。

 だが、モルグは「うん、ちがうね」と二人の勘違いを否定した。


「鮮明に読み取れた記憶は、ロボットペット君……。もとい、ボール君を投げ飛ばした場面と、その子と一緒にいた独特な長髪の男性型の機体を、追いかけている最中に見失い、誤って入った工場内のメタルに襲われたところだけだよ」


 シャオが入手したコアは、大蜘蛛がいた工場内にあったものだ。


「にしても随分と大きな蜘蛛型だった。シャオ君も次に行くときは気を付けるんだね。……もう倒した? 凄いな。おっと、話が脱線したね」


 モルグが言いたいのは、このロボットペットの友達は生きている、という事だった。


「いや、凄かったよ。見た目は肉体そのもので、最初はユゥイン君の様な機体か、シャオ君と同じ旧人かと思ったぐらいだ。立ち回りはヘタクソだったが、機体と装備の性能をみるに、恐らく最新のもの。アンドロイドはまず手を出せない。……それで、疑問なのだが」


 そこでシャオは周囲の雰囲気があまりにも重い事に気がついた。事前に聞いていたのだろうヴィハーンは、戻ってから一言も言葉を発していない。

 ユゥインも、『友達』の特徴を聞いてから、どこか表情が固くなっている。


「その友達とやらは、<ヒューマノイド>、なのかい?」


 もしそうなら、やつがれは此処で手を引かせてもらうよ。

 そう言い残して沈黙の中、モルグは帰っていった。


 大人たちの沈黙の中、シャオとボールは困惑しながらも寄り添っていた。


 

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