7話 聞き込み開始
拠点となる集落は荒さが目立つものの、周囲の街から素材を集めてアンドロイド総出で再建しただけあって、シャオから見ればまさに未来都市そのものだ。
日光に照らされるメインの明るい道があるが、その裏には薄暗い路地も多くあり、アンドロイドが経営する店や住居、倉庫などが所狭しと密集している。
店の多くはLUBANのようにネオンや電灯が設置されており、夜も明るくチカチカと怪しげな雰囲気を醸し出している。
何もかもが楽園ではあり得ない存在だ。
とはいえ、それでも集落止まりと言うのがアンドロイド達の評価だった。
その集落内の外周付近。一体のアンドロイドが鉄筋を手に立っている。
光を吸収するような真っ黒な布を頭から被り、その上から眠っているような表情の白い仮面をつけている機体だ。
名をモルグ・レジャー。シャオ達へよく依頼をするアンドロイドの一人。ゲペレペンゲの友達だ。
シャオからはゲペちゃんとあわせて、モルちゃんと呼ばれている。
モルグはコアに干渉する技能を持っており、その記録を収集することができる。
その記録には稀に暗証番号なども含まれており、隠し財産などを発見することがある。彼はそれらを売って生計を立てていた。
そして。探索から戻ってきた二人を最初に迎えたのも彼だった。
今回、シャオ達が新しい場所に行くと聞いて、真っ先にコアの収集を依頼し、やることも無いので、戻ってくるのを待っていたのだ。
「はい、モルちゃん。A・コアだよ。割れてるけど」
「やつがれにはね、それで充分だよ。それはいいんだが……。そこの丸い子は?」
「ぴぷ、ぷぃ……」
回収品の荷物の中に埋もれて震えていたロボットペットを前に困惑するモルグへ、大体の経緯を説明した。
「……ってわけなんだ。ずっと道に置き去りにするのもかわいそうだし、誰か知ってる人いないかなって思って」
「へえ、それでこの子を連れ帰ったというわけなのか。シャオ君、過度なお人よしは身を滅ぼすぞ」
彼は相槌を打ちながら件のロボットペットを鉄筋で突いて遊んでいた。
突かれているロボットペットもそれに嫌がる様子はなく、むしろ戯れるように積極的に鉄筋の先にぶつかっている。
「はは、こやつめ。……まあ、悪い子じゃないとは、やつがれも思うけどね」
「モルちゃんは何か知ってる?」
「ロボットペットについてか。こういう事に関しては、やつがれよりも、ゲペレペンゲのほうが得意なんだが……」
それでもシャオの質問に答えるべく、モルグはしばしロボットペットを観察していた。だがそのうちに諦めたように首を振る。
彼は此処に来る以前から仕事柄、ロボットペットというものにはとんと縁が無く、これほど間近に見たのは初めてだったのだ。
知る必要も無く、ロボットペットについてのデータなどインストールどころか閲覧したことさえ無い。他の機種との差異などわかるはずがなかった。
そのことを伝えると、ロボットペットも落ち込んだように弱弱しく鳴く。
モルグはそれを見るとロボットペットを抱きかかえ、「力になれず、すまないね」と、慰めるように撫でていた。
「それでどうするんだい? 飼い主を探すのは絶望的と言っても過言ではないぞ」
「ぽぴ!」
その言葉にボールは反論するように一言だけ鳴く。それに対しモルグの返事は――。
「ああ、すまない。『友達』だったか。……ふむ。友達は優しくてロマンチスト、ね。そうか。その子も、とってもいい子なんだね」
モルグはしばらく考え込むように黙った後、ロボットペットをそっと地面に下ろした。
「やつがれには手がかりがなかったが、皆に聞いて回るのはどうだろう。ゲペレペンゲが戻れば力になれるだろうし、他にも詳しい者がいるだろうね」
「あ、それいいね! 今日はお仕事はお休みの日にして、探偵の日にしようっと」
シャオはいいことを思いついたと言わんばかりにニッと笑う。
「バイクの点検が先だ。聞き込みも店に着くまでの道中会ったやつらだけでいいだろう。どうせ暇人ばかりだ。全員を対象にしたらきりが無い」
ヴィハーンはロボットペットを再度荷台に投げ込むと、そのままLUBANに向けてバイクを引いていく。シャオも座席に乗り込むと、一緒に去っていった。
モルグは仮面の奥で笑っているような気配を漂わせながら彼らを見送っていった。
「良い再会になることを願っているよ、友達思いの君にね」
ロボットペットは荷台から姿を覗かせ、嬉しそうに一鳴きした。




